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第67話「エピローグ ――六王会議+1――」

 緑の髪をオールバックにした長身の男は、供を連れて長い廊下を早足で歩いていた。

 廊下の先の扉を開けると、


「遅くなりました」


 中にいる面々に向けて謝罪の言葉を口にした。


「おー来たか! フォンハウト・・・・・・!」


 赤い短髪をツンツンに逆立てた男――ランドン――が、ガハハと大声で笑いながら入室してきた男の名を呼ぶ。


「構いませんわよ。あなたのところの首都が一番遠いのだから。今日も虹都に到着した足でここに来たのよね?」


 水色の長髪の肉感的な美女――サラス――が、ドレスの下の足を組み替えながらフォンハウトの謝罪を受け入れた。

 到着したばかりのフォンハウトを含め、虹宮の一室には総勢14名もの顔ぶれが揃っている。

 主賓である六国のそれぞれの国王六名とその供の六名。それからゲストの一名とその供一名だ。


「私は騎馬で来たかったのですが、彼女が許してくれませんでしたので」


 フォンハウトが円卓の一席に座りながら、後ろに控えて立つ騎士の女性を指す。


「当然です。どこに騎馬で何日も駆ける国王がいるのですか」

「お久しぶりですね。リーリス・・・・さん。またうちへ遊びに来てくださいな。娘があなたに会いたがっているのよ」


 見事な金髪を輝かせる美女――エヴェリーナ――が、フォンハウトの国の近衛隊長であるリーリスに気さくに話しかける。

 一国の王が他国の王でないリーリスに敬語を使う。これだけでこの場の気安さが知れた。


「これはお久しぶりです。光の国の聖女王」

「聖女はやめて下さい。もうそんな年ではありませんから」


 そう言う笑みは実に若々しく、まさに聖女といった慈愛に溢れている。


「……前置きはそのくらいにして、そろそろ本題に入る」


 紫色の髪を二つに結んだ小柄な女の子が、静かだがよく通る声で席から声を出した。

 席についていることから分かる通り、彼女もまた一国の王。闇の国の少女王で、代替わりしたばかりだが、年上しかいないこの場でも遠慮がないことが知れた


「あらヴィオレッタ。急ぐのは若者の特権だけど、少し急ぎ過ぎじゃない? こうして六王が揃うのも滅多にないのだから、少しくらい旧交を温めても宜しいんじゃなくて?」

「……オバサン」

「なんですって?!」


 サラスの見た目は20代の美しさを保っている。例え本当の年齢を知ったとしても、求婚する男性はいるだろうほどに瑞々しい肢体を誇っていた。


「ガハハッ! こいつらはこれをやらないと何も出来ないのか? なあ、ナサニエル!」

「…………」

「ガハハッ! 相変わらずお前は何も喋らないな!」


 ランドンが隣りに座るガタイの良い茶髪の男の肩をバシバシ叩くが、それでもナサニエルは何も言わなかった。

 火の国の王ランドン。水の国の女王サラス。風の国の王フォンハウト。地の国の王ナサニエル。光の国の聖女王エヴェリーナ。闇の国の少女王ヴィオレッタ。


(本当に騒がしい人たちよね……でも今日は王だけじゃない。この六国会議に彼等・・が招かれたのは第一回会議以来だという)


