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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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そして誤魔化される。


「突然失礼します」


また一歩、挑発でもするようにステイルはテントの中に踏み込んだ。

アーサーが出てくる前にテントに入るつもりではあったが、アーサーが完全に治して手を引っ込めるまでは騎士達を連れて入るわけにもいかず、頃合いを見計らっていた。以前にマリアンヌで意識を取り戻した瞬間に完治というわけではないということはよく覚えている。

そして同時に、アーサーがテントを出てきた後では逆に収集が付かなくなる。

大勢の注目が熱に感じるほど自分に集中していることを確かめてから、ステイルはにっこりと社交的な笑みで「突然申し訳ありません」と彼らにまた声を張る。


「毒にやられて薬がないと聞いたので、僕らが持ち合わせていた解毒剤を勝手ながら彼に飲ませて貰いました」

首領にも一週間ほど前から立入りは許可されていますと、伝えながら手でアーサーを示す。

ステイルに示され注目すれば、アーサーも今初めて彼らに認識された。途端に今度は「え!!」といつの間に忍び込まれていたのだという別の叫びが上がった。不審者そのものの扱いで女性が悲鳴を上げ反対端へとバタバタ避難し、アーサーも顔を引き攣らせながら少し傷付く。仕方ないとはいえ、不審者扱いを騎士の自分がされてしまった。

それでも、争いの元である薬はもう必要ないことと自分の特殊能力を隠す為ならば仕方が無い。ピクつく瞼のまま唇を結びステイルを凝視し成り行きを任せる。

ここまでやったからには策もあるんだろうなと頭の中で叫び訴える。


アーサーのその無言の叫びもしっかり受取ながら笑みを作るステイルはスラスラと決めていた言葉をわざと早口でまくし立てた。

薬の持ち合わせはあったが、部外者である自分達からの薬を受け取ってもらえるとは思えなかった。乱闘の騒ぎに乗じて彼に托し勝手に飲まさせてもらった。高価な薬だから一日安静にしていれば心配はない。

自分達は商人でそういう商品の取り扱いも長けているのだとそれらしい理由を加えるステイルは、更には貧困街の彼らにだけではなく自分とプライドを固める騎士達とヴァルにも聞こえるように意識的に声を張る。


「本当に持ち合わせていて幸いでした。この街に来てから〝身内〟が盛られることもあったので、念の為備えておいて正解でした」


ははは、と。棒読みのような笑い声を交えるステイルの言葉にエリック達も表情には出さず納得する。

先ほどステイルがアーサーを先行させた時に〝何か〟を握らせたことはアラン達も目で拾っていた。流石に握らせた中身まではわからなかったが、そういう理由であれば納得いく。実際、つい昨日プライドはノアに睡眠薬を盛られたのだから。そこで解毒剤を携帯していても、用意周到なステイルらしいとさえ思う。

ただし実際は薬の持ち合わせではなく、ただの無記名のカードである。


エルドの通達していた許可者。

金を持っている商人で、薬を提供された。彼にいきなり薬を渡されても間違い無く迷わずは受け取らない。本当に薬かどうかも怪しければ、後で高額請求される可能性も大いにある。

もともと貧困街にいる全員、不当な扱いを受けてきた人間だ。顔色も良くなり本当にさっきとは打って変わってけろりとした仲間の男と、ステイルの説明に状況の辻褄だけは合った彼らだが、そこで「はいありがとう」で済むわけがない。

どういうつもりだと、無償で薬を提供したステイルに男達が向き直る中でアーサーも一歩でステイルの横に付く。途端に肘で押し込まれるようにまたプライドの隣までステイルに下げられたが、それでも今度は僅かに首を前のめりに剣にも手を掛けた。

どういう理由でも勝手に侵入して無断で薬を飲ませたとなればどんな因縁をつけられるかわかったものじゃない。今も一人が助かったことの歓喜よりも、何が起きたのかわからない混乱の方が強かった。

騎士達に守られている分全く顔色を変えずに落ち着いているステイルの背後で、プライドもまた視線は痛い以外は危機感もない。騎士達の影に潜むように背中を丸めながら、今は策士ステイルが上手く誤魔化してくれたことに安堵の方が強かった。アーサーの特殊能力も誤魔化しつつ、毒に侵されていた男を救えたのだからこれくらいの眼差しは軽いものだ。

いきなり勝手なことをやってくれた部外者に、怒りこそしなくても眉を寄せ顔を顰め出方をうかがう様子の男達に「余り物なのでお気になさらず」とステイルが撤退を促そうとしたその時だった。


