表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2279/2311

Ⅲ247.来週侍女は目撃する。


「参考までに聞いておこう。ヴァル、裏家業ならこういう場合どう始末をつける?」

「アァ?んなもん売るか晒すか嬲るか殺す以外あるかよ」


ステイルからの投げ掛けに全く参考になって欲しくないご意見がヴァルから返される。

貧困街の一角を早足で急ぎながらあまりにどうしようもない最悪の選択肢に口の中を噛んだ。エルドが私達に話してやれと許可を堂々と出してくれたお陰もあり、結果的には貧困街の人達からエルド達が捕まえた井戸の犯人がいる場所へ最短距離で向かうことができている。……向かうことができているけども!!


もぉおおおおおおおおお!!!と気を抜くと頭を抱えたくなる。

貧困街に訪れてみて良かったと痛いほど思う。こんなことになるのならサーカス以外にも貧困街についても詳しく踏み込んでみるべきだったとどうしようもないことを思う。前世のゲームの記憶を思い出せたのは良かったけれど、なかなか嫌なタイミングで思い出してしまった。いや!手遅れになった後よりは百倍マシだと思おう!!


私が予知した民だと判断したステイルを始めに全員が察してくれた。

すぐにどういうことなのか聞きたい筈なのに、それよりも本人の安全を確保しようとして今は何も言及せずに急いでくれている。一刻を争う現状では本当にありがたい。

ステイルとその傍についてくれるエリック副隊長を先頭に、早足の背後に続く私だけれど「走りましょう!」ともう堪らず声を上げた。途端にステイル達から始めに、皆が早足から速度を上げてくれた。

私達が向かうのはエルドの首領テントでもない、貧困街の男達が武器を携え走り向かっていた先だ。もう最初の騒ぎから時間が経過したからか、人の流れがなくなって道も閑散としていた。……それだけ目的場所に人が集約しているということになる。

ぞっ、とあの時武器を構えていた人達を思い返すと背筋が冷たくなる。全員一箇所に集まっているというだけでも穏やかな状況ではないのに、彼は無事だろうか。最悪の場合、到着してすぐに騎士達に止めに入ってもらうことも視野にいれなければならない。エルドの怒りも貧困街の人達のお怒りも当然だけれど、それでも。


「!あの辺っすね」

「あーだな。ちょっと先までは見えねぇけど」

木でも登るか?と、アーサーに続いてアラン隊長も走りながら背筋を伸ばして目的先に目を凝らしてくれる。

まだ遠くて私にはよく見えないけれど、どうやら薄暗くなっている先がそうらしい。廃墟だろうか、ボロボロの建物か壁かわからない瓦礫の固まりが散らばって段々と足場が悪くなってきた。

近付いていけば、壁や瓦礫の山の上にまで大勢の人が既に乗り上げて一箇所に目を向けている。武器を今は使っている様子はないけれど、手に携え肩に掛けるか切っ先を地面に突くだけで手放す気配はない。ぞわぞわと殺気が距離に比例して強く感じられてきて、この上なく物騒な予感しかない。いやもう当然なのだけれども!!


もう背中どころか殺気がびりびりと腕から肌全体に広がってくる。私達が足を止めたのは、鬱蒼とも言えるほどの人の壁の最後尾に辿り付いてからだった。

もっと先に行きたくても、彼らも彼らで状況が知りたいように前へ前へと首を伸ばして敷詰まっているから、流石にここを手分けるのは難しそうだ。力尽く……であれば騎士達の手で不可能ではないだろうけれど、まずは状況を確認したい。ここまで首を突っ込んで別件でしたとなったら困る。


さっきアラン隊長の発言を思い出し上を見れば、確かに手頃そうな大木がいくつか伸びている。

皆武器を持っているからか木登りまではしようとしていないようだ。子どもも家に入れろと言われていたお陰もあるだろう。今なら空席だ。幸い、ゴーグルのお陰で私を気にする人もいない。頭上にある太い枝へ狙いを定め、助走も必要無く地面を蹴る。寸前「ジャンヌっ」とステイルの声が聞こえた気がしたけれど、既にもう跳ねた後だった。

ラスボスチートのお陰で大人の頭上程度の高さなら跳躍だけで枝にまで飛び移れた。太い枝を狙ったお陰で、殆ど枯れていた枝から葉が落ちることもなく下の人にも気付かれない。幹に手を付きながら、枝にそのまましゃがみ座る。


