追跡
「SOの拠点なんてどうやって探せって言うんですか」
私達には何の手がかりもない。この状態で見つけ出すのは不可能だ。しかも私には、鈴音を守るという重大な任務がある。
五十嵐は軽く首を傾げ私を見下ろした。
「じゃあヒントをやるよ」
全く、どうしていちいち偉そうなんだろうか。ヒントくらいさっさとくれればいいのに。それに、手がかりがなきゃどうしようもない。
「あの猫の移動したルートだ。ここで機械が外された……後はどうにかしてくれ」
五十嵐は1枚の紙を差し出した。近辺の地図が印刷されており、赤い線が引かれている。
「これだけ、ですか? ヒントって?」
鈴音と顔を見合わせた。
「見つけられるかな……」
鈴音にしては珍しく弱気に呟く。
「あぁ、それと、向こうにも捜索してることは伝えたからな。何か手がかりをくれるかもしれない」
「え!? 向こうって、SOと繋がってるんですか?」
さらりとすごいことを言う五十嵐を追求する。
「詳しいことは言えない。お前たちが相応の働きをすれば、いずれ話してやるよ」
いつにもまして厳しい目で私たちを見据えた。聞き出すのは難しいだろう。
「……分かりましたよ。鈴音、行こ」
「え? う、うん。じゃあ、頑張りますね、五十嵐さん」
私はさっさと歩き出していた。後ろから五十嵐の声が響く。
「奴らは猫を使う。この前捕まえたあいつが、今のお気に入りだそうだ……」
「ねぇ楓、どうしたの?」
ボロアパートを後にした私たちは、とりあえず猫の移動経路を辿っていた。
「ん? なにが?」
猫の通り道なんて、塀の上とか細い路地裏とかろくな道じゃないだろうと思っていたが、今のところ舗装された道路しか通っていない。
「何考えてるの?」
鈴音はぴょこんと私の顔を覗きこむ。
「んー、いろいろ」
別に勿体ぶるつもりはないが、もう少し整理したかった。鈴音は不満げだが、じゃあ分かったら教えてね、とだけ言う。
「猫、いないよね」
ぽつりと呟く。ところが鈴音はあっけらかんと、
「え、さっきいたよ?」
などと抜かした。
「ほんとに!? ちょっと、教えてよ!」
「だってー、楓深刻な感じだったしー……」
鈴音の言い訳を聞きつつ、来た道を引き返す。
「どこにいたの?」
「こっちだよ」
少し戻ったところで彼女は左の道に進んだ。閑静な住宅地に足音だけが響く。
「あ、いた!」
車の下からおもむろに現れたのは、ただの偶然だろうか、SOのお気に入りだというあの猫だった。




