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2日目―治療

「くぅ・・ぅっ・・・」


「場合によっては肋骨が何本か折れているかもしれない。」


マナミの負傷は軽く無かった。

命があっただけよかったと言えるが、歩く事さえ困難な状況ではかなり厳しいと言える。


「こっちも・・・危ない・・・」


ケンジの方もかなり危ない。


「修二さん、これを打ちます。」


吉田が取り出したのは1本の注射器。


「これは?」


「ラベルに間違いなければ、増血剤です。」


「ケンジ!!素人だが注射を打つ!!いいな?」


ケンジは俺を見ると頷いた。


「貸して・・・やってみる。」


注射器をしおりに渡し、傷口に当てた布を取り替える。


「血が止まらないっ・・・このままじゃ・・・」


俺の呟きを聞いて吉田が深刻な顔でケンジへ尋ねる。


「ケンジさん、死ぬより酷い激痛かもしれませんが・・・生きますか?」


その問いにケンジは頷く。

吉田の手には、真っ赤に熱せられたフライパンが握られている。

血が止まらないなら・・・血を出させなければいい。


ジュゥゥゥゥッッッッッ


「ぐぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


声をすら出ないほど衰弱したケンジの身体が激痛に跳ねる。


「ケンジ!!絶えてくれっ!!」


そう、腕の断面を焼いて血を止める・・・それが結論だ。


ジュウゥゥゥゥゥゥゥ


「・・・・・はっ・・・・・ぐっ・・・・・がぁっ・・・・」


辺りに匂いがたちこめる。

肉の焼けた匂い・・・

意識すると胃の中の物が逆流して来そうになる。


「山田、GPSに反応は?」


「無い!!大丈夫、安心していいよ。」


山田は銃とリストバンドを持って敵の襲来に備えている。


ジュゥゥゥゥゥゥ・・・・・


「っはぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・これで・・・血は止まった。」


「吉田・・・ありがとう。」


「修二さん・・・誠で良いです。」


「判った。」


ケンジは白目をむいて気絶してしまった。

胸に耳を当てると、弱いが心臓は動いている。


「これで、良いはずです。

 あとは休む事さえできれば・・・」


「マナミの方はどうだ?」


「彼女も安静にしていないといけません。

 せめてコルセットがあれば良かったのですが・・・」


「そうか、ありがとう。

 誠に医学の知識があって助かったよ。」


「いえ、医者になるため勉強をしていただけで、たいした事が出来るわけではありません。」


「それでも助かった。

 ありがとう。」


敵となるかもしれない。

見殺しにすれば最終賞金が増えると言うのに、助けてくれた。

誠には感謝しても足りない程の恩が出来た。


「しおり、GPSの方は?」


「大丈夫、反応は無い。」


「そうか・・・明日香はあのまま去ってくれたか・・・良かった。」


正直、明日香をどうすればいいか結論は出ない・・・

だが、あの時銃を構えていれば・・・いや、銃を撃つ事が出来ていれば、違った結果になっただろう。

誰も傷つけずクリアしようと言うのは虫の良い考えでしかないのか・・・

傷つける事も身の回りの人を救う為に必要な事だろうか・・・

・・・だめだ、答えが出ない。


「修二さん・・・

 僕はもう人を傷つけずクリアしようなんて理想を振りかざすのは辞めにします。

 ・・・どうせもう1人殺してますしね・・・」


その言葉に山田の背がビクリと震える。


「誠っ、あれは誠が悪い訳じゃない!!

