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2日目―油断

「皆、今すぐ逃げるぞっ!!」


山田を押さえていた手を離し、後ろを振り返りながら指示する。


「山小屋に避難すればいいじゃないかっ。」


吉田が言ってくるが、


「山小屋はヤバイんだ、いいから一緒に逃げよう。」


「こっちに近づき始めたぞ!!」


GPSを見ていたケンジが叫ぶ。


「ケンジ、一人で走れるか?」


「やれるだけ走る。

 後は距離を稼いでから動けなくなるよっ。」


「判った。

 マナミ、しおり、走れるか?」


「うん、大丈夫!!」


「・・・大丈夫」


「マナミ、先導を頼む。GPSはしおりが見てくれ。」


指示を出してから吉田達を振り返る。


「2人は俺の言った事を無視して山小屋に避難しようとしている。」


「吉田、山田、山小屋は危ないんだ!!

 戻ってきてくれ。」


「修二さん、その点も織り込み済みで山小屋は安全なんですよ。

 とにかく今は僕を信じてください!!」


吉田の意志は固いようだ。

そして、危険と言う事も織り込み済みで判っているといった。

・・・今はどちらを信じる・・・

逃げる場合、最悪ケンジが途中で歩けなくなる危険性がある。

吉田の作戦・・・

時間がない!!今は吉田を信じよう!!


「判った!!

 ケンジ、しおり、マナミ、山小屋に避難するぞ!!

 吉田、それでいいんだな?」


「ええ、信じてくださってありがとうございます。」


ケンジ、しおり、明日香、山田、俺の順で山小屋に入っていくが、吉田は未だ玄関に居る。


「吉田、もう来るぞ!!

 早く中に入って来い。」


「ちょっと待ってくれ・・・・こうして・・・よし・・・待たせたっ」


バタンッ



ガウンッ


ガンッ


ガウンッ


ガンッ


吉田が扉を閉めると同時に射撃音が聞こえてくる。

扉にあたったようだが、扉の中には鉄板でも入っているのか貫通する気配はない。


「危なかった・・・」


吉田は中に入ると、今度は玄関に何か色々な物を置いていった。


「攻撃と判断される事をするのはペナルティになるだろうけど、グレーゾーンって大事だよね?」


嬉々として罠を仕掛けていく。


「つまりあの地雷も似たようなものだったと?」


「そうなんです。

 本当はあの地雷で目くらましをして優位に立ち、先に相手のNO.を聞いてから取引しようと思ってたんですよ。」


なるほど、吉田も人を殺す事が生き残った後にどう影響を与えるか判っているのか。

そして後ろから聞こえてきていた銃声も聞こえなくなった。


「次は窓を狙ってくる可能性が高いぞ?」


「判ってます。

 その辺は愛に伝えてあるので、あちらも手を打ってあるはずです。」


俺と吉田は奥の部屋へと移動する。

そこでは山田としおりが窓を割り、さらに何かを投げ捨てていた。


「何をしているんだ?」


「ええ、あれはマキビシを拾ったので、窓の外にまいているだけですよ。」


マキビシ、忍者モノでよく見られる歩けないようにする武器。

そんな物まで入っているのか・・・


「なるほど、それで外からの進入も塞いでいると言う事か。」


「ええ、後は窓からの射線に気をつければ大丈夫かと。」


確かにそうかもしれない。

だが、本当にそれだけで大丈夫なのか・・・

マキビシの存在を予想していなかったように、他にも予想外の武器があるかも知れない。

それを想定して吉田が山小屋を選択していたなら問題ない。

だが、もし吉田が想定していない事態が起こったら・・・


ガウンッ


ガウンッ


チュインッ


やはり、入り口が駄目だったので窓から仕掛けてきたようだ。

ガラスが割れて破片が内側へ入ってこないよう、先に外側へ割っていたのは良い判断だった。

だが、この後どうするんだろうか?


