01話 解雇された騎士団長
《ムジーク王国ー王都ピアノ》
・・・チュンチュン。
小鳥の声が聞こえる。
「起きて!フレデリック」
その声を聞いた時・・・
俺は全てを悟った。
目脂を擦って、ぼやけた視界を
復活させる。
俺は騎士団長フレデリック・ショパニ。
前シリーズから1年が経過し、かれこれ3年。現職は平和なこの国の兵士を育てる騎士団長。
騎士団長であり、元英雄。それが俺。
3年前の俺の活躍は歴史上にその名前を刻まれる事は無かったが近々自費出版で伝記を出そうと思うレベルのものだった。
おっと・・・今はそれどころじゃない。
状況の整理だ。
ここは、王都ピアノのどこかの宿だ。
《どこかの宿》
そして俺は大きめのベッドで寝ている。
そして、目の前には女がいる。
女は今まさに服を着ていた。
赤いドレス姿が映る。
・・・朝チュン。
「アンナ・・・この事は・・・」
「分かってるわよ!騎士団長!」
そう言い残して先に宿を出た女・・・
アンナは齢19の麗しの女性だ。
第4代ムジーク国王が大切に大切に大切に・・・
大切に育てた娘。
そう、俺は察していた。
察しが良すぎるのだ英雄は。
そう、この第1話のサブタイトル・・・
ー〝解雇された騎士団長〟ー
うん。間違いない。
俺の事だよな。
アンナに口止めはしたけれど・・・
この物語の導入とサブタイトルは間違いない。
《・・・フレデリックとアンナの情事から3日》
《ムジーク城ー王室》
「分かるね?」
場面は切り替わる。直立不動の俺。
顔をピクピクさせながら真っ赤な顔で俺に語りかけるムジーク国王。
「わ、分かる?」
「3日前の祝祭の日・・・その夜・・・君は何をしていたかな?」
「ゔ・・・うーんと・・・」
焦りのあまり、「う」に濁点がついてしまう俺。
実のところ、あまり記憶が無い。
何故ならお酒を飲みすぎたからだ。
「正直に答えなさい・・・」
「いやぁ〜、王様・・・実は記憶が無くって・・・」
「クビだ」
あっ。やっぱり!?
「クビィ〜ッ!!!!クビクビクビィ!!!!解雇解雇解雇カイコォッ!!!!」
前シリーズでは不当に解雇された俺だが
今回はちゃんと理由があったので反論の余地がなかった。
《ムジーク城ー兵士訓練所》
「騎士団長に礼ッ!!!!」
兵士団を取りまとめる、俺の右腕、マタタキが俺の登場と共に兵達を整列させ、号令をかけた。
約350名の兵士たち。
出会った頃は弱かったが、この俺が3年鍛え上げた今、それなりの力はあるはずだ。
・・・そうだ。ちょうどよかったんだ。
たぶん、役割が終わった。
「今日は皆に話がある」
俺は改まる。何も聞かされていないマタタキも驚いていた。
「う〜ん、と。その、俺、騎士団長解雇されたから」
てへぇ〜っ!みたいな顔をして言ってみた。
し〜ん。
「フッさ・・・き、騎士団長!?今なんて?」
驚くマタタキ。
「うん。解雇された」
「どうして!?」
350余りの兵士達もキョトンとしている。
「い、いやぁ〜、その、ね」
え?これ?言っちゃって良いのか?
いや、流石にまずいよなぁ・・・
その時。
「号外だぁっ!号外だぁっ!!!!」
ビラを撒いて走り回る男が現れて、兵士達に、そして俺にそのビラを渡して去っていく。
ー〝騎士団長フレデリック!ムジーク王の愛娘アンナとの不貞行為で追放!〟ー
との見出しが書かれていた。
「えっ!フッさん!?」
ざわつく兵士達。
「おいおい」「やっちまったな」「祝祭の日の団長、かなり酔ってたしな」
「でもさぁ」「アンナって・・・」「すげーブスだよな」
「おい!それは言うな!」「ところで俺たちどうなるんだ!?」
「みんな・・・そういう訳で・・・その・・・騎士団はとりあえず・・・解散ッ!」
「おい!俺たちの給料はどうなるんだよ!」
「団長!そりゃないぜ!」
「どうせそうなるなら美人抱けよ!」
「ワイらの生活どうすんだよ!」
「クソ酔っ払いジジイ!」
「出て行け〜っ!」
・・・これが俺の人生ってヤツよ。
俺はヤジと色々なモノを投げられながら、城を後にする。
マタタキは非常に冷たい目で俺を見ていた。
ビラは国中にばら撒かれる。
不貞行為の騎士団長・・・とほほ。
俺はそのビラの裏面を見てみる。
ー〝グラフィカ帝国・禁忌魔法の研究開発に成功か〟ー
それは・・・
これから始まる消極的な戦争の始まりだった。




