203号室へ
迷いなく歩く鈴音に連れられ、辿り着いたのはボロいアパートの一室、203号室。
「いやいや……これはもうダメでしょ」
私の呟きを無視して鈴音はドアノブに手をかける。制止する間もなくギィ……とドアを開けた。あ、鍵開いてる……?
立ちすくむ私を置いて彼女は元気に声をかける。
「誰かいませんかー!」
まっすぐ伸びる廊下はすぐに闇に飲まれ、先は見えない。奥の方でごそ……と音がした。私は最悪ぶん殴ってでも逃げ出そうと身構え、鈴音は呑気に微笑んでいる。
「……何か用か?」
ぬっと暗闇から現れたのは、無造作な髪に妙に冷めた目つき、そのくせどことなく整った顔の背が高くひょろりとした歳のよく分からない男だった。
「私達、あの張り紙を見て来ました。会員になりた――」
楽しそうに言う鈴音を遮って男に尋ねる。
「その前に! あの、あなたは誰ですか?」
鈴音が不満気に私を見るが、とりあえずこの人の素性を明らかにしないことには彼女を近づかせるわけにはいかない。なんといっても鈴音は可愛いのだ。そして危機感が0とくる。
「……まぁ入れ」
無愛想にそれだけ言い奥へと消えた。入っても大丈夫なのか迷う私に構わず靴を脱ぐ鈴音の腕を掴む。
「何?」
「なにじゃないよ! えーと、何かあったらすぐ逃げる。いいね? あと、あの人と2人っきりになっちゃだめ。個人情報漏らすのもだめ。それと、私の後ろにいること」
わかった? と念を押すと鈴音はおとなしく頷いた。
よし。私、そして鈴音の順に暗い廊下を進んだ。中は思ったより広いようで数m先にぼんやり灯りが見えている。
突き当たりの部屋は驚くほど殺風景な六畳ほどの広さの部屋だった。中央には質素な木の机が置かれ、その向こうのパイプ椅子に男が座って私達を待っていた。正面には同じ椅子が1つ、ポツンと置いてある。
私は横によけ、鈴音を座らせた。いざという時に動きやすい方がいい。
「それで、あなたは?」
相変わらず冷めた目で彼は私をじっと見つめる。
「君たちは?」
こいつ……人の名前を聞きたきゃまず自分から名乗れってことか。仕方ない。
「かえで、高2です」
驚いた鈴音が目で訴えてくる。私の名前は楓と書いてめいと読むのだが、なんとなく本名を教えたくなかった。
「あなたのことを教えてくださったら、この子の名前もお教えします」
私も強気に見つめ返す。数秒後、彼はふっと笑った。
「…かえで、ね。分かったよ。俺は五十嵐飛牙。紙に書いたとおり、協力者を探している」
「何の為に?」
ニヤリと唇の端をつり上げた。
「世界を救うためさ。」