第二章 五月下旬~六月中旬 23
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「彼女達、笑ってませんでした?」
「笑ってた。だから、席を立った。西野さんのヒップの揺れと『女性用に決まってるでしょ』がおかしかったんじゃない?」
自分への笑いはなかったことにして、春夫は答えた。
「ニューハーフクラブのお店のなかで女性用に入るのは分かるけどさ。外でもそうなの?」
「デパートとか駅のトイレとかの意味ですか?」
「うん、知らない人同士が一緒になる場所」
「あくまで、私の場合は、女子用に入る」
「じゃあ、フェリシアーノでは、男性用を使ってください、って言われた時、嫌だった?」
「それは、想定の範囲だったから、黙って受け入れました。だけど、聞いてくれます。おかしいことがあって」
明美は、言った。
「聞きたい」
「研修中にね、私が、男性用トイレに入って行ったら、武井部長が用を足していたんですよ」
「アッっと思って扉閉めようかしら、と一瞬思ったんだけど、それもおかしいな、と足を踏み入れたら、武井部長が、『失礼』って言ったの」
「武井部長が、『失礼』か。おかしい。西野さんは?」
「無反応も悪いかな、と思って『こちらこそ、失礼します』って言って個室に入って水を流してすませましたけどね」
「個室で、する時は、立ったまま?」と聞いたら怒るだろうな、と思ってやめた。
トイレの話は、ここまでだった。
車の中で、今日の日報の書き方について、アドバイスしている時、春夫は、これぞ、子守り役の仕事なのだと思ったのだった。