「ッどけ!!首領だ!!」

道を開けろ!!と、乱暴な声と共に背後がざわつきだした。

首領、という言葉にステイルも眉を上げ振り返れば、先ほど別の場所に去っていった筈のエルドが呼びに行った男達と共に人混みをかき分けていた。プライド達のように屈強な騎士に守られてかき分けるのではなく、眼前の人混みから左右に避けさせ道を作らせる。判断の遅い者から乱暴に腕を使い押しのけられながら、誰もが首領に注目する。


エルド、首領、と口々に呼ばれるエルドは、険しい表情と大股で一直線にテントへ向かう。

最前列にステイル達がいたことにも、ネイトのゴーグルの所為で気付かない。無駄な争いをしたくない騎士達も無言でステイル達と共に彼らへ道を空けるように一方向に逸れた。ただでさえ先ほど部下に報告を受けて急いで駆けつけたばかりのエルドは息も乱れ、視野も狭い。今にも怒鳴りそうなほど険しい表情のままズンズンと進む彼に直接呼びかけるのは、テントの中にいた幹部だけだ。「エルド!!」と大男の立ち尽くしていた足が、状況を説明しようとエルドへと駆け寄れば、話をする前に殴られた。

ゴンッ!!と拳で殴りつけられた幹部の大男は目を皿にするが、何故と言う前にエルドの怒号が先立った。


「シャルル!!貴様また手ぇ出しやがったのか!!死人出かかってんのに揉めてる場合か!!!」

「あ……いや!こいつらが金ねぇなら盗ってくるって言いやがったからで、お前に逆らおうとしやがっ」

「これ以上死人出すなと言ったのを忘れたか!!!金の使い道決めんのはテメェじゃねぇこの俺だ!!!」

馬鹿が!!と、歯を剥き出しにして自分より身体の屈強な幹部の胸ぐらを掴んだエルドは、そこで突き飛ばすように手放した。

部下から話を聞いて急いで駆けつけたエルドだが、明らかに殴られた痕跡のある男とそして喧嘩早い幹部を見れば何があったかは明らかだった。問い質すよりも先に決めつけ拳で制裁したエルドは、そこで改めてテントの中へと足を進める。


開口一番に怒鳴り散らした首領を前にステイル達のことを報告できる者など誰もいない。

「症状は」と尋ねるエルドに、真正面から口を開けたのは、毒に侵されたと報告されていた張本人だった。無理矢理床に寝かされていた男は、今は上体を起こして冷や汗に全身を濡らす。まだ状況全ては理解も追いつかないが、それでも怒り狂う首領を前に慌てて正面を向けて座り直した。


毒にやられて死にそうだと聞かされた男が、自分の意思で座っていることにエルドは瞬きする。

首を小さく傾ける首領に、男は「実は……」と苦しそうに声を低めた。首領を動かすほどの大ごとになっているなど目を覚ますまで思いもしなかった。

細々とした本人の説明は、周囲から今聞いた話とそしてステイルの語った状況を頭で拾えた分だけだ。報告と言うにはあまりにも省略された内容だったが、少なくとも「死にかけたが薬をもう飲んだから助かった」ということだけはエルドにも伝わった。

要領を得ない、目を覚ましたばかりの男のお粗末過ぎる説明を顔の中心に力が寄ったままエルドは聞き入り、……直後脱力した。疲労がどっと出たように膝を曲げ、腰を曲げ自分の両膝に手を付き地面に向く。「あ゛ーーーーーーーーーーー……」と無駄に走って損したと言わんばかりのガラガラとした声は、苛立ちも混じっていたせいでビククッIと女性や子どもも肩を揺らす。


「騒がせやがって。なら、もう用はねぇな?」

「あ、ああ………すまねぇエルド。よりによってこんな時に……」

「考えず突っ込むから馬鹿見るんだ。今回はもう良いが返り討ちに遭うくらいなら特攻すんじゃねぇ」

チッ、と一人舌打ちをしたエルドはそこでもう男に背中を向けた。

生きているならもう自分の方が用はないと言わんばかりに、名前も覚えていない末端の男を睨みつけたらもう興味をなくす。死にかけていた仲間を前に、肩に手を置くことも労いの言葉も無しに背中を向ける首領に、それでも周囲は「お疲れ様です!」と口々に声をかけ、頭を下げた。

今はもう他のことで忙しい彼は、さっきまで自分が胸ぐらを掴んでいた幹部を今度は手の甲で軽く叩く。「行くぞ」と促すエルドに、殴られた男も文句の一つもなく頷きその背後についた。


「待ってください」


来た道を足早に戻ろうとするエルドと幹部に、そこでステイルはにこやかな笑顔をつくったまま呼びかけた。


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