 リーリスの視線の先。

 メイド服のお供を連れた眼帯の少女は、ニコニコとした笑みで王たちのやり取りを見ていた。


「遅れてしまって申し訳ありません、アリサ様。お元気そうで何よりです」


 フォンハウトが慇懃に頭を下げた。


「様は辞めて下さい。わたくしはアドバイザーとして招かれた一貴族に過ぎません。本来ならあなた方と席を並べることすら烏滸がましいのですから」


 彼女の言う通り、虹族は現在の六国ではすべての国に属する貴族という立ち位置になっている。

 そんな虹族でさえこの六国会議に招かれることはこれまではありえなかったのだが、異例の事態につき特別に招聘されたのだ。

 アリサの“アドバイザー”という単語に居並ぶ王たちがピクリと反応し、場に会議開始の雰囲気が出来つつあった。


「……それでは始めましょうか」


 音頭を取ったのはエヴェリーナ。


「今回のこの緊急の六国会議。その議題は申し上げなくても、お分かりになっていることかと思います」

「おう! 空の日の月に白銀の光が灯ったことだな! オレは見た時ワインを吹き出しちまったぜ!」


 ランドンの声は大きく聞こえるが地声だ。


「確かにあれは驚いたわよね。だってあの月は……」

「……500年前にロイド様が行方不明となった後、その父王であった最後の空属性保持者が身罷られた次の空の日には、もう輝きを失っていた」

「わね」


 サラスとヴィオレッタはケンカするほど仲が良いという言葉の好例である。


「アリサ……殿には率直なご意見をお伺いしたい。空の日の月が輝いたというのは、新たな空属性継承者が現れたということで宜しいのでしょうか」

「……フォンハウトはいつも遠回りしすぎ。……重要なのは、その空属性継承者が初代セブリアント国王・ファースト様の血を引く者かどうか」


 歯に衣着せないヴィオレッタに、会場の緊張感が高まる。

 視線は幼い眼帯の少女に集まった。


「……包み隠さず申し上げましょう。わたくしはその新たに現れた空属性継承者の方とお会いしました」


 ざわりと空気が震える。


「それは相手が自らを空属性継承者と名乗って、アリサ嬢ちゃんの前に現れたということか?」


 アリサはランドンの問いかけに首を横に振った。


「いいえ。その方はわたくしが虹族だと知っても、名乗られることはありませんでした」

「どういうことかしら?」


 サラスが、ではどうしてその者が空属性継承者だと分かったのかと問う。


「虹都の魔導大結界マギカ・タリズマンには、かの大魔導技師ロデリカの計らいで、空属性保有者が通過するとそれを感知して知らせてくれる魔導が設計されているのです」

「それに反応があったのですね」

「はい。そしてわたくしがその方を探すべきかどうか迷っていると、反応があった二日後に一人の少年が魔法魔術学院に現れました」


 アリサの後ろに控えるナタリアがピクリと眉を釣り上げた。


「……そういえば今日は虹族の証である指輪をしていない」

「その方に差し上げました。そしてセブリアントの血を引くものでないと意味を持たないとされる指輪を使って、何かをしたようなのです」

「つまり?」


 フォンハウトが結論を促す。


「新たな空属性継承者は、初代セブリアント国王ファースト・N・セブリアントの血を引いている蓋然性が極めて高いというのが、虹族としてのご報告となります」


 アリサがそう言うと、会場の空気が弛緩した。


「ガハハッ! これは目出度いな!」

「ええ、本当に」

「僥倖ですね」

「…………」

「ふふふ」

「……これで辞められる」


 アリサはこの反応は予想外とでも言うように目を白黒させている。


(たぶん六王たちがその地位を守るために、刺客を差し向けるのではないかと思っていたのね)


 この会議に参加するのは初めてなのだから仕方ないとも思う。

 リーリスは知っている。この会議の合言葉を。それが500年前からの総意であることも。


「……皆様?」


 戸惑うアリサに対し、六王たちは視線を合わせる。

 ナサニエル以外はニヤリとし、


『我らは初代様に拾い上げていただいた御恩を忘れない。例え一時王と名乗ろうとも、いつか真の王となるセブリアントの御血が帰還するその時まで、この地を守る守護者たらんことを!』


