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てくれるのならば。声が届かない高みへ飛んでいってしまった君をどうやって引きとめようか、留めようかと模索する。死ぬということを体が受け入れるなら、彼女も見つけられたのだろうか。君の居る場所へ。そこまで行けただろうか。
ただただ苦しみ、意識の薄れが今なお続いている。君は居ない。冷たいだけの湖底。いつの間にか光は消え去り、静かな影だけが何処までも続いている。死にたくない。死にたくない。死にたくない。この世界にはもう関心などないけれど、彼女に逢うまでは、最後に逢うまでは、生き続けないといけない。生きたくはないけれど・・・。
それでも俺は死ねない。
下界から大きな衝撃が伝わった。水に振動が伝わり、瞼に響く。激しく揺れ、体が湖と共に波打つ。沈んでいるせいでバシャッという音はしなかった。ただ、体に弾丸を撃たれた様な痛みが、水に包まれながら神経を奮い立たせたことが分かった。
ザッパーンッ
手が何かに触れ吸い付かれるように、彼、櫻井亜紀穂の腕が引っ張られた。掴れた腕はだるく、皮膚はふやけ感覚は殆どない。水から体を引き上げると、浮力がとたんに落ち体重全部が圧し掛かる。さらに服が水分を吸収し、よけいに重くなる。激しく水面が、湖全体が波紋を描いた。久しぶりに耳が、音を拾っていくような気がした。ほんの二、三分浸かっていただけなのに外の音が懐かしい。遮断がとけた鼓膜がもっと音を聴かせろ、とせがんでいる。バシャバシャと誰かが体を不規則に必死に動かし、ばたつかせ、亜紀穂の体を水に流れに任せ運び、泳いでいた。意識のない体を懸命に引っ張る誰かの姿はさぞ滑稽だろう。水に濡れてビチョビチョだ。きっと男だな。力が強い。なんで今俺は助けられているんだろう。亜紀穂は人事のようにぼんやりとそんなことを思った。
「櫻井!おい、大丈夫か?」
人間切羽詰るとこういう時は無駄な問いしか出てこないらしい。うっすらと瞳を開けるとそこには、やっぱりびしょ濡れの滑稽な、しか