第三章 六月下旬~七月下旬 2
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「えっ?」
刈谷係長が、明美の声に踵を返した。
「幹細胞化粧品のサンプル」
「ああ、さっそく?ありがとう」
刈谷係長は、弾んだ声と共に明美に歩み寄る。
明美は、デスクの引き出しを開け、バッグから小さな瓶を出して刈谷係長に手渡した。
「フーン、これがいいんだ」
刈谷係長は、瓶のラベルに視線を投げかける。
「お肌が、生き生きして来ますよ。差し上げます。私は、お試し終わりましたから」
「いいのう。ありがとう。いただいておきます。アンチエイジング頑張るわ」
刈谷係長は、ご機嫌で経理の席に向かって歩いて行った。
アンチエイジングの化粧品ってことは、お肌の衰えを食い止めるってことだろうか。幹細胞化粧品とやらの知識を持ち合わせていない春夫は勝手に想像する。
先刻の明美の「ここまで、ここまで」を無視して、佐和子が話題を続ける。
「西野さんって足のラインがきれいなのよ。ミニとか穿いたら似合うんじゃない?」
「本当。嬉しい」
「たまには、ミニのフレアースカートで営業活動すれば?佐伯さん、いいと思いません?」
「膝上二十センチはまずいよ」
「穿きませんよ、そんな短いの」
「だけど、ショーの時は、ミニのフリフリなんてのもあったでしょう?」
佐和子が聞いた。
「あったわよ。お仕事だから、そんなのへっちゃらよ。足のラインが無骨なニューハーフもいたしね」
「顔も無骨な人もいたでしょう?」
松尾が話題に入って来た。
「そりゃあ、もう。だけど、キモ系がいいってお客さんもいるわけで、ああいうお店って、うまい具合にバランスが取れているのよね」
「一度行ってみたいね」
春夫が言うと
「行ってみたら?何事も体験。私は、どこのお店であっても一緒には行かないけどね」
明美は、さらりと答えたのだった。




