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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ245.騎士は忍び込み、


─……つーか毒、効果あンのか?


ステイルに促され、そっとテントの入口から最小限の隙間で抜けるように侵入したアーサーは一人眉を顰めて考える。

毒という話を聞いてから、一直線にステイルとプライドが急いだ理由も、そして自分一人をテントの中に任せた理由も理解していた。しかし、自分の特殊能力が〝万物の病〟を癒やす能力であるとしか知らないアーサーにとって毒にも効果があるのかはわからない。

今まで騎士の任務でも体調不良者ならばまだしも、毒に侵された仲間は自分の関わった任務ではまだ出なかったからやった試しがない。昔、レオンが薬物に侵された時も〝病〟じゃないならと最初から自分の特殊能力に効果はないことを大前提に判断したこともある。実際当時はステイルにもプライドにも触れてくれと促されなかった。


自分の本来の特殊能力を隠しているアーサーにとって、ステイルとプライドにはまだしも他の騎士には使うところを見られたくない。

入口が布一枚とはいえ塞がれているのも今は都合が良かった。温度感知の特殊能力を持つ騎士には当然見えるが、ぼやりと人の大まかな輪郭で広範囲。自分だと判別できる影が患者に触れても、何かを飲ませたか飲ませなったかのような細かいところまでは確認されない。


テントの中に入れば、まず最初に入口の目の前で幹部である大男とテントの中に最初からいた若い男の二人が互いに胸ぐらを掴み合っていた。

他にもテントに敷き詰まっていた人間もいたが、全員が二人の喧嘩に額を濡らし凝視していた。思わず喧嘩の仲裁に手が伸びかけたアーサーだったが、今は自分が認識されるようなことをするわけにはいかないと伸びかけた手を引っ込めた。それよりも今は床に寝かされている患者に触れることの方を考える。

気配は消し、取っ組み合う男達をするりと音もなく避けて近付く。その間、自分を気にするどころか視線をくれる者は誰もいなかった。


─ネイトの発明、すげぇな……。


他者に存在を気取らせないゴーグル。一度注目されて認識されれば効果もないが、そうでなければあくまで〝その他大勢〟としか思われない。今テントの中に入ってきたアーサーのことも、視界の隅に入っている者には「誰かまた入ってきた」とは思うがそれ以上の意識に留まらない。たった一人であれば特に何者なのかという認識に及びにくい。

騎士であるアーサーでも、狭いテントで人が密集した中侵入すれば「誰だ!」「入ってくるな!」と気付かれ拒まれる。そこで何もなく気にされないのはネイトの発明のお陰である。

足音も消し、そっと人と人の隙間を縫いながら接近し片膝をついたアーサーは、厚みのある布を引いただけの上に寝かされた男をゆっくりと上から覗き込んだ。


目を固く瞑っているか顔全体に力が入っている。まるで魘されているように意識は混濁しているのもわかり、顔色も薄黒く紫がかっていた。正常ではないと、医者でなくても理解できる。震えも止まらず、「う゛う゛っ……」と薄く声を漏らしては息を荒くする男は、まだ毛布も掛けられず横たえられていた。

上から下まで見ても外傷が見られないのを見ると、蛇や虫が原因ではないらしいとアーサーは考える。七番隊ではないが、騎士として最低限の応急処置の知識は付いている。毒という判断は間違いないと思うが、外傷がないなら口から飲んだということなのかと予想する。

状況はまだわからないが、さっきの仲間達が「毒」と明言して薬を欲しがっていたことからも何か覚えがあるのかとアーサーは簡単に見当付け、そこで思考は終えた。患者の様子から見ても確かに早く処置しないと手遅れになる。


敷詰まる人の間から、寝込む男にそっと手を伸ばす。

一番手近な位置にあった肩を掴むようにして触れれば、すぐに特殊能力を使う感覚がした。万物の〝病〟を癒やす特殊能力である以上、害を及ぼすほどの異常状態は全て身体にとっては病と変わらない。

麻痺薬や眠り薬のような作用と違い、健康状態を害す症状であれば毒もまたアーサーの敵ではなかった。


ちゃんと効果があることにほっと息を吐きながら、軽度であれば触れても何にも感じない自分がすぐに感じたということはやはり危険な状態だったんだなと考える。

もしここで効果が無かったら、もう認識される覚悟でテントの外にも聞こえるように声を上げながら自分が応急処置を進めるつもりだった。吐き出させる、水を大量に飲ますと、薬のない状況で選択肢もできることも限られるが、傍に水差しも置かれていない男を見るとまだそのどれも処置されていなかったのだろうとアーサーは思う。


気付かれないように片手だけで男に触れたまま、そこで反対の手に握らされていたものを確認する。先ほど入る前にステイルに掴まされたものだ。感触からなんとなく想像はついていたが、ゆっくりと開いてみれば何てことはないただのカード一枚が手の中で丸まっていた。ステイルが連絡手段として使用するカードだが、今は軽く見ただけでも白紙のままクシャついているだけだ。

