↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘の向こう側  作者: 亀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

573/590

第五百七十三章 これからの距離

その日の夜。


会談を終えたあとも、透は建物の外に残っていた。


塔の船は遠くに停泊している。


人類側の施設から見ると、小さな光にしか見えない。


平和派の代表者が、隣に立った。


「眠れませんか?」


「少しだけ」


「私もです」


しばらく二人で空を見ていた。


やがて、平和派の代表者が言った。


「私たちは、あなたが帰ってこなかった理由を長い間考えていました」


「はい」


「事故だと思ったこともあります」


透は黙って聞いている。


「人類に捕まったと思ったこともあります」


「そうでしょうね」


「そして、裏切ったと思ったこともあります」


透は空を見上げた。


「分かります」


「怒らないのですか?」


「なぜ?」


「疑われていたことに」


透は少し考えた。


「その時のあなたたちには、そう考える理由があったんでしょう」


平和派の代表者は笑った。


「やはり、そう言いますか」


「他に何と言えばいいのか分からないので」


二人は静かに笑った。


少し離れたところでは、主戦派の代表者が一人で立っていた。


やがて彼もこちらへ歩いてくる。


「何を話している?」


「昔の話です」


「また昔か」


「あなたも話しますか?」


主戦派の代表者は少し考えた。


「私は、昔の話はあまり好きではありません」


「珍しいですね」


「昔を振り返ると、間違いばかり見えるからです」


透は彼を見る。


「でも、忘れるわけにもいかない」


「そうだ」


主戦派の代表者は頷いた。


「だから、記録を残す」


三人はしばらく黙った。


その後、主戦派の代表者が言った。


「材料の提供について、内部でもう一度確認します」


「はい」


「おそらく、問題ないでしょう」


透は少し驚いた。


「そんなに早く決めていいんですか?」


「すでに試験結果を見ています」


「それでも?」


「私たちは、最初からすべてを拒否するために来たわけではありません」


主戦派の代表者は続ける。


「確認するために来た」


その言葉に、透は頷いた。


「では、提供してもらえる?」


「段階的に」


「民用に?」


「はい」


「軍事には?」


主戦派の代表者は少し考えた。


「少なくとも、今回の供給については、軍事利用を認めません」


平和派の代表者も頷いた。


「人類側から使用状況の報告を受けることにします」


人類側の代表者も、それを受け入れる準備をしていた。


しかし、透は一つだけ尋ねた。


「それで、塔側は大丈夫なんですか?」


二人が透を見る。


「何が?」


「また、人類を信用しすぎることにならないですか?」


主戦派の代表者は少し笑った。


「信用するとは言っていません」


「では?」


「確認する」


透は何も言わなかった。


平和派の代表者が続ける。


「あなたもそうしてきたのでしょう?」


透は少し考えた。


「そうですね」


「なら、それでいい」


その夜、三人はそれ以上話さなかった。


翌朝。


正式な会談が再開された。


人類側の代表者が、昨日の試験結果を提出する。


塔側はそれを確認する。


そして、平和派の代表者が言った。


「少量の原材料を継続的に提供することについて、私たちは同意します」


人類側の代表者が頭を下げる。


「ありがとうございます」


「ただし、用途は民間利用を基本とします」


「はい」


「軍事目的への転用が確認された場合は、提供を停止します」


「分かりました」


主戦派の代表者が続けた。


「そして、もう一つ」


人類側の代表者が顔を上げる。


「技術を一部の勢力だけが独占する状態にはしないでください」


「それについては、こちらでも仕組みを考えます」


「具体的な方法は?」


「これから決めます」


主戦派の代表者は頷いた。


「それでいい」


それは、意外なほど簡単な答えだった。


人類側の代表者も少し笑った。


「私たちも、すぐに完璧な仕組みを作れるとは思っていません」


「私たちもです」


「では、少しずつですね」


「はい」


透は二人のやり取りを聞いていた。


かつての約束には、もっと多くの言葉があった。


細かな条件もあった。


しかし、それでも一度壊れた。


今は違う。


必要なことだけを確認している。


守れなかったときには、もう一度話す。


そのための関係を作ろうとしていた。


会談の最後に、人類側の代表者が言った。


「塔の方々は、いつまでこちらに?」


平和派の代表者は少し考えた。


「もう少し滞在します」


「調査のためですか?」


「それもあります」


彼は透を見る。


「久しぶりに会った仲間と、もう少し話したいので」


透は少し驚いた。


主戦派の代表者も笑う。


「私も同じです」


人類側の代表者は微笑んだ。


「それなら、歓迎します」


会談が終わった。


窓の外では、いつもと変わらない街が動いている。


人々は仕事へ向かい、店が開き、車が走っている。


世界は、昨日までと同じように見えた。


ただ一つだけ違っていた。


空の向こうにいた存在と、もう言葉を交わせるようになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。