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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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そして拒む。



「明日はティペットに遭遇した場所だけでなく、姉君と僕は一般の市場全般の立入を控えます。予知した民が奴隷として捕らわれている恐れだけに集中し、奴隷市場や奴隷取り扱い店、奴隷収容所などそういった場所に絞って行動しましょう」

「明日の夜は何があってもこちらの宿に日時が過ぎる前に戻り、更に明後日は予定を三時間早めミスミに出発する。……それは頷けるか?」


首謀者の未来がくじいた以上、残す民は奴隷という立場になっている場合に集中する。奴隷関連の店をしらみつぶしにしていこうと提案され、プライドもこれには口の中を飲み込みつつも頷いた。

どうせ時間が限られているのならば、それも仕方が無いと妥協できる。奴隷である可能性がある民をこの地で見つけるのならば有効的な方法でもある。

しかし続けて放たれたヴェストからの対抗馬に、プライドだけでなくステイルも一度奥歯を噛んだ。


もともとは午後前にミスミへ出発する予定だった分、ほんの数時間だが起床時間によっては猶予もできた。しかし三時間も早く出発となると、もはや捜査の時間は無に等しい。実質、明日丸一日に捜査を短縮しろと言っているようなものだ。しかも明日は定時には宿への帰還となると、深夜や明け方までの捜査は不可能ということになる。

思わず返す言葉が出てこない二人に、ヴェストは「それともミスミへ出発前にプライドは帰還させるか」と尋ねてくる。ミスミでの用事を終えた後は真っ直ぐフリージアに帰る以上、プライドが行動を共にする理由はなくなる。

しかし、隣国であるミスミでも万が一にも攻略対象者とすれ違う可能性がゼロではない。プライドは行動を共にしたいと首を横に振る。それを見て、ステイルもヴェストへ向けて声を張った。


「ミスミもラジヤの隣国です。人も大勢集まりますし、いつ予知した民に遭遇するかもわかりません。最後まで姉君の目は必要となります」

「ならば同行すれば良い。出発時刻に遅れないようにしろ」

侍女は会場には入れないが、騎士団も待機する馬車の中であれば安全も保証される。念の為にも近衛騎士を含む騎士団だけでなく騎士団長も馬車に同室にしようかとヴェストに提案され、プライドは激しく首を横に振った。暗に自分の見張りでもあるのだろうと理解した。

騎士団長を見張りにされれば自分も逃げ出せる自信もなければ、むしろ気まずい。最悪の場合たっぷりお説教されることまで想像できた。もともとラジヤが本命で母親の用事は公式にも自分は欠席である為参加できないことに文句はないが、その二人っきりだけは避けたい。せめてそれならば近衛騎士達との密室の方が遙かに良い。

そこまで思考した時に、プライドはハッと思い出す。明日が奴隷関連の店しか回れず、明日が朝から出発となると今日までの関わった相手に挨拶もできずに去ることになる。

「あの、最後にせめて」と二箇所の立ち寄り先を挨拶を目的に望めば、今度はローザも共にヴェストと首を横に振った。


「奴隷関連以外は一箇所だ。当然市場での食事や買い物もお前が立ち寄ることは許されない。目的は交流ではなく捜索だろう」

あまりにも正論でヴェストに返され、これにはプライドも項垂れそうになる。女王と摂政を前に姿勢こそ崩さなかったが、今にも首を垂らしたかった。

「近衛騎士の一人に伝言を頼みなさい」と言われれば、これにはステイルも援助は難しかった。一箇所でも許可を貰えるだけ幸いだ。時間はどちらにせよ限られ、むしろ狭められた今確かにプライドは挨拶まわりなどしている暇はない。彼女が身の危険を引き換えにしても民を見つけ出したいのならば〝ジャンヌ〟という架空の人物の挨拶などよりも実存する可能性のある民の為に捜索に動くべきだ。

