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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ259.来襲侍女は潜み、


「……経過しました。そろそろ出ても問題ないでしょう」


そうエリック副隊長が手持ちの時計を確認しながら告げてくれたのは、ロドニーが温度感知の特殊能力で廊下から最後の看守二名が立ち去ったことを確認してから五分後のことだった。

暫くは言い合いをしていた男達だけれど、結局原因究明できることもなく持ち場に戻った。当然、地下室へと通じる通路のある扉の向こうにも男達が戻っていったけれど、それは織り込み済みだ。

地下から上がってきた人も、また再び地下へと戻っていきロドニーの認識できる距離範囲から出て行った。大分地下深い場所だろうと、それだけである程度想像はできた。


五分以上誰も戻ってこないことを確認した今、とうとうヴァルの特殊能力が解かれた。壁が外開きの扉のように開かれて、私達は気配を消しながら再びもとの廊下に出た。

息苦しさまでは感じなかったけれど、ずっと密集した空間にいたから大きく深呼吸を繰り返す。早速アラン隊長とカラム隊長、ハリソン副隊長がロドニーの確認した手前から二つ目の扉の左右に張り付いて様子を見てくれる。ここまではほぼステイルの策通りだ。むしろ、予想よりもかなり手早く終わったというところだろうか。


ステイルや騎士達の予想でももっと長引く覚悟もあれば、人がずっと引かない可能性も鑑みていた。アラン隊長が天井に向けて撃った銃痕を見れば、誰が撃ったんだという騒ぎやどこから撃ったとある程度検討もする筈だった。なのに、結局集まった大勢全員が銃の痕跡も見つけることができず「一体どこで撃たれたんだ」「なんだったんだ」で引いて行ってしまった。

そう思ってふと天井を見上げると、…………ない。


アラン隊長が撃った角度からざっくり想定した場所に視線を向けたけれど、どこにも弾の痕がない。

照明が薄暗い所為もあるかしらと思って天井の真下まで近付いて見上げたけれど、やっぱり見当たらない。ゴム弾でもないし、我が国の騎士団に支給されている銃なら壁に穴くらいは少なくともあく筈だ。私の傍に立ってくれているアーサーも同じように顎を反らして「ないっすね」と呟いた。私と同じことを疑問に思ったらしい。

さらにアーサーの隣に立つエリック副隊長も天井に目を向けながら小さく首を捻っている。不思議に思って扉脇に控えるアラン隊長に尋ねるべきか顔を向けると、まさかのアラン隊長も「あれ~?」と言わんばかりの表情で私達と似たような方向に視線を上げていた。

カラム隊長はステイルに耳を近付けている。恐らく突入させる騎士は誰にするかだろう打合せしている中、気にせず扉の向こうを睨んでいるのはハリソン副隊長だけだった。温度感知のロドニーもいつ誰がこっちに現れないか警戒に首を四方に回してくれている。


ロドニーの話だと、さっきは二名だった部屋の中に今はもう一名増えて三名で部屋の中で見張っているらしい。

異常を確認してから早速部屋の中の警備を増やすのもやっぱりそれだけ他の部屋とは違う重要な場所である証拠だ。あとはなるべく周囲に気付かれることなくこの部屋の中に入れれば良い。

さっきと同じ要領で土壁の覗き穴と瞬間移動の合わせ技で済ますのが得策だろう。ハリソン副隊長一人でも三人くらい相手にするのはわけもないだろうけれど、狭い部屋だしなるべく目撃されることなく意識を奪うなら二、三人突入させた方が確実だ。


「……!……ヴァル。ちょっと」

「あ゛ー?」

そこまで考えたところで、気付く。

潜めた声で振り返れば、欠伸混じりに返事をくれたヴァルは元通りにした壁に後頭部を寄り掛けながら肩をぐるぐる回しているところだった。やる気満々とはお世辞にも言えない眉間に皺の表情は、ただただ窮屈で不快だったという意思表示この上ない。

駆け寄ろうかとも思ったけれど、実際に確認して貰った方が早いと手招きで彼を呼ぶ。三秒くらいは気付かずそっぽを向かれたままだったけれど、こちらに視線をくれれば身体をグラグラ揺らしながらも大股でこちらに歩み寄ってきてくれた。手の届く位置で足を止めた彼に、私は天井を指差しながらまた声を潜める。


「弾の痕が消えているのですが、何か覚えはありますか?」

「潰して消した。んな痕残してどうする」

言って!!!!

