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2日目―手遅れ

山小屋から出てすぐに銃声が鳴る。


「ぐぅ」


ケンジはうめくが、そのまま駆け出す。

ケンジの陰に隠れてしおり・俺が駆け出す。

しおりは右を、俺が左を見回しすと建物に隠れる形で明日香がいた。


「左っ、建物に隠れている!!」


パァンッ


明日香の銃声に比べ、軽い銃声が後ろから鳴る。

愛が建物の影から明日香を狙って銃を撃っている。

マナミが何か言いたそうにするが、キュっと口をつぐむ。


「右に走るっ。

 ケンジは後ろをっ!!」


今は逃げることだけを考える。


「邪魔しないでっ!!」


ガウンガウンガウンッ


銃声が連続で響く。

明日香の狂気は治まっていないようだ。


「僕達を狙わないなら邪魔はしない。

 だが、命を狙うなら容赦はしない!!」


吉田の声が聞こえる。

彼の事だ、計算の上で挑発しつつ自分達の安全を考えているのだろう。


「明日香っ、私が憎いなら私だけを狙えば良いっ。

 貴方が望むなら、誰かに身を任せたって構わないっ!!」


マナミがきびすを返し明日香のほうに向かって走る。


「マナミっ!?」


ガウンッ


マナミの足元に銃弾が打ち込まれ、バランスを崩し倒れる。


「マナミぃ、本当?」


明日香がねちっこい笑みを浮かべ、建物から身体を乗り出す。


「山田さん辞めてっ!!」


愛が建物の中から明日香を狙おうとするが、マナミが止める。


「ケンジ、止血だけでもするんだっ。

 もしかしたらその時間稼ぎかもしれない。」


マナミはケンジのために時間を稼ごうとしてるんじゃないか?

そんな考えが浮かぶ。

しおりは察したのか、ケンジの隣に座って傷口を包帯できつく縛っている。


「ねぇ、明日香ぁ、私、明日香の為だったら何でもするよ?

 だから元の明日香に戻って?」


明日香はマナミに幽鬼のようにふらふらと近づいていく。


「マナミぃ~、何であの時一緒に来てくれなかったのぉ?

 待ち合わせの場所でずぅっとまってたのにぃ、なんであの男がきたのぉ?」


「えっ、何!?」


「とぼけるんだぁ、ふぅん・・・

 やぁっぱりあの男の言った通りだったんだぁ。」


「どう言う事!?

 明日香、何を言っているの?」


明日香は何かを村上に吹き込まれていたのか?

マナミは何も判っていないようだ。


「私ぃ、ずぅっとマナミのことぉ、だぁいすきだったのにぃ。

 マナミはぁ、自分の為だったらぁ、私のなんてどうでも良かったんだぁ?」


「そんな事無いよ?

 私は明日香のお陰で頑張れるんだよ?

 明日香のこと、誰よりも好きだよ?」


「じゃぁ、何で私をあの男に売ったの?

 あの男はねぇ、泣いて嫌がる私を力ずくで抱きながらこう言ったんだよぉ。

『マナミちゃんが手伝ってくれるなら、明日香を好きにして良いって言われてきたんだ』って。」


「なっ・・・」


マナミが絶句している。

あの顔は図星を疲れた人間じゃない。

怒りに何もいえなくなった人間のそれだ・・・


「村上っ・・・なんて最低な男なのっ!!」


「マナミぃ、ねぇ、何で?

 何で私を売ったの?」


「明日香、私あなたの事売ってなんて無い。

 全部あの男の嘘なんだよっ!!」


「じゃぁ、何で待ち合わせ場所にあの男が来たのよっ!!」


「待ち合わせ場所って何!?

 山小屋から出て行った時のこと!?」


「何をとぼけてるのよっ!!

 マナミが渡してくれたメモの通り、ずっと待ってたんだからっ!!」


「メモって何!?

 私、いつそんなの渡したのっ!?」


「しらばっくれるの!?