自分をここに放り込んだということは、ステイルもこうしろという意味なのだろうと思えば、この後もきっと上手くステイルが誤魔化してくれるのだろうとアーサーは考える。自分ではどうこの状況で騎士の先輩達に言い訳できるのか考えもつかない。握っていたカードを服の中に丸めたまましまい証拠隠滅だけを済ませ、息を吐く。

たったそれだけの短い動作をしている間に、毒に侵されていた男の顔色は正常に戻った。もう治ったという感覚を得てアーサーも素早く手を引けば、それから間もなく「ここは……?」と意識を取り戻した男の声が溢された。

小さな呟きでも、仲間同士知っている声は無意識にでも耳が拾う。周囲で付き添っていた者達だけでなく、ちょうど殴り合いを始めたばかりだった男達も目を見開いた。

大量の汗を掻ききったまま後は引き、血色も正常に戻った男は薄く目を開きながら息を整える。さっきまでの呼吸の苦しさを全身が取り戻そうと酸素を行き渡らせる。


「ジェリコ!!気がついたのか?!」

「おい動くな!!まだっ……」

「なんだ……なんでこんな騒ぎになってんだ……?俺確かあの…………」

「馬鹿!!殴り込んで返り討ちにあったんだ!!良いから寝てろ動くな!!」

状況も思い出せず、自分を囲う大勢の眼差しと違和感に目をぱちくりさせながら起き上がろうとする男に、周囲が待ったをかける。

突然治った理由がわからない相手に、ただ目が覚めただけで無理をしていると判断する。騒ぎに乗じてテントの隅にまで引いたアーサーだが、そこからはもう気配を消して口を絞るしかない。そそっと入ってきた時と同じ要領でテントの出口へ向かうが、その間にも完治した男が病人として扱われている状況に顔が青くなる。まさか部外者の自分が治したからもう大丈夫ですなど言えるわけもない。

早く、早くステイル達と合流をと、大丈夫とは思いつつもネイトのゴーグルを片手で押さえながら移動する。目の前では完治した男が「いや大したことねぇよ」と言っては周囲に床へと押さえつけられている。殴り合いは回避されたが別の騒動が始まりこれはこれで第二の混乱を招きそうだと喉がカラリと干上がり出したところで、アーサーの手が届くよりも先に外側から入口が大きく開かれた。


「アーサー、無事に()()()()()()()()ようだな」


はっきりと全体に通るように喉を張ったステイルの声と、盛大に全開にされた入口に今度はテント中の全員が振り返り注視した。

アーサーのように気配を消しての侵入ではない、堂々と現れたステイルにネイトのゴーグルは通用しなくなる。振り返った全員がステイルを認識し、更にその隣に並ぶエリックとその他大勢の男達にも目を剥いた。

テントの周囲にいた者達もさっきまで全く気にしなかった男達が突然テントへズカズカと入ろうとしていることに今気がついた。


なんだお前ら、勝手に入るな、誰だこいつら、薬だと?!とそれぞれが最初に拾った情報を元に声を上げ反応する中で、今は発言した本人であるステイルにしか意識は向いていない。

傍に立つエリックを身体付きから見ても、喧嘩を売るには面倒な相手だと安易に手は出されないがそれでも怯え、身構えられる。身体の大きい騎士達に囲われるようにして守られるプライドは小さくなっていれば、ネイトのゴーグルの効果で誰の目にも留められない。

ステイルが「行きます」と声を掛けてすぐに入口を開いた為、プライド以外は近衛騎士達すら今の状況を正しく理解できていない。それでもステイルの進み出る意思に従いつつ、プライドだけは周囲の目に晒させないと彼女を囲む形で騎士は自らを壁にした。


にこやかに笑ったステイルは、もう入口一歩手前まで来ていたアーサーににっこりと笑みを向けてから改めてテントの中を見回す。


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― 新着の感想 ―
アーサー、毒効かないなら、毒味の結果をどこまで信用出来るんだろ? 猛毒とかなら、能力発動したって感覚残るのかもだけれど。毒で絶対死なない毒味役としては理想だけれど、痺れ薬とか下剤とかでも反応するのかな…
アーサーの能力は、もともとの能力には干渉せず、生命維持に問題があるような症状を治すものだと思います。 エリックの祖父母は、騎士を生み出す家系なのでもともと回復力が高いということで。 聖女と言えば、癒し…
アーサーの能力 普通の酒酔いには効かないが、二日酔いには効く 薬等で寝ているだけでは効かないが、毒など体に影響が出れば効く ヘレネのように体質的に弱いのには効かないが、そのせいで体調を崩せば効く マリ…
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