 逃げられなかった私の方が悪いんだよっ!!」


恐らくNo.1に襲われた際、誠が山田を連れて逃げたが、山田が運悪く殴られでもしたのだろうか・・・


「山田、それは2人が悪いんじゃない。

 このゲームの主催者、そしてそれに踊らされたNO.1の男が悪かったんだ。」


「佐藤さん・・・いや、修二さんと呼びますね、私の事も愛でいいです。

 それでも誠一人が責任を負う必要は無いと思う・・・」


2人の思いは判るが、それは俺にとっても同じだ・・・

現在の生存者 10人

死亡者 5人


そのうち4人の死に関わっている。

そんな俺が縮こまったままでいて良い訳が無い・・・


「そうだな・・・

 それにそんな事を言うなら、俺も同じだ。

 俺がもっと気をつけていけば・・・

 もっと深く考えておけば、死ななかった人達がいる。

 それにケンジもそうだ。

 俺が銃を持つ事に躊躇ったばかりに、こんな事になってしまった・・・

 村上の件でもう躊躇わないと誓ったばかりなのに・・・」


「私も・・・同じ・・・」


いつの間にか隣に来ていたしおりも同じ考えのようだ。


「俺は・・・次明日香が来た時・・・もう躊躇わない・・・」


「僕も、明日香と・・・あと志村さん。

 彼女は危険だ・・・あの2人だけは見つけ次第撃ちます。」


志村・・・最初に誠と共に食料をとらずに去っていったOL風の女性だったな。


「志村は何かあるのか?」


「理由は判りません。

 ですが、僕と愛は何度か志村に強襲されています。

 もう1人、誰か居たとは思うのですが・・・

 そのもう1人は判りません。」


「そうか・・・」


「そういえば、そっちも三田さんはどうしたの?」


最初のグループで一緒だったからな、今一緒に居ないのも気になるのだろう。


「う~ん、何と言えば良いのか・・・」


「三田は・・・武器を奪って・・・逃げた。」


「「えっ!?」」


ざっくばらんに答えたしおりの言葉に、誠と愛は絶句する。


「ええと、詳しく話すとだな・・・」


2人と別れてからハルカが逃走した所までをかいつまんで説明する。


「それは・・・何と言うか・・・」


「命が関わっていて、甘い考えはって・・・今なら判らなく無いわね。」


「あぁ、俺が甘すぎたから・・・ケンジもマナミも傷つけた今なら判る。」


「修二・・・それは私も同じだから・・・」


「ああ、ありがとうしおり。」


「ともかく、今までの情報を交換して良いかな?」


「ああ、頼む。」



そして集まった情報の中で、現在のNOと生存者は


 NO.2  リストバンド7個を集める。          三田 ハルカ

 NO.3  最終日に3人以上のプレイヤーの生存      鈴木 明日香

 NO.4  食料・装備ボックス15個を集める       しおり ― 解除済

 NO.7  最終日までの生存              真奈美         

 NO.10 食料・装備ボックス15個の破壊        ケンジ ― 爆破で吹き飛び外れている。

 NO.12 リストバンド7個の破壊            吉田 誠

 NO.13 NO.1プレイヤーの殺害            山田 愛 ― 解除済

ブランクプレーヤー                 俺


ナンバーのわからない生存者は

茶髪の男

志村の2人


残っているナンバーは

 NO.6  ブランクプレーヤーの殺害

 NO.8  ブランクプレーヤーの生存 

となる。


この2人のどちらかが俺を狙い、どちらかが俺に死なれちゃ困るはずだ・・・

だが、2人とも好戦的に動いていると言う言葉からどちらがNO.8か判断が付かない・・・


「とりあえず、敵に回りそうなのは三田のみ。

 完全に警戒しないといけないのは、明日香、茶髪の男、志村の3人か。」


「そうだね。

 志村さんが組んでいる相手、それが三田さんか茶髪の人か判断は付かないけど、少なくともNO.6とNO.8が組む事は考えられないよね?

 となると、志村さんが組んでいるのは三田さんの可能性が高いね。」


誠はそう判断するが、答えを出すのはまだ早い。


「そうとも言い切れないぞ?

 NO.6とNO.8も共存する事が出来る。」


その言葉に愛が難色を示す。


「それってどう言う事?

 矛盾するんじゃないかな?」


「愛の思うように矛盾するんだが、案外簡単かもしれない。

 ブランクプレーヤーの手足を奪っておき、時間ぎりぎりにNO.6を外させてから殺せばNO.8もクリアできる。」


「そう言う事か・・・

 主催者も性格が悪いね・・・」


誠は納得できたのだろう。


「あぁ、最悪だな・・・。」


「最悪・・・」


「そうね、最悪ね。」

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