「ジャンヌ。スカートの下、気をつけてください……」

「!?ステ、フィリップ?!」

ハァ、と溜息交じりに聞こえた、更に頭上の声に驚き見上げれば、いつの間にかステイルが斜め上の枝にちょうど足を下ろすところだった。

私より高い位置に座っているステイルが飛び移ったのに全く気付かなかった。

取り敢えず言われた通りスカート部分を足の間や隙間を埋めるように押さえる。こんなことになるのなら戦闘服を着てくるんだったと今更思う。……うん。よくよく考えれば、今の状況でネイトのゴーグルがあるステイルと私なら瞬間移動しても全く問題なかった。さっきも、呼び止めようとしたのは瞬間移動するから大丈夫ですよと言おうとしてくれたのかもしれない。……申し訳ない。

それならと、同じくゴーグルをしているアーサーとアラン隊長も瞬間移動で飛び移る前の位置に目を向けたら既にそこに二人はいなかった。エリック副隊長、温度感知の騎士、そしてヴァルがこちらを見上げていて、つい手を振った。エリック副隊長、半分口が笑っている。

視線の先が私からちょっと外れている気がして、顔を向ければステイルとは反対側の私の隣の枝にちょうどアーサーとアラン隊長が飛び移ったところだった。

アラン隊長が私の隣の枝で着地から姿勢を低め、アーサーが更に上の枝に両手でぶら下がった状態から登り上がる。二人とも体勢から考えても、登ったのではなく私と同じように飛び移ったのだろう。流石騎士。


温度感知の騎士はわからないけれどエリック副隊長もここまで登るのは余裕だろうから、きっとゴーグルを付けてないから敢えて木の麓で待機してくれているのだろう。ふと、別方向に振り返れば、ゴーグルをつけてないハリソン副隊長はいつの間にか私達とも違う別の枝に登っていた。

多分ヴァルも木登りぐらいはできると思うけど、……彼の場合はただ面倒なだけかしら。エリック副隊長達から数歩下がった場所でこっそり足下の地面を持ち上げて、数十センチ高い足場を作っていた。まぁ彼は背も高いし、それくらいで充分だろう。


そこまで考えてから我に返る。護衛が付いてくれていることも確認できたのだから、今は肝心な人混みの先に目を向けないと。

慌ててぐりんっと風を切り、ステイルの枝方向に振り返る。既にステイルも真剣な眼差しで目を向けている先に、私も目を凝らす。想定より人の壁は分厚く、これでもちょっと距離がある。高低差は未だしも、流石の私でもここから最前列に飛び移れるかわからない距離だ。

耳を澄ませてやっと声が聞き分けられるくらいだった。大勢が囲む中、一本の木を中心に直径で十メートルくらいだけ円状に空いていた。真ん中に唯一立つのがエルドと、そして瓦礫に括り付けられている青年だった。

立っているエルドと違い、しゃがみ込んでいる少年は既に顔のあちこちが遠目でもわかるくらいに腫れていた。何があったかは想像に難くない。……うん、間違い無い。


彼だ。


「ごごごめんなさいごめんなさいごめんなさい……でも本当に殺そうとしたわけじゃ……」

「しらばっくれんじゃねぇ!毒仕込んだのはテメェだろ!!」

ガンッ、と直後にはエルドの怒号と共に手に握られていた剣が鞘に収められたまま少年の肩に振り下ろされた。刃剥き出しではないだけで身体は切れなくでも激痛だろう。

グァッと声を漏らした少年に私まで苦しくなって顔に力が入る。エルドは眉を吊り上げたまま全くの慈悲の欠片もない眼光で彼を見下ろしていた。当然だ、さっきの話が本当ならエルドも貧困街も被害者だ。


少なくともまだ殺されてはいないことに胸を押さえるけれど、安心はできない。

今この場に集まっている人達が一回ずつ武器を彼に振り下ろすだけでも嬲り殺しになる。まだ尋問中だからか意識も保てる状態で痛めつけられたのか、それとも捕らえる為にか顔中の至る所に痣を作る青年は既に頭から血を流していた。

黒い髪をした、細身の少年。ずっと切らずに放置していたのだろう肩よりも伸びきった髪のシルエットは一瞬女性と間違えそうだった。

黒髪長髪だとハリソン副隊長と同じ系統にも思えるけれど、くるんと内側に丸まった毛先と酷くボサついている所為で全く違う髪型に見える。

この距離でもわかるくらいに酷い顔色で窶れ、瓦礫に縛り付けられている今は殆ど無抵抗なままだ。……ゲームと殆ど変わらない。

髪はあんなに長くなくて前髪も斜め切りだったし、今は少し少年というか若く見えるけど、顔はゲームの青年時の彼そのものだった。あとは服装だろうか。今の彼はゲームのサーカス衣装ですらない、貧困街の人達と同じようなボロ布だ。

