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「わかったよ、降参。行こう」
両手を挙げ、そういうと夏目は嬉しそうに、湖まで一緒に入った仲だもんな、とか櫻井も野生が好きなんだろう、などなど笑いを惜しげもなく零していた。少しだけ彼女にその様が似ていたから、もしくはこの背景がそう思わせたのかもしれない。思わず笑った。
「もしかしたら動物とかいるかもしれない」
うきうきとそう洩らす夏目はやはり彼女の面影を映している。ように見えた。
「あ、ついでに言っておくと」
獣道を歩き始めながら、前にいる夏目に亜紀穂は声をかけた。地面に落ちている枝や、さっきまで降っていた雨で抜かるんだ土、絡まっている蔓のせいで、夏目は振り返らずに何?、と聞く。集中しないと地面が急斜面で滑るのだ。
「俺が口悪いのは嫌いな相手だけだから安心してよ」
「うん、分かった。覚えとく。・・・・・聞こえてたのか!」
「地獄耳だから」
にっこりと不敵の笑いを象る。人魚の声をとった魔女ってこんな顔じゃないかなって自分でも思う。夏目は振り向いて小さく引きつり笑いを浮かべた。歩は休めない。あくまで歩いている。夏目はまた前を向きながら、きっと困りながらも笑っている。口に手を押さえながら、肩が少し震えているから分かってしまう。亜紀穂は息を小さく吐きながら足を伸びやかに動かした。
死のうと思った。いや、彼女の側にいきたかったのだ。あの場所にはきっといない。どこにいるんだろう?あの村に帰ったのかもしれない。けれど保障もない。確かめなくてはいけないけれど、でもどうやって?今でもあの場所にいるのか?
「服、気持ち悪いな」
夏目が前からそう呟く。空気中の水蒸気を振動して、よけいに声が潤った強い響きに感じる。
「何処で乾かそうか?」




