第6片 縁も紫(縁)もあるらしい
カラフルピースシリーズ第二話 完結
事件翌日。僕はとある人と会っていた。
「お目当ての物は手に入りましたか?蟲蔵井さん」
「———————いいえ、石川礫さんと言った方がよろしいですかね」
「ご明察ですわ。わたくしの手では盗めませんでいたが、結果的には成功ですかしらね?」
「一応聞いておきますわ。どうしてわたくしが石川礫であるとお気づきになられたんですの?」
「そんなこと簡単です。だって、登場人物欄に蟲蔵井賢治なんて人いないんですから」
「メタ過ぎますわ!!!」
「それはまあ冗談なんですが、いくつか怪しむべきところはありました。やけにいい匂いがしたり、戦闘能力が少々高すぎたり、そんなに多くの人と会っているわけではないのですがEENに所属するプロの方達は一点特化なのでしょう。その道に必要な技術を磨き、特別なこだわりを持っていたりする」
「それなのに、あなたのスキルツリーと行動に違和感があった。どうして、身だしなみを気にして、いい匂いがするのです? どうせ、誰もいない廃墟に忍び込むのに。どうして、戦闘技術が高いのです? どうして銃を持っているのです? あなたの発言を基にするなら、主な活動場所は日本。そこまで、危険な目にあうことは無いでしょう。もしあうにしても、きっと隠密したりする方が楽で、危険も少ないでしょう。そして、一番僕があなたを疑うきっかけになったのは、廃墟での大男2人との戦闘が終わった後の手が異様に冷たかったことです。——まるで無機物のように。あれだけの緊張するような状態で体温が上がらないはず、手に汗握らないはずないでしょう。もし、それが生身の手だったとしても、落ち着きすぎている」
「でも、僕が確信を持ったのはね。ノースブラザー島で2人の大男の死体が発見されたことですよ。流石にたまたまなんてことがあるわけないです。あなたが殺したと考えるのが自然だ。そして、悪人を殺す、両手両足が義足の女性。そんなものあなたしか居ませんよ。石川礫さん」
「それで……、わたくしをどうするおつもりで?」
「あなたを捕まえて報酬を頂きたいところなんですが、依頼元が死んじゃってますし」
「そんなものただの言い訳でしょう。それとは別にわたくしには懸賞金がかけられているのですから」
「そういわれると弱りますね。うーんじゃあこういうのはどうです?僕があなたの犯行動機を聞いて納得できれば見逃すし、許せないものだったら捕まえる。その見極めのために今は保留してるってのは」
「ハア。短い付き合いでしたが、何となくあなたのことが分かってきたような気がしますわ。あなた世間一般の良識よりも自分の信念を優先するタイプの人ですわね。まあ……わたくしも似たようなものですけど」
「どうです?聞かせてはくれませんか?」
「いいですわ。それでも、詳しい話は言えませんわ」
「それはどうして?」
「あなたのためですわ」
「この数日間の内にEENはご覧になりました?」
「いいえ」
「蟲蔵井の投稿が削除されてましたわ」
「そこがちょっと気になってたんですが、蟲蔵井さんってあなたが持つ変装のキャラクターの一つとかじゃなくて実在する人なんですか?」
「ええ、そうですわ。わたくしはあの売られている情報を買いましたの。そこで詳しい話も聞いたから彼のフリをすることができたんですわ」
「話を戻しますがおそらく彼。消されましたわね」
「えっ。マジっすか?」
「だからあなたもお気をつけください」
えぇー、それで僕も消されたらどうしてくれる。
「そうは言ってもわたくしがそうであるように恐らくあなたは大丈夫ですわ」
「理由は?」
「だってわたくしが今の今まで生きているじゃありませんの」
「そう堂々と言われると説得力ありますね」
「彼は今わたくしたちが持っている情報よりももっと何か別の知ってはいけない物をあの町で見つけてしまった、あるいはそうだと「何か」に思われたから消されたのでしょう」
「ところで蟲蔵井さんとやりとりしたと仰いましたが、あなたは何のプロとしてEENに登録されているんですか?」
「怪盗ですわね。テロリストはあくまで危険人物であるラベリングで、職業じゃありませんからね」
「犯罪者でもその道を極めていれば招待しちゃうんですね」
「その通りですわ。狛江パトスも暗殺者として加入しているはずですわ。あの「世界」は本当に見境が無いですからね。正義なんてものはありませんわ。せいぜい気を付けなさって」
