第二章 五月下旬~六月中旬 19
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「ただいま参ります。イケメンさんが、一緒でしょう?なんて言ってましたよ」
女性店員は、春夫を、そして、明美に視線を移した。
「アタッ、美人に変更になったんですけど」
「イケメンだなんて言ったんですか?」
明美が、抗議の声をあげた。声が大きい。
「えっ」
女性店員が、口を半開きにしたまま、明美の顔を見つめる。
「ありがとうございます」
春夫は、急いでカウンターから離れた。
程なく長谷川店長が、ヒールの音を立てながら歩いて来る。相変わらずの柔らかな表情である。オレンジのジャンパーに明るいブルーのタイトスカート姿である。
「どうぞ」
軽く会釈して、ふたりを店長室に案内する。
名刺交換をする。
「今度、レイハナ八号店を担当することになりました新入社員の西野明美でございます。よろしくお願いいたします」
「随分の美人さんね。何か、お名刺交換した時の色っぽい視線にドキッとしちゃった。お声もとってもハスキーで」
「すいません。まだ、こちらの世界の仕事に慣れてないものでして」
「そうですか。えっ、こちらの世界?」
長谷川店長は、沈黙した。明美の顔を見つめている。ヒールを履いた長谷川店長と明美はほぼ同じ位の背の高さにあった。長谷川店長の視線は、明美の顔から喉仏の辺りに移動した。
「あのう、失礼ですけど。ああ、間違っていたらごめんなさい。すごく、女性らしさを感じますけど、ひょっとしてこの方、――」
ここで数秒の間を置き、長谷川店長は「かしら?」と続けた。
「はい、現時点の構造上は男性でございます。でも、気持ちは完璧に女性です」
明美は、答えた。
「構造上?」
「いい過ぎ。すいません、長谷川店長が期待していたイケメンでなくて」
「かまわないわよ。今の時代、トランスジェンダーの方というのが正しいのかしらね。お綺麗」
長谷川店長の顔が、ほんのりピンク色に変わった。
「ニューハーフでいいです」
「今後は、西野さんとお話を続けていけばいいわけですね」
「はい、しばらく、私もバックアップいたしますが、よろしくお願いします」
春夫は、軽く頭を下げ言った。店長室には、四人掛けのソファとテーブルがある。
「お座りになって」
と言うと、店長自らコーヒーを入れてくれる。




