第二章 五月下旬~六月中旬 16
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「まずいよ。サービスし過ぎ。頭を下げるだけでいいから」
「すいません。乗せられちゃいました」
「後ろ振り向いたのは店長が見送りしてくれると思ったから?」
「風を感じたの、なあんてね。ひょっとすると、と思っただけです。だけど、関西の人ってあけすけ」
「ズバズバ言って来るよね。だけど、あの人、ニューハーフとかに本気になる人なのかな?」
「じゃないと思いますよ。興味はあると思うけど。クラブに物珍しさで来るお客さんってけっこういますよ」
「まあ、今日の収穫は、西野さんのおかげでワゴンにうちの商品を入れられる可能性が出来たということだな」
「いつもすげないんですか?」
「うん、はっきり言って。ワゴン、今日もキャニオンの商品が入ってた」
「キャニオンですか?」
「立体ジグゾーパズルってあったでしょ、大阪のメーカー。文房具メーカーじゃないから競合はしないけど。パピルは、本社大阪なので、その関係で、以前からつながりがあったのかも知れないけどね」
「なかなか営業も大変ですね」
「あなたも大変だった?」
「そりゃあ、もう」
明美は、言葉を切った。
「新宿、赤坂、どっち?」
春夫は、佐野店長の質問をいきなり明美にぶつけてみる。
「言いません」
明美の答えは、きっぱり、お断りだった。
次が、本日の本命、メインイベントだった。
大宮を目指す車が信号で止まるのを待ちかねたかに明美が聞いて来る。
「レイハナは、都内のお店には行ったことありますけど、大宮の八号店って大きいんですか?」
「大きいね。女性店長に会う前に店内をひと通り歩いて雰囲気つかんでもらうけど」
「はい」
明美は小気味よい「はい」を返して来た。
大宮まで、もう少しの所での信号待ち、今、春夫の頭の中にあるのは、助手席に座る明美をレイハナ八号店の長谷川店長に紹介する場面だった。絶対、忘れてはいないだろうな。




