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哀刻 --Tradimento Tempo--  作者: Futabave.
一章 記憶を失いし少年
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第一話 『眠りの海辺』

挿絵(By みてみん)


-聖霊暦 8028年 科学都市テテス-


「……もう無理だ!もうすぐそこまで奴が来ている…。」

「だからあいつらなら足止めできると言っているだろ!」

銀髪の少年が自信あり気に言った。

「無理だ!今の奴はあの邪霊をも凌ぐ力を得ているんだぞ!」

都市全体に魔物の足音が響き渡る。足音はどしりどしりと少しずつこちらへと近づいてくる様子が伺える。



「こっちだって何回言えばいいんだよ…彼ら5人の力が集まれば魔神だって倒せる!」

「そうですか…それではテテスの科学技術をお披露目するとしますか。」

男はそう言うと、巨大な機械を制御する装置を動かし始めた。


「ああ。やってくれ。彼…彼は絶対将来この世界を救うことになる。」

銀髪の少年が指を指す先にいたのは小さな金髪の赤ん坊だった。

「クロノスの王子…!あなたは何を考えているんだ!」

男は驚いたように赤子を機械から離すように持ち上げた。

「もうこれしかないんだ!そうすれば魔神、邪霊の脅威から必ず彼はこの世界を救うことになる!」

「はは!はははは!あなたは気が狂っている!どうせ魔神になんて勝てないんだっ!この歴史もすべて無に還る!もう無理だ!」

男が笑いながら言っている頃にはもう銀髪の少年は機械のセットに完了していた。


「さあ、行くんだ。知識は機械の中にいる20年間で身につければいい…。」

銀髪の少年がスイッチを入れる。

「嘘だろ…何をやっているんだ…!!」


機械は見たこともないような速度で遥か彼方へ飛び立っていった。





-------------------------------------------------------------------------




………………………………………………。

ここは…何処だ…?

僕は一体…。


目が覚めた少年は自分の名前以外の記憶を失っていた。

ざざっと砂浜に波が打ち付ける音が響き渡る。

「僕はアリレス…僕は…一体?」


そこは何もない、静寂に包まれた海辺だった。

「人は…ここにはいないか。」

まず少年は今自らが置かれている状況について知ることが必要だった。

この眠ったように静かな海辺にいたところで得られるものは無いと悟った金髪の男、アリレスが辺りを見回すと、東の方角に村のような建物の影が見えた。

「そこに行き、情報を得よう。」

そう思って立ち上がり東に向かって進もうとしたとき、海の音とは違う汚い液体がべとべとと動くような不気味な音が向かう方向にある草原の中から聞こえた。

「何がいるっ!」


そう思って鞄の中に入っていた木の棒を構えると、青いジェル状の魔物が襲い掛かってきた。

「ス…スライム…?」

立ちはだかる魔物に立ち竦んでいると3体のスライムが同時に体にまとわりついてきた。

足を絡み取られ身動きが取れなくなる。

「くっそ…スライムのくせに…。」

アリレスは記憶を失っており、戦闘の経験が一切ないためスライム相手に苦戦していた。

彼はとっさに木の棒でスライムに斬りかかった。


ぐちゃっと潰れる音と共にスライムのうち1体を討伐することに成功した。

スライムが驚き逃げようとしアリレスの体から離れる。

「待て!」

アリレスが木の棒を斜めに構え斬りかかる。そのひと振りはスライム2体を切り裂いた。



「はぁ…はぁ…」

モンスターを撃破し落ち着いているアリレスが下を向いていると、地面に細い影が出来ていた。

「危ない!人間さん!」

誰かの声が聞こえると同時にアリレスの前から後ろへ、頭上を波のように三度、氷が走り抜けていった。

氷が何かに当たる音が聞こえる。アリレスが振り向くとそこには棍棒を振り上げた状態で氷漬けにされたゴブリンがいた。

「嘘だろ…後ろから狙われていたのか…。」

間一髪助かったアリレス。氷を放ったのは誰か確認すると人間のような影が見えた。

アリレスとは対照的に皮膚の色が少し黒めの人間だった。


「人間さん!大丈夫ですか?」

体が黒に近い人間はアリレスに話しかけた。

「ああ…大丈夫…。それにしても今のは…?」

「氷魔法アイスリヴァイヴです。それにしてもこんなところで人間さんに出会えるだなんて!是非私たちの村に来てください。」

「有り難うございます…それにしてもあなたも人間じゃないんですか?」

「いいえ。私は人間ではありません。私は"今"この世界で≪聖人≫と呼ばれています。今…この時代人間は全員滅びこの世界には私達聖人しかいないと思っていましたが人間さんと出会えるなんて…!」

「聖人…?」

アリレスはその言葉を知らなかった。

「とにかく傷もひどいですよ!アリレスさん、でしたっけ。来てください!そして歓迎会を開きましょう。私たちの村、セレイにて!」



----こうしてアリレスの長く、苦しく、明るい冒険が幕を開けた。

表紙画像提供...@shield_rin様

2020/9~11頃に無料ゲームの配信サイト「PLiCy」を用いてゲーム化をする予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] プロローグのスタイルがとても好みでした。
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