猫を捕まえて
「鍵、閉めた方がいいと思いますよ」
簡単な面接を行うと言う五十嵐にそう提案した。どうして施錠しないのか不思議でしかない。
「ん? じゃあかけてきてくれ」
何故そうなる? 彼がいなくなったら少し部屋の中を物色してやろうと思ったのに。
仕方なく私は鈴音を連れ玄関に戻った。鍵をかけ、ついでに鈴音に言う。
「名前、鈴って言って」
「そこまでしなくても大丈夫でしょ」
私は首をふる。
「そうかもしれないけど、気を付けるに越したことないでしょ?」
鈴音は一応納得してくれた。
部屋に戻ると五十嵐はノートサイズの薄いパッドでなにやら操作をしていた。
「かえで、だったな? お前は?」
くいっと顎で鈴音をさす。彼女はその態度に少しムッとしたようだ。
「……鈴です」
「お前たちの関係は」
こちらを見る鈴音に頷き、答える。
「親友です」
「学校は?」
「行っています。学校名を言う必要はありますか?」
私の答えを打ち込んでいるのだろう、画面を触りながら彼は軽く首を傾げた。
「まぁいいか。今日は学校帰りに来たのか? わざわざ着替えたんだな」
彼の言うとおり、すぐに向かいたがった鈴音を説得して1度家に帰っていた。だって、制服じゃどこの高校か丸分かりだし、万一にでも変な気を起こされてはたまったもんじゃない。
「意外と用心深いな」
そうだろうか? 本当に用心するならそもそもこんなところに女子高生2人で乗り込んだりはしない。
「どうしてここに来た?」
この質問にはまず鈴音が答えた。
「興味があったから。どうやって世界を救う気なのか気になったからです」
五十嵐は小さく頷き、次に私を見る。
「私は鈴の付き添いで来ただけです」
「あぁ。だから」
五十嵐は私の答えに妙に納得して頷いた。
「何かだからなんです?」
「いや、やけに突っかかってくると思ったんだよ」
……そんなつもりはないのだが。
「よし。君たちを会員にしてやる。ついてきな」
五十嵐は立ちあがり、右側の壁のドアを開けた。どうしてこの人はいちいち偉そうなんだろうか。
後ろ姿を見ながら一体いくつなんだろうと考えていた。20代と言われればそう思えるが、同時に40代位なんじゃないかとも思えてしまう不思議な人だ。
隣の部屋は、15、いや20畳はあるんじゃないかという広い部屋で、ところ狭しと何らかの機械が置かれていた。SFの世界にでも入り込んだようだ。壁一面に広がる巨大なモニターに、至るところで点滅するカラフルなライト。先ほどの部屋とは打って変わって随分と近未来な部屋だった。
「すご……」
私達は入り口で目を見張る。壁にも床にもケーブルが張り巡らされていて迂闊には入れない。
「早くしろ。踏まなきゃ大丈夫だ」
急かされつつ恐る恐る彼の元へ辿り着いた。目の前の巨大モニターを見上げる。表示されているのはここ周辺の地図らしい。
「とにかく時間がないからよく聞けよ。早速お前たちにやって欲しいことがあってな、もうすぐこの辺りを猫が通るから、こいつを捕まえて欲しい」
モニターに1匹の猫が映し出された。横の説明によると種類はマンチカン、毛は短めで全体的に薄茶色。お腹と尻尾が白色だ。
「猫ですか? なんで?」
鈴音がもっともな疑問を口にする。
「それは……」
五十嵐は意地の悪い笑みを浮かべた。
「捕まえられたら教えてやるよ」