 声を揃えて言った。


「……とまあそういうことです、アリサ様。我々は新たな王が現れれば、いつでも膝を折るつもりだったのです」


 フォンハウトは再びアリサに敬称をつけることで、セブリアントの血筋に対して敬意を忘れていないことを示す。


「ど、どうして……?」


 王という地位は絶対だ。その地位を自ら……それも六人も捨てたいと思う者がいるということに驚きを隠せていないようだ。


「セブリアント王国時代、我々の先祖が属性守護者という地位にあったのはご存知ですよね?」

「はい……それはもちろん」

「ガハハッ! 元々王という気質からは程遠かったのだ、我々はな!」

「王の執務というのは肩が凝って仕方なかったわ」

「…………」

「ふふふ。どんな方なのかしらね。私達の新たな王は」


 語られる王たちの話にアリサはただただ驚くばかりだ。


「……みんな本音を隠し過ぎ。本当は有り余る力を守護者として揮いたいだけ」

「「「「「…………」」」」」


 ヴィオレッタがそう言うと、六王たちは獰猛な肉食獣のオーラでそれぞれに笑った。


「ふふふ……私達が王の仕事から解放されたら、そろそろ気に入らない帝国を滅ぼしに行きませんか?」

「あらエヴェリーナ、本性が出てるわよ。聖女王の名が泣くわね。まあでもその提案には賛成だけどね」

「そういえば、エヴェリーナの娘のところには帝室から、しつこく婚約を申し込まれているそうですね」

「ガハハッ! そのうちフォンハウトのところの娘みたく家出してしまうかもしれんからな! 早めに帝国をぶっ潰したがるわけだ!」


 フォンハウトが肩を竦める。


ソフィーリア・・・・・・には困ったものです。どこをほっつき歩いているのやら……ついこの間にはこんな手紙を寄越してきましてね」

「あらいいわね。うちの姪は本物がどうたら言って出て行ったきり、手紙一つ寄越さないようなのよ」

「……娘自慢なら聞かない」

「まあそう言わないで下さい。帝国とも関係あることなのですから」

「……それを早く言う」


 フォンハウトが娘から届いた手紙を読み上げると、場に再び緊張感が戻ってくる。


「帝国がドラゴンを集めているかもしれないだと?」


 ランドンの笑い声も鳴りをひそめて、険しい顔つきをする。


「姿を隠すアイテムでヒナを誘拐し、調教して戦争にでも使うつもりかしら。いかにも帝国がやりそうなことよね」

「姿を隠すアイテムですか……では」

「……うん」

「あらヴィオレッタも気付いていたの?」

「……当然」

「…………」


 急に漂いだした不穏な空気に、アリサの表情だけが戸惑い色を濃く滲ませた。

 すると後ろからナタリアが肩に手を乗せてくる。


「大丈夫ですお嬢様。この場に賊が侵入しているだけですので」


 ナタリアが決定的なその一言を発すると、姿を消していた族は慌ただしく逃げようとした。

 しかし、


「――っ!」


 動けないことに気付く。足元を見ると、いつの間にか凍りついて床に縫い止められていた。


「姿を見せないさい。さもなくばこのまま全身を凍らせるわよ」


 絶対零度の視線と声音で賊を刺すサラス。


「くっ……何故気付かれたのだ」

「姿が見えなくても、その場にいるのですから、何かしらの痕跡は残るものですわ」

「ガハハっ! ドラゴンをも騙すと言っても、ドラゴンはそういった小動物の小さな変化には気付かないからな!」

「まあそういうことですね。娘は騙されたようですが、我々はそうはいきません」


 その後、賊は水の国と闇の国の供に連行され、会場を出て行った。

 またヴィオレッタもついていったので、賊は〈背を気(ア・マン・ウィズ・ア)にする(・ウィークポイント・)(イズ・ヒドゥン)〉の弱点や、帝国のことについて洗いざらい吐かされることになるだろう。


「ところで新たな王についてまだ、あまりお聞きしてませんでしたね。どのような方だったのですか? 今どちらにいらっしゃるのですか?」


 アリサは困ったような表情になって、


「それがあまり正体を明かしたくないような雰囲でしたので……。それに2週間前に消息を断ってしまいました。結界に通過した反応がないので、おそらく空属性の魔法で転移してしまったのではないかと思います」

「あらそれは残念。いつかワタシ達の前に姿を現してくれるのかしら」

「ふふふ。そうなったら、六国を再び一つの国に戻す時でしょうか」

「そ、それで宜しいのでしょうか……?」


 身内を庇うようなものなので、今度は逆に申し訳なってくるアリサ。


「全ては新たな王の御心のままにってことです。アリサ様」

「は、はあ……」


 アリサの納得したようなしていないような様子を余所に、ランドンが笑い声を上げた。


「ガハハッ! もし新たな王が火属性を持っていたら、オレが手解きしてやろう!」

「それはいいですわね。光属性を持っていたら私が」

「あらみんなずるいわよ。水属性ならワタシもやるわ」

「…………」

「ガハハッ! ナサニエルもやるってよ!」

「あら、ならきっとヴィオレッタもやるって言うわよ」


 我こそはと次々に手を挙げるメンツに対し、フォンハウトは肩を竦めた。


「皆さん、子どもですね……まあ私も一枚噛ませてもらいますが」


 それを後ろから見るリーリスは、


(この素直になりきれない感じ、本当にソフィーそっくりよね……今頃どうしてるのかしら。セブリアントの後継者が現れたと知ったらきっと大騒ぎするわよね)


 妹が空属性を持つ新たな王が誕生していると知った時の反応を想像して、忍び笑いを漏らした。

 六王――いや、六人の最強たちの話し合いは、喧々諤々の雑談といって様相を呈してきた。

 会議は踊る。

ここまでを第二章としたいと思います!お付き合い下さった皆様へ最大級の感謝を!この節目に感想・ポイント評価を付けて頂けましたら、嬉しいです!


このお話はもちろん第三章へと続きます!

4月に入りますと、執筆に取れる時間は少なくなってしまいますが、なるべくはやくお届けできるように頑張る所存です。


またつなぎの第二・五章も第三章との間に入れる予定です。

更新間隔などの予定は、後ほど活動報告の後書きでお知らせいたします。


Twitter(@kamiZen692)でも作品について呟いているので、宜しくお願いします!

それではこの辺で!

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