12 - 歯車
風が、頬を過ぎてゆく。
解放された髪を揺らしながら、しかし、その少女の表情は優れない。
メイドの姿をまとっていた少女は、白いワンピースを身につけて、停留所で馬車の到着を待っている。
たった独り、噴水のある、街の中央広場で。
「……覗いたら、覗かれて」
ぽつりと、メイドは呟く。
誰もいない、一人の道程で。誰かにささやくような、優しい声音で。
「そしてまた、始まって……」
声音もどこか弱く、同情するような、儚げなもの。
「……だからこそ、わたしはまたここに来る……」
馬車が止まり、扉が閉まり、その蹄鉄の響きが軽快に鳴らされれば。
もう、メイドの言葉が自分以外に届くことなどあり得ない。
彼女の言葉は、全て、独りの繰り言と自嘲にしかならない。
「そう、そんなアイの形は――一瞬の夢、永遠の悪夢、そのどちらなのかしらね……?」
ましてや、その言葉が闇を覗いてしまった者に聞こえることなど――もはや永遠に、ありはしないのだ。
動き出した馬車は軽快に、メイドの視界から見慣れた街を消してゆく。
馬車の窓から、消えゆく街並みを視ながら、メイドは自嘲する。
『人形』になれない道化が、対比の中でしかありえない自身の存在を想いながら、しかし願わずにはいられなかったからだ。
――この『人形』の夢が、いつか断たれることを。
――それが、メイドの形の終わりだとしても。




