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その座を奪われた主人公   作者: 大野春
第二章 存じない存在
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18話 透明になる4人


 「このぐらいの場所でいいだろう」

 街から少し離れた場所で老人が切り出した。

 夕暮れの街は煙が上っている。

 そこはなんの変哲もない平原だ。


 「私も歩くのが限界でね、ここでひと休みとしようか」


 老人が腰の巾着から例の結晶を取り出した。

 「この結晶に問いかける。少し待ってくれ」

 そして何かを唱え始めた。


 そうすると、俺たちの姿がみるみると・・・

 信じられない・・・透明になっていく。


 「これは透明化インビシブルというものだ。一時的に姿を透明に出来る」

 「素晴らしい力だ・・・」

 「視覚的に透明になるだけで、物理的な攻撃は受けるし、我々の声も聞こえる。ただ、こうやって身を隠すには充分な力さ」

 「魔法って凄いんだな」


ーーーーー


 俺はピエスパに色々な事を聞いた。

 当時の事から、今の事、俺たちの事、ピエスパの事。



 俺が騎士として城で働いていた頃。

 ピエスパも時を同じくして城で働いていた。

俺みたいな戦いに出る人間達は〝外〟と呼び、ピエスパは国の発展に関する内政の行なっていた〝内〟と呼ばれる人間だった。

 当然俺たちには面識は無かったのだが、俺のソーレント戦役での活躍というのは城内に響いており、内側の人間達にもその名前は渡っていたという。

 マタタキやシズカは、やっと俺の凄さを理解してくれたようだ。

 俺は鼻高々・・・数センチ鼻が伸びていた。


 

 「私はね、ずっと技術研究開発を行っていたんだ。古くは建築、そして蒸気・・・最後は魔法だった」


 ピエスパは皺だらけの顔の皺の数を増やしながら話した。

 異国から現れた大賢人がその技術基礎を伝承し、その発展形で蒸気技術ができた事。


 そして、同じく大賢人の力を応用した魔法という技術ができた事。


 「蒸気や魔法には純度の高い水が必要になる。我々は当時水源が枯渇していたが、ツヨシという男が改善を図ったとされている。その男のお陰で、地下水道を通して城の地下へ純度の高い水を流入出来る様になった。そこから一気に技術は発展したのだ」


 ・・・やっと、出て来た。


 あの憎き異世界転生者・・・ツヨシの名前。

 俺の職を奪った男!ツヨシ!!!


「俺はそのツヨシという男に用があるんだ。何か知ってることは無いか?」

「・・・すまない、私は内側の人間だからな・・・しかし、ツヨシが城に、いや、国に貢献していたのは間違いない。王の交代からその名前はあまり聞かなくなったが・・・」


 なんて事だ・・・

 別にそんなに悪い事をしているわけじゃないのか?


「ねぇねぇ、ピエスパさんは、どうして城を抜け出して来たの?」

 マタタキの声が聞こえる。

 素朴な疑問だった。俺も気になっていた。



「理由はいくつかある。ひとつは、私の研究が・・・人を不幸にするからだ」



「不幸・・・」とシズカがぼそりと言うと、誰も口を開かなくなった。


 蒸気爆弾・・・これによって、内乱が起きている。

 俺も死にかけた。あれはヤバい。

 蒸気ってのはそもそも人を殺める為に作ったものでは無いのだろうが、現実は違う。


「4代目ムジーク国王は、更なる国の発展を望んでいる。蒸気や魔法の為に必要なその水源の確保に躍起になっているんだ」


ピエスパは一呼吸置いて、続けた。


「そして、何より、その副産物・・・」


「副産物?」


「排出された、汚れた水はこの国の自然を汚染しつつある」


「カ、カンキョー問題がこの世界でも・・・」

マタタキが驚いている。

何か思い当たる節でもあるのだろうか。


「それらに抗うのが、ノイズ派だ。私の根本の考えもノイズ派に近いのかもしれない。ただ、私は彼らのやり方が正しいとは思わない。犠牲を伴わずに・・・どうにか生きていく方法があるはずなんだ」



マタタキやシズカ、そしてピエスパ。



彼らには理解して貰えないかもしれない。

しかし、俺の中では、国の発展が第一という気持ちがあった。


その為の犠牲というものは付き物だ・・・


俺が幾多の戦いで犠牲にしてきたモノはたくさんある。友達や信念さえも・・・


そんな日和見主義では、生きてはいけない。

少なくとも、国は発展出来ない。


ただ、それを上手く表現は出来ない。

彼らは、戦いや犠牲、死というものとは

少し遠い位置にいるからだ。



「俺は王都に戻る。それが変わらない目標だ」



そうすれば、何かが見える筈だ。



「ノイズ派は近々、王都へ攻撃を仕掛ける。それだけは巻き込まれない方が良い」とピエスパ。


「随分と詳しいのだな」



「ノイズ派には詳しいんだ。詳しいも何も・・・」

ピエスパは城を抜け出した理由を再び語る。



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