「そろそろ、犯行動機のほうをお聞きしても」
「もうっ、あなたのほうから色々話題をおお振りになったんでございましょ」
口をすぼめてそう言う。彼女の素顔でやられると素直に「可愛いな」という感想が出てくる顔だった。
「わたくしの犯行動機は故郷の町を滅亡に追いやった張本人をいつか。この手で。殺すことですわ」
「えっ、町を一つ滅ぼした黒幕が居るのですか?」
「ええ」
「復讐……ですか」
「そう聞かれると少し足りないような気がしますわね…。確かに復讐心が無いこともありませんが。もはや人生の目標とかゴールとかそういうものの近い気がしますわ。わたくしの本来生きるはずだった人生のあらゆる可能性はあの日すべてぐちゃぐちゃに跡形もなく壊されてしまったんですわ」
「今回の件でその欠片が少しだけほんの少しだけ見つかりましたけれど、それでもわたくしは立ち止まるつもりは毛頭ないですわ」
強い意志を感じる目だった。
「もしかしてそれが喜咲さんですか?」
「パトスも、ですわ。わたくしたちは幼馴染だったんですわ。パトスは同姓同名だったからもしやとは思ってましたが、喜咲の方は名字が変わっているからノーマークでしたわ。まさかわたくしたち3人ともテロリストになっているなんて思いまもしませんでしたわ」
「ままと呼ばれていたのは?」
「それはちょっと事情がありましてね……。あの日事件が起こった日。生き残った私たち三人はそれぞれ後遺症を負いました。喜咲は記憶をパトスは感情をそしてわたくしは四肢を失いましたわ」
「その言い方からして、住人は全員……」
一つの町の住人がすべて死に生存者の後遺症もバラバラ。一体何が起こったんだ?
「その元凶は言えませんが情報統制をした「何か」についてはお教えして差し上げましょう。彼らは『理』この世界の調整者ですわ」
「この世にはいくつかの世界とそれらの順位があります。第一位『一般世界』第二位『EEN』第三位『カラフルピース』第四位『L&G』第五位『朽無士の里』。それぞれの世界の人間をたった一人で相手取ることができる者数名で構成された組織」
「良いです事?彼らだけは決して敵に回してはいけませんわ。あなたとあなたの周りの人々を守りたいのでしたらね」
『理』……か。
「一人で一つの世界を相手どることができるってそんなに強いんですか?」
「わたくしが耳に入れた話ですけど、EENのルールの方はありとあるゆるものを『滅す』ことができるとか」
ありとあらゆるもの。そんなことができるのだろうか。少なくともそんなことができるカラフルピースなんて僕は想像できない。
「その調整対象とやらにならないためにはどうすればいいんですか?」
「世界間の均衡を崩さないこと。としか言えませんわ」
「……これからどうするんです?礫さん」
「変わりませんわ。悪人を殺し続けるだけですわ」
「そんなことして、……大丈夫なんですか?」
「わたくしにはもはやこう生きるほかありませんの。ですから、もうわたくしのことはお忘れください」
言われなくても忘れてしまうのだ。僕は人の名前を覚えることは出来ないから。それでも。
————忘れたくないとは思っているんだ。
「さようなら、礫さん」
「ええ、ごきげんよう。」
「まったく、わたくしのほうが心を盗まれてしまったかもしれませんわね、なんて」
「さようなら。探偵さん」
風が強く吹いた。
僕の耳には、
————何も届かなかった。
「ちなみにEENには仕事に対して、コメントをしたり、評価をしたりできるらしいよ。僕は未評価だったけど……」
「そんなに気になるんでしたら、やっぱりわたくしを捕まえれば良かったじゃありませんの」
「いいんだ。僕が実力不足なのは分かっているから」
「ハア、しょうがないですわね」
礫さんがスマホをいじると僕に通知が来た。
「匿名で評価しときましたわ」
「良いんですか!」
「滅茶苦茶嬉しそうですわね……。今回だけですわよ。あなたが本気になれば世紀のテロリストを1人捕まえられていたのですし。やっぱり人は評価された方が気分はいいでしょう」
感謝。
どうも作者の嬉嬉毀棄 奇己着です。ここまで読んでいただき、ありがとうございます。これにて、カラフルピースシリーズ第二話 『三人のテロリスト』 収集完了です。
第三話に行く前に短片一つと外伝が挟まれます。気が向きましたら、そちらも読んでいただけると悦びを感じます。




