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異常存在記録《AER》~怪異の発見、調査、封鎖、そして失敗~  作者: SN


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02-4.【公平取引】── 価値を測る存在

《異常存在記録報告書:A-E/No.002-4》


識別仮称:《公平取引》

探索者通称:“公平ゴブリン”


分類:価値測定型異常存在

収容状況:接触管理指定

危険等級:第二種因果改変指定

管轄:国連総合ギルド 異常存在管理局(中央監査部)

閲覧制限:第一閲覧指定



■第四記録:価値を測る存在(結)



■価値判定基準


長期調査の結果、

中央監査部は《公平取引》における

価値判定基準について、

一定の結論へ到達した。


対象は、

市場価格を参照していない。


確認されたのは、

以下要素を含む、


“本人基準の価値”


を測定している可能性である。


* 執着

* 喪失感

* 欲望

* 覚悟

* 未練

* 恐怖

* 愛着


など。


つまり対象は、

物そのものではなく、


「それを失った時、

 当人がどれほど痛むか」


を価値として認識している。



■個人依存型価格変動


この性質により、

同一商品であっても、

適正価格は購入者ごとに変動する。


例えば、

同一治癒薬購入事例においても、


* 貧民探索者が支払った銀貨数枚

* 王族が支払った金貨二〇〇〇枚


では、

後者のほうが

“不足価値判定”

となる事例が確認されている。


また、

“失っても惜しくない物”は、

高額であっても

低価値判定される傾向が存在。


逆に、


* 唯一の形見

* 命に等しい時間

* 強い執着対象


などは、

極めて高価値として扱われる。



■余剰価値還元の本質


一方、

本当に大切な物を手放した場合、

対象は高確率で

“幸運”

を返還する。


しかし、

中央監査部は現在、

この現象を恩恵とは見なしていない。


理由は明確である。


対象が返しているのは、


“不足利益の補填”


であり、


“幸福”


ではないためである。


実際、

過剰価値支払い事例では、


* 富

* 名声

* 成功

* 権力

* 生存


などが返還される一方、


* 孤独

* 執着

* 人間関係崩壊

* 精神摩耗

* 社会的破滅


を伴う事例が高頻度で確認されている。


監査局内部報告では、

以下表現が用いられている。



「あれは願望を叶える」


「だが、

 願った後の人生までは保証しない」



■現在の推奨対応指針


国連総合ギルドは現在、

《公平取引》遭遇時において、

以下行動指針を正式推奨している。



■推奨事項


* 欲を出さない

* 値切りを繰り返さない

* 過剰な支払いを行わない

* 「本当に失いたくない物」を安易に差し出さない

* 自身が納得できる対価のみを支払う



■禁止推奨事項


* 騙して利益を得ようとする

* 無価値物による誤魔化し

* 無断持ち出し

* 支払い意思を持たない取引



■存在再定義


中央監査部は、

当初《公平取引》を

“特殊契約型異常存在”

として分類していた。


しかし現在、

その認識は修正されている。


当該存在は、

単なる商人ではない。


対象は、


“価値の均衡”を

強制成立させる因果存在


である可能性が高い。


対象にとって重要なのは、

“公平であるか”

のみである可能性が高い。


少なくとも、


* 幸福

* 善悪

* 救済

* 人命


を優先している痕跡は確認されていない。



■最終接触記録


記録番号Z-1。


中央監査部特別調査官による、

直接質問記録。


調査官は対象へ対し、

以下質問を実施。



「なぜ、

 こんな取引を続ける?」



対象は質問中も、

帳簿記載を継続。


数秒後、

一度だけ顔を上げ、

以下返答を行った。



「取引は、公平に」



その後、

対象は再び帳簿記載へ戻った。


以降、

追加発言は確認されていない。



■最終結論(結)


《公平取引》は、

人類へ敵対しているわけではない。


同時に、

味方でもない。


あれはただ、

世界に存在する

“価値の偏り”

を均衡化している。


奪い過ぎれば徴収される。


差し出し過ぎれば返還される。


そこに感情はない。


慈悲も悪意も存在しない。


ただ、

絶対的な公平だけが存在する。



■監査官付記


現在も地下迷宮群では、

低確率で

“商店部屋”

への転移事例が継続発生している。


帰還者の多くは、

共通して以下証言を残している。



「何を払うかは、

 自分で決められる」


「だからこそ、

 一番怖い」



我々は通常、

価値を自分で決めているつもりでいる。


だが、

《公平取引》の前では、

その価値観そのものが問われる。


何を欲し、

何を失い、

何を差し出せるのか。


そして案外、

最後まで答えられないのは、

《公平取引》ではなく、

我々の方なのかもしれない。


――中央監査部

第五監査官《エドラム》



※本報告書は、

識別仮称:《公平取引》

に関する現時点での統合記録である。


なお、

対象本体の出現原理、

転移機構、

および帳簿記録内容については、

現在も解明に至っていない。

次回投稿 本日21:00

03-1.【還郷村】── 疲れた者の辿り着く村

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