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貴婦人形  作者: 子無狐
12/14

12 - 歯車

 風が、頬を過ぎてゆく。

 解放された髪を揺らしながら、しかし、その少女の表情は優れない。

 メイドの姿をまとっていた少女は、白いワンピースを身につけて、停留所で馬車の到着を待っている。

 たった独り、噴水のある、街の中央広場で。

「……覗いたら、覗かれて」

 ぽつりと、メイドは呟く。

 誰もいない、一人の道程で。誰かにささやくような、優しい声音で。

「そしてまた、始まって……」

 声音もどこか弱く、同情するような、儚げなもの。

「……だからこそ、わたしはまたここに来る……」

 馬車が止まり、扉が閉まり、その蹄鉄の響きが軽快に鳴らされれば。

 もう、メイドの言葉が自分以外に届くことなどあり得ない。

 彼女の言葉は、全て、独りの繰り言と自嘲にしかならない。

「そう、そんなアイの形は――一瞬の夢、永遠の悪夢、そのどちらなのかしらね……?」

 ましてや、その言葉が闇を覗いてしまった者に聞こえることなど――もはや永遠に、ありはしないのだ。

 動き出した馬車は軽快に、メイドの視界から見慣れた街を消してゆく。

 馬車の窓から、消えゆく街並みを視ながら、メイドは自嘲する。

 『人形』になれない道化が、対比の中でしかありえない自身の存在を想いながら、しかし願わずにはいられなかったからだ。


 ――この『人形』の夢が、いつか断たれることを。

 ――それが、メイドの形の終わりだとしても。

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