わかりました、と。これには力ない声だがプライドも従うことにする。このままいけば明日の捜査だけでも認められる以上、自分も我が儘を通してばかりはいられないと思った時。

「もう一つ」と、今度はローザが静かに声を放った。


「セドリック王弟と、そしてアネモネ王国のレオン王子に関して。お二人には明後日の出発まではこの宿に滞在して貰うことにしました」

アネモネの関係者には許可を得ています、と。あくまでレオンの意思が第一優先だが、アネモネの宿にまで話を通し済みのローザとヴェストの手際に、プライドも絶句した。

つまり明日二人は行動を共にできないのだと。心強い協力者が二人も不在であることに胃が窮屈になった感覚を覚えたが、……考えてみれば当然のことだとも理解する。

自分が最も危険とはいえ、自分が動くからといってこれ以上二人を巻き込めない。セドリックはハナズオ連合王国からわざわざ移住した王弟、そしてレオンはアネモネの次期国王だ。

話はこれから本人達に願うと、ヴェストに低い声で言われればステイルも頭を下げるしかなかった。二人が安全な場所にいてくれれば、その分今日のような事態になっても自分がプライドを瞬間移動させればそれで済む。護衛である騎士団も動きやすく、何より王族であるセドリックとレオンを危険に遭わせる心配もない。戦略上もそれが正解なのは間違いない。彼らはプライドの護衛でも補佐でもないのだから。

わかりました、と。プライドも静かに頭を下げて従った。二人がいないのは心許ないが、しかし同時に二人が安全な場所にいてくれることは自分にとって安心でもある。

むしろ、今日以上に万全の状態で明日も外出の猶予を許可してくれるらしい母親と叔父には感謝すべきだと理解する。


「……今日は疲れたでしょう。プライド、ステイル。二人とも今夜は早めに休みなさい。明日も行動するのならば、余計にです」

「!あっ……母上、そのっ……っ。……お願いがあります……」

退室の許可を与えられようとした時、プライドがハッと息を飲み下げていた頭を上げた。

まだ何か考えがあるのかと、ステイルも予想をしなかったプライドからの申し出に瞼を上げる。ヴェストも眉を顰め、ローザも少し目を大きく開き「どうしましたか」と尋ねれば、プライドは一度左右に目を泳がせた。さっきまでの女王に向けての伸ばした姿勢と違う、丸まった肩と背中で「非常に申しにくいのですが……」と小さな声になる。

降ろした手で指を組めば、手の平がみるみるうちに湿っていく。女王にではなく、母親に向けてのお願いにプライドは申し訳ない気持ちと良心を痛めながらも引き攣った口元を意識的に引き締めてから声に出した。


『母上にたくさん甘えちゃってくださいねっ』


「……。今夜、だけは……一人で休んでも宜しいでしょうか……。部屋で一人で、じっくり考えたいのです。…………本当に侍女用の部屋でも、構いません」

お願いします、と。脳裏に浮かんだ妹の優しい声に、聞こえないふりをしてプライドはその言葉を選んだ。

さっきまでとは異なりしおらしく頭を下げるプライドに、ローザは口が俄に開いたまま表情が固まってしまった。


急遽レオンやレオンの護衛、それにヴァルも宿に泊めることになった分、部屋が足りないのならば粗末な部屋でも構わない。それでもどうしても自分だけの部屋で寝たいのだと言われたローザは平静を取り繕いながらも二度も瞬きを繰り返してしまった。

ヴェストも敢えて目は向けずともローザの戸惑いが手に取るようにわかり、眉が釣り上がりそうなのを意識して止める。今は、プライドが悪いわけでない。

部屋に、あまりがないわけではないとヴェストは宿の部屋数と割り当てを頭の中で思い返す。自分とローザだけでも、寝室と執務用の部屋で二部屋使用している。客間もまた、セドリックが泊まる際にステイルの部屋との間に敢えて二個の空室を作っている。どれほど良い宿でも隣同士の部屋では物音や声が漏れる可能性はあるからこその配慮だ。

