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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ258.摂政は相対し、


パァン!パァンッ!!


「ッ銃声か?!!」

突如高らかに響き渡った音は、収容所中に広がった。

特に静まりきった部屋であるほどに、たとえ閉めきられていてもその音ははっきりと耳に届く。人の話し声や物音とは明らかに違う攻撃音は収容所で緊張感を張り詰める看守達だけではなく、許される範囲にのみ配備していた騎士達の注意も引きつけた。

施設の中心部方向から聞こえた銃声に何か攻撃かあったのではないかと騎士達も伝令と報告を重ね出す。銃声音に、騎士達は恐らくと思考の隅では予想をしたが、看守達は銃声を聞き分けることもない。一体誰が、自分達の銃なのか騎士の銃なのか、それとも第三の侵入者達が現れたのかもそれも確信までは持てない。とにかく状況を確認しろと、看守達と騎士達で情報が錯綜する。騎士に尋ねられても看守達もわからない。

そして看守達が騎士達を疑っても、彼らが警備として侵入を許されている範囲よりも明らかに奥で音はした。


上の立場の看守ほど下の人間に確認へと急がせる。しかし奥であればあるほどに下っ端では入ることをが許されない範囲になる。

ドンドンドンと扉を叩き、外側から内側にいるだろう看守に「開けろ」「状況を説明しろ」と怒鳴った。しかし途中からは扉が施錠されたまま見張りである筈の看守が返事をしない。仕方なく外側からの鍵を持つ者が呼び出され、鍵を開ければ見張りの看守は気を失っていた。

争った痕跡どころか派手な外傷も見当たらない見張りに、一体何がと叩き起こそうとしても白目を剥いたまま目を覚まさない。


単純に本人の体調が理由で気を失ったか、看守同士での揉め事ならば良い。しかし当然侵入者の可能性も鑑みれば、施設内部では侵入者の恐れ有りと警備と捜索が声高に叫ばれた。

侵入者の可能性と、そして原因不明の銃声が響く中、たとえ揉め事の中心からは離れていようとも、最重要人物への報告と無事の確認に看守は階段を駆け上がる。ノックを鳴らし、慌てふためいたまま返事の一音が聞こえた時点でうっかり扉を開けた。

「失礼致します!」と返事の途中も上塗る声が、汗で濡れた顔から放たれる。


「所長大変です!!〝特別処置棟〟から銃声、ッが……!……!!」

ハッ!!と慌てふためいた看守はそこで息を飲む。見張りの一人が意識不明であることを続けて報告するのも忘れで喉が干上がった。

あまりに突然の事態とその報告を急がなければならないという考えばかりが先行し、応接室に飛び込んだ男は今日そこに招かれているのが何者なのかを失念していた。狭くなっていた視界で、扉の外で見張り佇む白の団服にすら目が入っていなかった。

収容所最高責任者である所長に直接報告をすることを許された立場の看守は常時ならば応接室で所長がどんな客と会話していても大して気にも留めずに要件を告げることが多かった為、今回も遠慮しなかった。特に今回は緊急事態だ。

事実上は植民地とはいえ、ラジヤ帝国の一角の地で最も大きな収容所として領主にも還元している。領主に次ぐといっても過言ではない権威を持った彼を訪ねる客に配慮をすることが滅多になかった。

これが本国からの使者であれば間違ってももう少し敬意を見せて取り繕った。そして緊急事態で頭に血が上っていなければ



フリージアの摂政であろうとも、それは同様である。



「ッし、失礼致しました!!」

余計な発言まで滑らせた看守に目玉が溢れるほど見開き無言の圧力を掛ける所長と、そして聞き捨てならない情報に鋭い睨みを聞かせる摂政と護衛に流石の看守長も顔面を蒼白させた。びしりと礼をし、背筋を伸ばし直す。自分が謝罪しても数秒間は誰からも返事どころか相づちも返されなかった。

奴隷収容所の中でも最上級の応接室。広々としたその空間に入ることを許されたのはたった三名だけだった。フリージア王国の摂政という恐ろしき大物の来訪に、どれだけ招かれざる客であろうとも応接室を開けざるを得なかった。

看守の失言を聞かれたかと、ちらりと盗み見るように所長は向かいに座る来訪者に目を向ける。しかしその表情は良くも悪くも大きく変わらない。厳しい眼差しのまま、それが看守の発言によるものか、それとも談義中に突然礼儀を怠り入ってきた男の無礼によるものかも無言のままでは判断できない。

数秒の沈黙が、五分以上の沈黙に感じるほどに恐ろしく続いた。

外側から扉をそっと見張りが閉じたが、あまりの沈黙に分厚い扉の向こうからの騒ぎがうっすらとまた聞こえてきた。バタバタとした足音も聞こえる扉の先に、間違い無く先ほどの銃声も彼らの耳には届いただろうと看守は食い縛った歯の中で理解した。


当然、たとえ分厚い壁に覆われた応接室にも、銃声は届いた。その後も爆発的な騒ぎはうっすらとではあるが静かな個室で拾うことは難しくなかった。互いに口を噤めば良いだけの話なのだから。

