プロローグ「目覚め」
釣りをしていた。
水面がきらきらしていて、きれいだった。
黒影がすぃ〜と現れて、釣り針を突いていった。
「釣れなくても、楽しいだろ?」
隣で声がしたような気がする。
誰?おじさん。
映像が切り替わった。
「よっし、いただきますしよう!」太い声。
丸テーブルの上に、お椀が2つ、皿2つ。
みそスープの匂い。食パンのあたたかさ。
ジャガイモ、にんじんの切り方が、雑。
…それに焼き芋まるごとド〜ン?
なんちゅう組み合わせだ。
また映像が切り替わった。
向かい側で誰かが歌っていた。
「燃やせ〜、燃やせ〜、何でも燃やせ〜」
物騒な歌詞だなあ、調子外れ…ヘタクソ。
またまた映像が切り替わった。
誰かがスピーチしていた。
ん?知らない…知ってる、おじさん?
何か言ってる、叫んでる。
必死な形相、口がパクパク動いてる…
言葉は風に流れて、聞き取れなかった。
ね、おじさん、今なんて言った?
…映像は途切れ、真っ暗闇。
転じて突然、目の前に巨大な焚き火が燃えていた。いやいや、焚き火なんて生半可じゃない。
柱だ、火の柱。大熱風が全身を襲う。
「あっち、あちあち、うわっち…ちち」
空まで届きそう…そびえ立つ火柱。
その前で、何百人もの人だかりが輪になって踊っていた。国も、言葉も、肌の色も違う人たちが、歌って、叫んで、笑っていた。感情を発散させていた、爆発させていた。
映像が少し揺れた。左右、上下。
壁がきしむ音。床がふわっと浮く感じ。
知らないおじさんが、こっちを見て笑っていた。
「次は、もっとすごい場所、行こうな」
頭の上に手を置かれた気がする。
じんわり頭頂部が温かい…
カンカン!カンカン!…カンカンカンカン!
「起きなさ〜い!」
声とともに、甲高い音が耳元で響いた。
「だあ〜!鼓膜が破れるっ、やかまし!」
一気に意識が引き戻されて、まぶたを開けると天井だった。
耳元には鍋とオタマ、そんで、お母さんの顔。
「うなされてたよ?どした?」
盛大な目覚ましをかましてくれた割に真顔で聞いてくる。よっぽどの顔してたな、俺。
「あ〜、なんだろ。悪夢?」
フラッシュ映像みたいに現れては消える。
たまに見る夢…いや、幼いころの記憶か?
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