もともと広々とした宿を貸し切っている以上、王族の部屋がないなど有り得ない。もともとプライドとローザが同室になったのも、プライドの正体と安全の為そしてローザ本人の強い願望だ。

何も言えなくなったローザに、ヴェストは五秒待ってからコホンと咳払いをする。


「……護衛は外さないぞ。部屋の前に温度感知も含めた騎士を警備に立たせる。ステイルも、緊急事態でない限り夜の瞬間移動は禁じる」

それでもか?と尋ねるヴェストに、プライドもステイルも通った声で肯定を返した。

ステイルもそもそもプライドに頼まれても夜に宿を抜け出すことは認めるつもりがない。さらにプライドからも迷いない声であれば、本当に個室が欲しいだけなのだと察した。

続けてヴェストから今思い出せるだけでも、ローザの執務室にしている部屋かもしくはその隣の部屋二つならば空いていると提案する。わざわざ侍女の部屋にしなくても、王族が寛ぐに問題ない部屋は残っている。


すると、遅れてやっとローザが「いえ」と声を細く漏らした。女王の発言に、どれほど細く小さくあろうとも全員が口を閉じ、注意を向ける。

心なしか先ほどよりも顔色が悪く見える母親に、悪く思いながらプライドが見つめかえせばローザの目は一度プライドと合わせた後に伏し目がちに落とされた。ここが護衛もいない王族だけの空間だったら、もっと表情にも態度にも出していたのだろうとプライドもステイルも確信できた。それほどに細やかながら間違いない変化だ。


「私が、……今夜は部屋を移しましょう。プライド、貴方はいつもの部屋で休みなさい」

ここで休みます、と。今自分達がいる女王の執務室代わりの部屋を示すローザに、プライドは表情が苦くなる。まさか女王である母親に部屋を明け渡させることになるとは思わなかった。

改めて退室を命じられても、すぐには出る気にはならない。自分を間違い無く心配してくれていただろう母親に、距離を置くようなことは本当ならしたくなかった。しかし護衛を外せない今の空間で、自分もこれ以上は娘としての会話は難しい。

あのっ……と、一度頭を下げた後に、どう謝罪すべきか言葉を詰まらせるプライドに、ローザは静かに目を閉じた。首を横に一度振り、眉を垂らして微笑んで見せる。


「…………娘を部屋から追い出して落ち着いていられる年ではもうないだけです。今夜はゆっくり、きちんと心の整理をなさい」


母親の最大限の気遣いと優しさに、思わずプライドの方が泣いてしまいそうになる。

口の中を噛み、ぎゅっと目に力が入ってしまいながらプライドはもう一度頭を下げ、退室した。ぽっかり空いたような感覚と、温かくなる感覚が同居しながら今だけは胸を締め付けた。


プライド達が退室し、執務室の扉が閉じられた後もまたローザは女王として毅然と振る舞い、囲まれた護衛を前に今は頭を抱えることも項垂れることも顔を覆うこともできずに表情筋に意識を込め続ける。


ヴェストは静かに侍女へ紅茶の準備と、そしてアルバートへ再び繋ぐようにと通信兵へ静かな口調で命令を出した。


「純粋培養すぎる聖女の逆行~闇堕ちしかけたけど死んだ仲間に会えて幸せなので今度は尊い彼らを最善最優先で…って思ったのになんで追いかけてくるんですか?!~ 」

https://ncode.syosetu.com/n1915kp/

こちらは引き続き毎日20時更新連載中です。

略称は「ぴゅあ堕ち」になります。

書籍も発売致しました!

是非、楽しんでいただけると嬉しいです

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― 新着の感想 ―
甘えるって、そっちかあ… ローザ がっくり 楽しみにしていたの 愛情はあっても、母親としては無能だから仕方ない。 たまに痛い目にあって反省すれば良い。
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