そう、心の叫びがあとちょっとで喉から出かかった。〝報・連・相〟の言葉が大きく頭に浮かぶ。今この場が気配を消さないといけない敵陣ど真ん中でなければ叫んでいた。本当にこの人は。

よくよく考えれば別に不思議でもなんでもない。ステイルの為に覗き穴を壁に工作できる彼に、天井の壁にできた弾の痕を飲み込ますことぐらいわけがない。痕も弾も天井の内側に埋めてしまえば証拠は残らない。なんの変哲もない天井相手ならば余計にだ。


そういえば壁の内側に隠れた時も、アラン隊長の銃の為の隙間だけでなく彼の目線にも光が漏れる程度の隙間ができていたと思い出す。今考えればあれも最初からアラン隊長の銃痕を消す為だったんだろう。

一言教えてくれれば良いのに、聞かなければずっと言うつもりもなかったのだろう。

ハァ……と、肩が落ちるほど息を吐いてしまう。アーサーも納得したように一音を細く漏らしていた。頭を抱えながら視線を上げれば、アラン隊長がこちらを向いて納得したように笑ってた。見ればエリック副隊長が手でちょうど天井とヴァルを交互に示していたから、それで伝わったらしい。アラン隊長も視線が改めて天井に向くと、そこでまた大きく頷いた。


本当に、ヴァルはもうちょっと報告連絡相談をして欲しいと思ってしまう。

彼を見上げれば、今もどうでも良さそうに首をゴキゴキ鳴らしている。いや、やってくれたことは本当に助かったのだけれども!!多分彼の場合は私達への手助けというよりもただただあの密集状況が無くなる要因を一つでも減らしたかったのだろう。


「文句でもあるか?」

「いえ……ありがとうございます。…………教えてくれたらもっとありがたかったですが……」

もう聞かれることすら面倒そうに言い返してくる彼に、取り敢えず感謝は伝える。そう、本当にやってくれたことはありがたい。ただ、このまま報連相の必要性を先に説くか考えていると、ステイルから「おい」と潜めた声で呼出がかかった。呼び出す相手は勿論ヴァルだ。


ステイルに呼ばれ舌打ちを小さく鳴らして歩み寄る彼に私達も続く。

なんだかんだ付き合ってくれているだけなのに一番働かせてしまっているなと思うと、やはりお説教する気が失せた。ハァァ……とまた溜息を吐きながら今は次の一手へと意識を切り替えた。

憮然と見下ろすヴァルに、扉の前で片膝を突いたステイルは「この位置だ」と、扉すぐ横の壁の目線の位置を指で示すようにトントンと突いた。扉側は警戒されている恐れもあるからさっきよりもなるべく小さな穴を一つと希望するステイルに、ヴァルも顔を顰めながらも右手を伸ばしステイルの頭上についた。今回は角部屋でもないし、左右に別の部屋があるからどうしても正面から覗くしかない。

なるべく小さなとその要望通り、間近に立っている私も腰を落として目を凝らさないと確認できないくらいの穴がぽつりとステイルの眼前に開けられた。さっきが爪の大きさであれば、今回はてんとう虫くらいの大きさだろうか。ステイルもゴーグル越しでは難しそうに一度手を掛け、……やっぱり躊躇して外すのを止めてゴーグルごとぐっと壁につけて覗いた。ネイトの発明は限度三回で、一回外すとそこで消費されてしまうから節約だろう。数はあっても無限ではない。


部屋の先を覗いたままステイルは左手を伸ばす。アラン隊長、エリック副隊長と抑えた声で名指ししたらすぐに二人も応じてくれた。

伸ばされたステイルの手に触れた瞬間、姿を消すと同時に部屋の内側から殴打音が薄く漏れ聞こえた。それ以上は続く物音は何もなく、扉の前に顔を近付けている状態でうっすらだから他の部屋どころか一番後方で周囲を警戒してくれているロドニーの耳に届くかどうか程度だろう。

家具どころか相手の倒れる音すら立てないのは、流石騎士。高速の特殊能力を持つハリソン副隊長は言わずもがなだけれども、先行特攻を得意とする一番隊トップのお二人だ。

ステイルも穴からゆっくりと顔を引けば、そこでカチャンと遠慮がちな音で施錠が内側から開けられた。ヴァルの手で穴も一瞬で埋められ、もう覗く必要もなくアラン隊長が慎重に扉を内側から開けてくれた。

扉のキィィと開かれる音も最小限になるように気を配り「どうぞ」と促された先に、私達もそっとお邪魔した。


「お疲れさまです……」


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