1話 ー08
田沼意次の事はやたら詳しいのに、Suicaは知らない。
山田の知識には物凄い偏りがある。
ってか、本当にこいつは何なんだろう……。
バスが停留所に止まり、俺はIcaをあてて、バスを降りた。山田は不思議そうに俺に続いてバスから降りる。
「今、ピッってなりましたけど、あれで良いんですか?」
バスを振り返りながら彼女は俺に付いてくる。
「うん」
「どう言う仕組みなんですか?」
「え?それは俺に聞かれても……」
仕組みなんて分かるはずないだろ。俺は技術者じゃない。ただのしがない大学生だ。
「ふ~ん」
またメモとってるし。
歩きながら書くとか器用だねぇ。
「伊藤さんはこの辺で育ったんですね」
山田はそう言って辺りを見渡す。
バス停の近くに信用金庫があって、その他の高い建物はマンションくらいだ。
少し離れた所には図書館とテレビ局があるけど、ここからじゃ見えない。どうって事のない俺が育った町。
「うん。生まれも育ちもここだよ」
引っ越しした事もない。
ガチャッ
信用金庫の側に止めてあった自転車の鍵を解除する。
「むむ。伊藤さん、それは違法駐車じゃないんですか??」
本当に何なんだよ。
「昔から皆止めてるし、止めないで下さいって張り紙を見た事ないから、良いんじゃない?」
「へ~寛大ですねぇ」
確かに。
「ところで伊藤さん」




