第四章 八月上旬~九月中旬 4
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本を整理していた若い男性店員に副店長の山田を呼び出してもらう。文房具担当の四十年配の小柄な男性がカーテンで仕切られた奥から出て来た。
「こんにちは、あれ、女性の方が引継ぎですか?」
「はい」
「もちろん、全然、かまわないんですけど。すいません、うちは、事務室兼作業場なんて作りなので」
山田副店長は、明美に言った。
五、六人の若い女性達が漫画本にビニールを掛けている部屋に通される。その向こう側に机が一列に並んでいる。
「吉川さん、お茶入れてくれる」
ビニール掛けのひとりにお茶入れを頼むと、山田副店長は自分の椅子を回転させ、その前に部屋の隅に重なって置いてあるパイプ椅子をふたつ並べた。
春夫は、明美を紹介する。いつ異変に気付くか?よくないな、と思いつつ、それを楽しんでいる自分がいるのも確かである。
「外、暑いでしょう?」
「駅からここまで強力な熱線を浴びてる感じでした」
春夫が言えば、
「此処は、特別ですよ、特別」
山田副店長が答える。
夏の時期の熊谷での商談においては、特別の暑さが話のとっかかりに使われることが多いに違いない。
「山田さんは、ここで生まれ育ったんですか?」
「生まれは栃木です。何の因果かこんな暑い土地で働くことになっちゃって」
「お茶、ここに置いときます」
ふたり分のお茶が山田の隣の机に置かれたところで、暑さの話は終了した。
「今日フェルシアーノさんに来ていただいたのは、文房具販売の命運を御社に託そうということからです」
「命運ですか?」
「ええ、ここの文具売り場の現状言いますと、売り上げ芳しくなんですよ。単純に比較していいかどうかは分かりませんけど、面積比で計算すると書籍よりかなり悪い状況にあります。佐伯さんには既に説明していますけど、うちはオーナー、出資者がいて社長がいるという形です」
山田副店長は、言った。




