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番外編 ホワイトデーのお返し前編(匠の両親と朱音のお買い物)

ホワイトデーに間に合わなず( ;∀;)

料理対決にするか迷いましたが、

朱音と匠の両親で買い物シーンを書いたことがなかったなぁと思ってこの三人に。

後編は秋香(匠母)となっています。

 とある休日。

 私は鏡を見ながら身支度をしていた。

 鏡に映る私の格好は、襟元に細めのダークブラウンのリボンが結ばれている白のブラウスにタイトめな黒のスカート姿だ。

 三月とはいえ、まだちょっと肌寒い。そのため、ブラウスの上に羽織るちょっと厚手の大きめサイズのカーディガンを手にしている。


「そろそろ時間かな」

 私がベッドの上に置いていたスマホを手に取れば、匠君からメッセージが届いていた。

 スマホを操作して見てみると、どうやら彼はいま春ノ宮家にいるようだ。

 月に一度従兄妹達が顔を見せに春ノ宮に集まるらしく、今日はその日みたい。

 男子はお祖父さんと寺で座禅。女子はお祖母さんと一緒に茶会って前に聞いた。


 メッセージを読んでいけば、最後に『朱音、今日は外出予定だったよな。気をつけていってらっしゃい』と書かれていた。

 これから人と会う約束があるため、私は簡単ながらも匠君にメッセージを送信する。


 財布やハンカチが入った鞄の中にスマホを入れ、私は自室から出て下へと降りた。

 真っ直ぐ玄関から外へ出ず、奥のリビングへと向かう。

 扉を開ければ、両親と琴音の姿が。

 三人でソファに座りながらテレビを見てまったりお茶をしている。


「お父さん達、私そろそろ出かけてくるね。お待たせするの悪いので、外で待っていることにしたから」

 そうリビングにいる両親達へ声をかければ、彼らはこちらに視線を向けた。


「あれ? お姉ちゃん出かけるの? 匠先輩と?」

「ううん。匠君のお父さんとお母さんと」

 ホワイトデーのお返しにお洋服をプレゼントしたいので、一緒に買いに行きましょう! と、匠君のお母さんから電話でお誘いを受けたのだ。

 私はバレンタインには、日ごろの感謝を込めて匠君と美智さんに個別にチョコを送り、お世話になっている五王家の人達には纏めて一家族としてチョコを送っている。


 今年のホワイトデーは、匠君に五王家に招かれていた。バレンタインのお返しに匠君が手料理を振る舞ってくれるみたい。

 そのため、プレゼントを頂くことは出来ないと固辞したんだけど、匠君のお母さんから「手料理は匠からのお返しだから気にしないで。私が朱音ちゃんとお買い物に行きたいの。一緒にお洋服を選びに行きましょう?」とお返事が。


 ――そういえば、匠君のお母さんに匠君と美智さんには内緒って言われたけど、なんでだろう?


