第二章 五月下旬~六月中旬 10
10
ただ、「おとなの女性のためのペンケース」、「花柄文房具ポーチ」このふたつの製品だけで、フェルシアーノだけのコーナーを作ってくれというのは難しい。文房具の場合、一般的にノート、ペンやマジック、ファイリングシステム、と用途別に商品が並べられるのが普通だからだ。「特定の会社だけのコーナーを設けるのは出来ないんですよね」ときっぱり断られることがけっこうあった。
営業部で、これまで、コーナー設置をゲットしたのは渡海だけだった。
レイハナ八号店がコーナーを作ってくれれば、営業部としては、喜ばしい限りなのである。
「そうか。西野さんに引き継ぐ店だな。もし取れたら、ふたりにポイントつけるからね」
木川課長は、言った。
ポイント、今期の重要課題だけに月に一回開かれる営業会議の資料に営業課の各自が担当する売り上げ額、達成率などと共にコーナー設置に伴うポイントが記載される。店舗一軒につき五ポイントである。ポイントゲットの数が、夏、冬のボーナス査定に影響を与える可能性もある。営業の個人、個人にとってもおろそかには出来ないことなのである。
「ありがとうございます。まずは、確約をとって、いい場所にコーナーを作ってもらえるよう交渉します」
「うん、西野さんも頑張ってね。いい考えがあったら、佐伯君にどんどん、提案していいからね」
「頑張ります」
明美は豊かな胸の前で両の拳をグイッと小さく振り下ろした。
「うまくいけば、レイハナの他の店舗でも追随してくれるかも知れないよな」
「そうですね」
「同じ年、同じ学年同士として切磋琢磨してください」
「いいライバルになりましょう」
「ライバルだなんて。ご指導よろしくお願いします」
明美は、春夫に頭を下げた。