 仲間が一杯だからって、私を悪者にするのっ!?」


「悪者になんかしないよ!!

 私、明日香と仲直りしたいんだもん。

 ねぇ、元の明日香に戻ってよっ!!」


「元のって何!?

 汚される前の私?

 汚したのはマナミじゃないっ!!

 汚れた私はもう私じゃないのっ!!

 私はもう私じゃないから私になんて戻れないんだからっ!!」


「明日香なら大丈夫だよ。

 私に光を与えてくれた子だもん。

 明日香ならきっと元に戻れるよ。」


「嘘つくんじゃないよっ!!!!」


明日香が幽鬼から鬼女の様に豹変する。


ガウンッ


銃撃がマナミの頬をかすめ、長い髪がばっさりと焼き切れる。

それでもマナミは明日香の前から動かない。


「明日香ッ!!

 信じて、私は明日香の事を誰よりも信じてるっ!!」


「私はもう騙されない。

 また騙そうとしたって、信じ無い!!

 ほらっ!!そこの男だってっ!!」


ガウンッ


「ぐっ」


建物の影へ移動し、明日香の後ろから銃を撃とうとしていた吉田が逆に撃たれる。


「誠ッ!?

 っこのっ!!」


パァンパァンッ


愛が建物の中から発砲し、誠の援護をする。


「このウソツキッ。

 また私を騙して殺そうとしたねっ!!

 後ろからコソコソと殺そうとするなんてっ!!

 あんたなんて、絶対に信じないっ!!」


明日香は手榴弾を引き抜くと、足元に投げる。

自爆かっ!!

俺は咄嗟に治療中だったしおりとケンジの手をとって地面に伏せようとする。


ピカッ

ドゴォォォンッ


明日香のいた場所から強い光があふれ出す。

こんな物もあったのかっ・・・

閃光手榴弾―光と音で目と耳を潰す兵器。

だが、明日香は何も対策はしていなかったはず・・・

まさかっ!?


マナミの居た場所へ手を伸ばそうときびすを返す。

先ほどマナミが居たはずの場所へ手を伸ばすと、その手は空を切った。


―――――――――――――――――――――


ガウンガウンガウンガウンッッ

カシャカシャッ


・・・ドシャ


「ふふふっ、やったっ・・・やったわっ・・・これでウソツキは消えたのよっ!!

 もうこんな所に用は無いわっ・・・」


明日香は閃光手榴弾を投げ放つ前に目を瞑っていた。

そのため、ぼんやりとではあるが人影を見ることはできた。

後は簡単だ。

目の前の人影に向かって銃を可能な限り打ち込めば良い。

目の前の人影が崩れ落ちた事を確認したら、ここに居る用は無い。

それどころか、敵が5人も残っているのだ。

5人の居た反対方向へ。

さっき来た道を戻って駆けて行った。


――――――――――――――――――――



目がぼんやりとだが見えてくる。

耳鳴りで聞こえなかった声が聞こえてくる。

月明かりの中、地面に誰かが横たわっている。


「ぐっ・・・あす・・・か!!まって・・・」


マナミなのか?

生きている・・・

だが、未だ明日香に言葉をかけている。


「マナミっ、無事だったかっ!!」


「しゅう・・じ・・・さん、あす・・・か・・・は?」


マナミは横たわったまま明日香の名を呼ぶ。



・・・しっかりと目が回復した。

閃光手榴弾に対し、後ろ向きだった分回復が早かったらしい。


地面に横たわってたマナミは体を押さえて苦しそうにしている。

もしかしたら・・・と1着だけあった防弾ベストをマナミに渡していたのが幸を成した。


明日香の銃弾は全て胴体を目掛けていたらしく、つらそうな顔をしているが血は出ていない。

最悪の手段だけは回避する事ができた。


ただ・・・もう明日香を助ける事は出来ないと、ここに居るすべての人間は悟ったはずだ。

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