「吉田、この後はどうするんだ?」


「おそらく窓からの侵入も無理ならと、もう一度入り口を開けてくると思います。

 入り口が開かないよう、押さえないといけません。

 修二さん、愛達と一緒に入り口を押さえてくれないか?」


「判った。

 入ってこれないようにしつつ、持久戦に持ち込むのか?」


「ええ、幸いこっちは食料の備蓄がしっかりしてありますからね。

 試したんですが、この山小屋は外は木ですが、中に鉄板が仕込んであります。

 窓と入り口以外からの侵入は不可能です。」


「判った。

 しおり、着いてきてくれ。

 ケンジとマナミは吉田と一緒に警戒を頼む。」


2人に任せて入り口へ向かうが、嫌な予感が晴れない。

何かを見落としている気がする。

このままじゃマズイ・・・

何がマズイんだ?・・・考えろ・・・考えるんだ。


この山小屋の中で戦闘行為を行うとペナルティを食らう。

だが、リストバンドの無い人間ならどうだ?

結果は山小屋の中でも戦闘可能。

明日香が入ってきても、しおりと愛が居れば撃退は可能だ。

なら、今の状況である山小屋の中の方が有利で合っている筈だ・・・


いや、違う!!

山小屋の外から大火力の兵器で攻撃してきたらどうだ?

火をつけるという手もある・・・

俺だったらどうする?

後ろから吉田の叫び声がする。


「ヤバイ!!皆伏せるんだっ!!」


ドガァン


背中から衝撃が来る。


ぐぅっ・・・


振り向いたしおりに抱きつく形で床に倒れる。

どうやら、走っていたため衝撃を逃がすことが出来たようだ。


「大丈夫か!?」


後ろを振り向くと、扉が壊れ部屋の中が真っ赤に染まっていた。


「っ・・つぅ・・・うん、何とか大丈夫。」


マナミの声が、


「僕はなんとか・・・でもケンジ君が・・・・」


吉田の声が聞こえる。

だが、目に入ってきたのは右手を失ったケンジだ。


「わり・・・、やっぱテレビみたいにはいかねぇな。」


肩から先を失い、血を流しつつ笑いかけてくる。


「吉田!!止血を!!」


「判ってる。」


「無理だ!!必要ねぇ!!

 今から俺を先頭にして入り口から出る。

 皆は俺を盾にして明日香を・・・いや、逃げ出してくれ!!」


ケンジが言いたい事は判った。

だが、マナミの手前言う事が出来ないのだろう。

理由は判らなくても、狂気に堕ちた明日香へのマナミの態度から何かを感じたのだろう。


「・・・うん。」


マナミも痛いほど判っているのだろう。

それでも明日香が大事なのか、ケンジの言葉に素直に従おうとする。


「知り合いなのか?だが、ここは手や足を撃ってでも相手の戦力を削がなくては!!」


吉田の言う事も正論だ、だが時間も無い・・・


「言い合ってる暇は無い!!

 明日香がどれだけ武器を持っているか判らない以上、油断は出来ない。

 少しでも生存率を上げるため、俺達と吉田達、2手に分かれて逃げよう。

 ・・・明日香は間違いなく俺達を狙ってくる。

 吉田達は安全に逃げられる!!

 撃つかどうかは・・・任せる。」


「判った。

 君達は信用できると思っている。

 次に会えれば、情報の交換や共同戦線を提案したい。」


「もちろんだ!!

 こっちこそ頼む。」


吉田と軽くげん骨を合わせる。


「・・・っつぅ」


吉田の表情がゆがむが、すぐに笑顔に戻る。

軽くウィンクで『愛には内緒な。』と言って来る。


「絶対に死ぬなよ?」


「そっちも・・・ケンジ・・・さっきは助かった。

 君が居なければ3人とも死んでいた・・・」


「気にするな。」


ケンジは笑顔で吉田に向けて左手のげん骨を突き出す。


「必ず生き残る。

 君の分も・・・」


吉田はげん骨を合わせると、入り口へ走る。


「ケンジ、君が出るタイミングに合わせて扉を開ける。良いな?」


「あぁ、頼りにしてるぜ。」


俺達はケンジを先頭にして入り口に駆け出した。

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