「えー、なんで両親? 嫌じゃないの?」

「嫌じゃないよ」

「私なら嫌だけどなぁ。匠先輩ならなんでも買ってくれそうだけど、両親となると強請りにくいし。お姉ちゃん、出かけるのいいなぁ。私も出かけたいーっ!」

 琴音が頬を膨らませれば、お母さんが「三人で出かけようか?」と提案した。


「本当? 私、欲しいものがあるの。もうすぐホワイトデーでしょう? お父さん、お返しに買って!」

 琴音が隣に座っているお父さんへと強請れば、お父さんは頬を緩めた。


「じゃあ、これから三人で一緒に買いに行くか」

「夕食も外で食べたいなぁ。私、行きたいお店があるの。友達から教えて貰ったんだー」

「六条院の生徒がオススメするお店なら美味しそうね」

 どうやら今日は三人で買い物することになったようだ。


 私は、はしゃぐ琴音と楽しそうな両親を見ないように背を向ければ、「待ちなさい」と止められてしまう。


「五王さんにご挨拶しないとならないので私達も行くわ。さぁ、琴音もいらっしゃい」

「え、ちょっと待って。いいから! 私はいいから! あの人いそうだし」

 拒絶する琴音だったが、両親に促されてそのまま玄関へ連れて行かれた。




 +

 +

 +



 家まで迎えに来てくれた匠君のご両親と両親が軽く挨拶し、私は匠君のお父さんが運転してくれる車で目的地である「ノワール」というセレクトショップへ到着。

 お店はメイン通りから外れた場所にあり、駐車場は地下にある。

 白を基調とした建物は三階建てになっていて、丸ごと一つがショップだ。

 地下からエレベーターで一階のお店に到着すれば、店員さん達が出迎えてくれた。


「ようこそ、おこし下さいました。五王様」

 オーナーさんと思われる二十代くらいの女性が匠君の両親へと声を掛ける。

 すると、匠君のお母さんが微笑んだ。


「久しぶりね、海野さん。美智がお世話になっています。この間もお気に入りのスカートが手に入ったと喜んでいたわ」

 どうやらここは美智さんのいきつけのお店らしい。


 店内は一階から三階が吹き抜けになっていて、天井から大きなシャンデリアが私達を照らしてくれている。

 床にはライトベージュのふかふかの絨毯が敷かれ、その上には落ち着いたダークブラウンの棚やソファなどが設置されていた。

 壁沿いに配置されているハンガーラックにはワンピースなどが掛けられ、棚にはベルトなどの小物が並べられている。

 店内を心地よいBGMが包み込んでくれていた。


「さぁ、朱音ちゃん。さっそくお洋服を選びましょう! 他にお客さんは居ないから、ゆっくり出来るから安心してね」

 にっこりと微笑んだ匠君のお母さんに言われて気づく。他のお客さんの姿がないことに。


「ま、まさか、貸し切りですか……?」

「えぇ、そうなの。ここは美智の最近いきつけのお店だから、ばったり会っちゃうかもしれないでしょう?」

 美智さんとばったり会うと何かまずいのかな? 美智さんと匠君にも内緒って言われたし。

ふと疑問に思った。


「朱音ちゃん、どういうお洋服が好き? ……あら?」

 匠君のお母さんは視界に何か捉えたようで、視線をそちらの方へと向ける。

 そして、そのまま「ちょっと待っていてね」と言って、さっき見ていた方へと歩いて行く。

 まるでスキップしそうなくらいの雰囲気。

 あまりそういう匠君のお母さんを見たことがなかったので、私はちょっとだけびっくりしている。


 匠君のお母さんが向かっているのは、ハンガーラックにワンピースが多く掛けられている場所だ。


「ごめんね、朱音ちゃん。秋香がはしゃいじゃって」

 匠君のお父さんに声を掛けられて、私は顔を傍にいる匠君のお父さんへと向ける。


「迷惑な時は遠慮なく言ってね。秋香、朱音ちゃんと一緒に洋服買いに行くのが楽しみで仕方がなかったんだ。美智や匠に内緒って言っていたのも、美智達が来ると秋香が朱音ちゃんの洋服選びが出来なくなっちゃうからなんだよ。ほら、あの二人が来ると我先に朱音ちゃんの洋服を選びそうじゃん」

「あの……私、いやじゃないです。両親と服を選びに行ったことがなくて……」

 今朝の琴音と両親の事が頭に浮かぶ。

 琴音は両親とよく買い物にいくけど、私は全く行かない。


「だから、今日は誘って頂いて嬉しかったんです。お父さんとお母さんと一緒に買い物に来ている気がして……」

「そう言ってくれてありがとう。ただ、秋香の暴走が気になるかも。今の完全に聞かれたから」

「え……?」

 匠君のお父さんが苦笑いを浮かべて私を通り越した先を見ていたので振り返ろうとすれば、がばっと後方から抱きしめられてしまう。


「朱音ちゃん、私も嬉しいわ。一緒にお買い物が出来て。今日はいっぱいお洋服を選びましょうねっ!」

「秋香―、朱音ちゃんを困らせないようにしてね」

「勿論、それは前提よ。ねぇ、朱音ちゃん。このワンピースどうかしら?」

 匠君のお母さんはにっこりと微笑むと、手にしていたワンピースを私に見せてくれた。

 黒のワンピースなんだけれども、デコルテ、袖、裾部分が繊細なレースになっている。

 落ち着いた大人な雰囲気だけれども、レース部分が可愛い。


「とても可愛いです。フォーマルな場所に着ていけそうですね。こういうお洋服持っていないです」

「良かった!」

「ねぇ、秋香。そのワンピースは白もあるよ。匠なら白の方が好みだと思うけれども」

「……そうね。あの子は白のワンピースとか清楚系が好みっぽいもの。だから、匠と美智が春ノ宮家に行っている隙に朱音ちゃんと一緒に来たのよ。清楚系も朱音ちゃんに似あうけれども、色々なお洋服が見たいから」

「確かに匠がこの場にいたら、黒のワンピースは選択肢に入らなかっただろうね。しかも、秋香と匠、どっちのワンピースが朱音ちゃんに似合うかで論争起こしそう。そして美智がその隙を狙って朱音ちゃんをさり気なく試着室に誘導して自分が選んだ服を朱音ちゃんの渡す絵が容易に想像出来るね」

 匠君のお父さんはそう言いながら、苦笑いを浮かべた。


「ねぇ、朱音ちゃん。このワンピース試着どうかしら? 見るのと着るのでは違うと思うの」

「はい!」

 私が頷けば、匠君のお母さんが近くにいたオーナーの海野さんに声をかける。


「海野さん、朱音ちゃんにワンピースの試着を」

「お任せ下さい」

 海野さんは匠君のお母さんからワンピースを受け取ると、「さぁ、どうぞ」と試着室まで促してくれた。





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