最終話―03
「……ってかさ。なんで俺の居場所が分かったんだ?」
酔っ払いのニヤニヤ顔はほっておこう。うん、そうしよう。
相手にするだけ時間の無駄だと俺は瞬時に判断した。
「ふふふ。それは伊藤さんさん発見用レーダーが付いてるからです」
……え? 何それ。ちょっと、めちゃくちゃ可愛いな。
いかん、いかん。平常心だ。坂本がニヤニヤしながらこっちを見ている。平〜常〜心!!
「……俺、トイレ行ってくるけど、二人共置いて帰らないでよ?」
空気を読んだ坂本が、わざとらしく立ち上がった。
「当たり前だろ。早く行ってこい」
「いってらっしゃいです」
「じゃ、お邪魔虫は失礼~」
二人きりになった途端、急に居酒屋の狭いボックス席が恥ずかしい空間に思えてくる。
「伊藤さん。私、ちゃんと約束通り戻ってきたんですから、何か言ってください」
山田は机に身を乗り出し、何かを期待するような潤んだ瞳で俺を見つめてくる。
そんな目で見られても、何をどう言っていいのやら……。
でも、こうやって彼女にまた会えたことが嬉しくて、たまらない。
俺たちの時間は、ここからまた始まるんだ。
「……山田」
「はい!」
相変わらず、気持ちのいいくらい真っ直ぐな良い返事だな。
満面の笑顔を浮かべた彼女は、ぴしっと綺麗な敬礼をして見せた。
「お帰り。今度の滞在期間は何十年?」
「うふふ。そうですねぇ――七十年くらい、ですかね?」
「おっ、そいつは結構な話しだな」
公共の場だとか、周りの目だとか、そんなのは全部どうでもよくなった。
俺と山田は、お互いの手のひらを力強く合わせ――パチン、と心地いい音を響かせてハイタッチを交わした。
奇跡のような再会と、これからはじまる未来の印に。
――愛に国境は関係ない、なんてよく言うけれど。
きっとそれは、惑星にだって関係ないんだと思う。
心さえ、通じ合えるのなら。
(END)
これにて山田と伊藤さんのお話は終わりです。
ここまで読んでくださった方がいましたら、有り難うございました^^




