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第1話︰給食

短編で間違って出してしまったので、改めて投稿します。

「なぞかけ勝負をしよう」


こころからそう提案された僕は参ってしまった。いくらなんでも突拍子なさすぎる。


「じゃあ、私から行くね。給食とかけまして――」


「待って待って、なんですんなり始めてんの。全然飲み込めてないんだけど」


「これくらい臨機応変に対応できないと、これからの時代の変化についていけないよ」


「そんなわけあるかい。就職の面接でも聞かれないよ」


やれやれ……。まさかこんなことになるなんて。


僕の名前は、整翔ととのい かける。どこにでもいる小学5年生だ。で、さっきから勝手に話を進めているのが、幼なじみの園田そのだこころ。家が近くて帰り道が一緒なので、こうしてふたりで帰ることが多い。


これだけ聞くと、仲が良くて羨ましがられるかもしれないが、決して甘甘な関係ではない。僕たちは帰り道で、いつも不毛な『戦い』を繰り広げているのだ。


この前は「石ころを蹴飛ばして家まで落ちずに運べるか勝負」。その前は「会話しながら先に笑った方が負け勝負」。これまでの戦績は、見事なまでに五分五分の引き分けだ。


そして今回の勝負で、いよいよ決着がつく。負けた方は「誰にも言っていない秘密」をバラさなければならないのだ。それだけは絶対に困る。あの秘密だけは、絶対に知られるわけにはいかないのだから。


「おーい、ぼーっとしてどうしたの? 降参でいい?」


「ああ、つい……ってダメだよ! そもそもなぞかけ勝負って何さ?」


「そんなの、上手いなぞかけを考えた方の勝ちに決まってるじゃん。常識だよ」


「知らない世界の常識を出されても困るなぁ。上手いなぞかけってなんなのさ」


「そりゃあ、整うスピードと言葉遊びの面白さよ。なぞかけ公式ルールブックにも書いてあるわ。起源はエジプトの壁画らしいわよ」


「妙に信憑性がありそうなウソつかないで」


「細かいことはいいの! とにかく今のブームはなぞかけなんだから。じゃあ行くよ。給食とかけまして、おやつと解く!」


「……」


「ほら」


「ほら?」


「もう、そこは『その心は?』でしょ!」


「ああ、はいはい。……その心は?」


「どちらも美味しいでしょう! ここっちです!」


「なにその『ここっち』って」


「決め台詞よ、様式美みたいなもの。……で、どう? 100点満点中、何点?」


「うーん……5点かな」


「ちょっと低すぎない!? あんまりだよ!」


「だって、思わせぶりにためた割には当たり前のことしか言ってないし、言葉もまったく掛かってないじゃん」


「ためたのは、あんたがすんなり受け入れてくれなかったからでしょ! はい、スピードは早かったから追加で50点ね」


「暴論すぎる!」


「じゃあ次はあなたの番ね。ほら、お題は同じ『給食』でかけなさい」


「お題固定なの!? ずるくない!?」


「細かいこと言わないの。そんなこと言ってる間に時間がどんどん減っていってるわよー」


「まじか……」


やるしかない。僕は必死に頭を回転させた。

給食。きゅうしょく。九色? いや、単語を深掘りしてもダメだ。給食から連想できるものを考えなきゃ。学校の昼飯。白衣。当番。カレー。温かい。うーん、まとまらない!


「うーん……」


「運!? 『運』とかけるのね! じゃあ、その心は!?」


「えっ!?」


なんてこった、勝手に決め打たれた! なんにも思いつかない! えーっと、えーっと……そうだ!


「ど、どちらも『ふく』が気になるでしょう!」


「……ふく?」


「そう! 給食でカレーが出ると、汚れないかなって『服』が気になるだろ? で、運が良い人は幸『福』が気になるってわけ!」


「……めっちゃ補足説明入れてくるじゃん。パッと伝わらないとダメだなー」


「(分かりやすすぎて何も捻ってない人に言われたくない……!)」


「ん? 何か言った?」


「いや、何も。それより得点は!?」


「そうね。まあ、服と言葉遊びの面白さってことで20点かしら。スピードも早かったから40点はあげてもいいかも」


「なんで上から目線なんだよ。……ってことは、ふふふ」


「なによ、気持ち悪い笑いかたして」


「ふふっ。こころはスピード50点+言葉遊び5点で【合計55点】。僕はスピード40点+言葉遊び20点で【合計60点】! ってことは僕の勝ちだ! さあ、秘密を喋ってもらうぞ!」


「いいえ、あなたの負けよ」


「ふふふ……えっ、なんで!?」


「だってあなた、重大なミスを犯したわ」


「なんだよ、苦し紛れの言い訳か? 僕がミスなんて……あ」


「気づいたようね。そう、あなたは最後に『かけっちです!』と言っていないの」


「そんな! それはただ忘れてただけで……大体、勝負の質には関係ないだろ!」


「最初に伝えたはずよ、様式美だって。最後に名乗らなければならないルールなの。それともあなたは、UNOをしていて最後の1枚になった時、宣言せずに上がっても許されると思っているのかしら?」


「う、うぐ……確かにそれはダメだけどさ。だからって失格は酷くない!?」


「まあ、今回は初回だから特別にマイナス5点で許してあげるわ。あら、私ったらなんてお優しいのかしら」


「自分で言うやつがあるか! ……ってなると、勝負は結局?」


「55点と55点で引き分けね。決着は持ち越しだわ」


「くそー! 勝ったと思ったのにー! よーし、明日は絶対に負けないぞー!」


「……明日も一緒に帰るつもりなの?」


「もちろん。なに、なんか予定でもあった?」


「ううん、別にないけど」


こころは少しだけ呆れたように、でも口元を緩めて小さく笑った。


「じゃあ明日ね、翔。もっとマシななぞかけ、考えておきなよ」


「ふん、見てろよ! 次こそお前の秘密、暴いてやるからな!」


夕日に照らされる影をふたつ並べて、僕たちはいつもの分かれ道に向かって歩き出した。



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