顔を隠す為だろうフードが今は降りている。赤い瞳が今は死んだように濁り、視線は下に向いていた。話す声も、エルドと違って独り言のような声で話すから耳を澄まさないと途切れて聞こえてしまう。


「井戸に毒いれて「殺すつもりはなかった」で済むわけねぇだろ!認めるか!そうじゃねぇなら指示した奴を吐け!!金でも握らされたんだろ!!」

「だから!毒を入れたと気づかなかったんです……!本当です、毒を入れるつもりもッグア!!」

ガン、ガン、と。また二度エルドが勢い良く振り下ろす。

言い訳を許さないと言わんばかりに発言途中を狙って痛めつける手法は見せしめにも近い。

ただエルド本人の顔色にも余裕はなく、剥き出しの歯で目を見開いてただただ殺気と怒りに満ちていた。きっと近くで見れば血走っているだろう。

二度も鈍器で殴られゲホゲホと噎せ込む彼は、少し血を吐いたように見える。頭の血が溢れだしたのかもしれない。

そしてその様子を見て哀れむ人もいなければ、嘲笑うことすらする余裕が観衆の誰にもない。全員から「殺す」というその意思がまとまってこの場の空間全てを包んでいるように密集してる。「いつまでも言い逃れしようとしやがって」と、エルドが唾を吐き付ける。


あまりのえげつない痛めつけ方に、口を覆って仕舞えば、トントンと隣から指で叩かれた。目を向ければステイルだ。

顰めた声とはっきりとした口の動きで「止めますか?」と尋ねてくれる。もう彼だということはわかったのだし、確かに殺される前に確保をしないとまずい。ステイルから問いに私からも頷きを


「ッだめだ!!来ないで来ないでください近付くな近付くな近付くな近付くな!!」


……頷きを返そうとした直前、混乱混じりの少年の叫び声が劈いた。

あまりにも酷く荒れた喉と裏返り混じりの悲鳴に心臓が止まりそうになりながら振り向けば、人垣の中から屈強な身体をした男が顔を真っ赤にしてズンズンと彼に迫っていた。さっきの喧嘩早い幹部だ。

武器を持っていなくても安全性を感じられない太い腕と太い首の男に、首領のエルドも「おい!落ち着け!!」と怒鳴るけれどそれも耳に入っていないように早足で木に括られた彼に迫る。

黙れ、いつまでも舐めやがって、テメェの所為でアルベルトが、絞め殺してやる、といくつか拾える声も殆ど言葉にならないような怒鳴りと少年の喚き声に混ざって聞き取れない。他の人達も「首領の命令を聞け!!」と怒鳴って止めるけれど、それもものともせずに大股と筋肉の足で進んでいく。まずいまずいまずい!!

木の上から私も思わずエルド達へと、警告に喉を張り上げる。当然女性の声が振ってきた程度で都合良く止まってくれるどころか耳に入るわけもない。エルドも今は少年の眼前にまで来てしまった大男を怒鳴るのに夢中だ。木から飛び降りるか、でもここからじゃ一回で間に合わないとステイルに瞬間移動をお願いしようとしたその時。



ボキャッ。



……鈍い、今日一番の太く響いた音に身が凍る。

瞼もなくしたまま見つめていた先の光景を疑った。口がぽっかり空いたままステイルに向けた顔の角度のまま目だけが大男に向いてしまう。絶対、折れた。ここまで聞こえるほどの骨の音だ。

さっきまで互いの声も聞こえないくらいに騒ぎ始めていた男達が全員しんと静まり帰る。エルドも目を見張ったまま棒立ちのように固まり、剣を鞘から抜く前にそのまま落とした。青年の首に伸ばされていた太い腕ごと真横にぐらりと倒れる大男と




着地し佇むハリソン副隊長に。




大柄な幹部の転倒に地面が揺れ、骨折の激痛に叫び、集まっていた人達が一斉にハリソン副隊長に殺気を向け出した。

……優秀な騎士のお陰でひとまず〝毒の特殊能力者〟の被害は免れたと、今はそう思うしかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