そして銃声の犯人もまだ見つからない中、来訪者の摂政は口を固く閉ざしたまま所長にも気付かれないように小さく息を吐く。



─ プライド達か……。



「〝特別処置棟〟……それは、どのような設備で?」

何か見つけたのか、それとも見つかった側なのか。それまではヴェストにも判断できない。

しかしステイルが彼女の傍にいる以上、見つかって騒ぎになっているとは考えにくい。瞬間移動で一時的にも場所を移せば良いだけの話だ。護衛の騎士達のことも思い返せば、銃声は恐らく意図的に鳴らしたのだろうとだけは簡単に結論付けた。

特殊能力者による発明まで使用して侵入したにも関わらず、ただの迎撃の為に銃を鳴らしたとは考えにくい。救援要請の可能性も鑑みたが、それにしては銃声の数が少ない。ステイルであればもっと手堅い方法も考えた筈だと思考する。ならば今はまだ当初の策を進行中だと考えに至ればヴェストは無意識に自分の前に置かれたカップを取り、……口には運ばずそのまま膝に置くだけで止めた。

毒味は済ませた紅茶だが、ヴェストの舌には合わなかった。相手が敬意を払うべき相手であればいくら不味くても眉一つ動かさず飲むこともしたが、今の相手にそこまでの配慮をしてやる義務はない。


特別処置棟。その名称からどういう設備か検討は付いたヴェストだが敢えて真っ白な状態を維持して訪ねた。少なくとも、先ほどの彼らの反応からも自分達に隠したい設備であると確信を持ち、探りをわざと入れる。

返事代わりにひとまず愛想笑いを作る所長が、直後にはギラリと改めて看守を睨んだ。余計なことをと、ここに誰もいなければ酒瓶で殴っていた。ついさっきまでも、ヴェストから同じ質問を繰り返されては知らない振りを根気強く続けていた主任にとって、一番出して欲しくない施設名だった。

しかし、たった一言の失言だけで崩れる所長でもない。「聞き苦しいでしょうが」と前置いてから、看守の存在を一度無視してソファーに座り直す。


「奴隷の、……まぁ言ってしまえば調教部屋です。収容所といっても買い取った奴隷の中には身体に教えないとわからない駄目な商品も多いもので」

フリージアの王族様には聞かせるような話ではありませんが。と、まるで気遣ったように肩を竦めて笑いかける。フリージア王国が大国の中でも奴隷反対国として有名な為、奴隷の話題もどうせ聞くに堪えないだろうと敢えてチラつかす。


しかし「なるほど」とヴェストは落ち着いた声と共にそこでゆっくりと自然な動作でカップをテーブルに戻した。

香りだけは楽しめる紅茶を手前に置いたまま、青い眼差しを所長へと合わせた。自国が奴隷制度を提唱する国へ侮蔑を覚えるのと同じように、奴隷生産国が奴隷制度を持たない国を見下すことも珍しくはない。「奴隷なんかに大げさな」というその言葉で、奴隷制度を過敏に忌む人種に呆れ見下す。それは、奴隷商だけではなく奴隷制度が根付いた貴族や王族にすら無意識に見られることがある。価値観そのものが違う。奴隷制度が生活に奥深く根付いている国ほど、その傾向は強い。

女王と共に外交を担うヴェストには既に慣れたものである。奴隷収容所の規模が大きければそういった設備が存在することも知っている。一般的に〝調教棟〟〝調教部屋〟と呼ばれるか〝奴隷棟〟内に設置されることが多いことも。そちらも〝特別処置棟〟という名とは全く違う名称だ。今明らかに誤魔化されたことを理解しつつもおくびにも出さない。冷たい眼差しのまま、一呼吸後に口を開く。


「銃声の原因が不明ということでしたな。宜しければこの場で彼の報告を最後まで聞かせて頂きたい。まさか調教の一環で奴隷を銃の的にしているわけではなさそうで安心しました」

「いいえそのようなことは決して。……ですが……、こちらの不手際でもあるかもしれませんので、申し訳ありませんが少々席を外させて頂きます」

「隠蔽工作の指示ということでしょうか。そうでなければ、私達も同行させて頂きましょう」

腰を浮かせ、今にも看守長と共に中座しようとする所長を、ヴェストは間髪入れず言葉を返す。そのまま彼よりも先に素早く起立し、七三に分けられた髪を手でぴしりと整えた。護衛も応じるようにヴェストの背後に付く中、所長もこれには慌てて両手を振った。

いえそれは流石に、困りますと。そう早口に返しながら冷や汗を滲ませる。突然隠蔽工作と、的を射ているとはいえ根も葉もない疑いを向けられ、しかも自分達に強引について来ようとする摂政へ快諾などできるわけがない。「王族の方々が見るには苦しいものかと」と断ったがそれも「ご心配は無用です」と同じ平坦な声で突き返される。


今までも同盟や和平を結びたい国の中には奴隷制の国もあった。奴隷収容所も奴隷商人も奴隷を使った悍ましい商業も全て見聞としてヴェストも一度は目にしている。

いつまで経ってもこちらを気遣うふりをして断る手法しか使わない所長に「もういい歳をした大人です」と低い声で釘を刺した。

本気で付いてこようとするヴェストを前に、所長も食い下がる。「隠蔽と言うならば」と自然と眼差しが鋭くなりながら口だけ笑顔を保つ。


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