1話 ー出会いは突然に
「あ、あの話だけでも…」
背後から弱々しい女の子の声がした。
ふと振り向くと、男の人に声を掛けている女の子が目に入った。
女の子は少し茶色い前髪を真っ直ぐに切り揃えた、謂わばパッツンである。
話しかけられた男性は煙たそうに手を振り、彼女から離れた。
「はぁ…」
彼女はガックリと肩を項垂れる。
可哀想に…あの男の人、話くらい聞いてやれば良いのに。
「あの、すみません」
あれ?今度は女の人に声を掛け始めたぞ。何かの勧誘かな?まぁ関係ないや。
えっと…あと何分でバス来るかな?
「あの」
ん?げっ。
さっきの女の子に声を掛けられてしまった……。
「いや、あの……」
何て言って断れば良いんだ?忙しいとか?いや、でもさ、これからあと十分も俺はこのバス停にいるんだけど……。
「あの、ほんの少ししか迷惑はおかけしませんから!」
俺に迷惑かかるんだ?!
「話だけでも……」
彼女は綺麗な半円をしている眼でじっと俺を見つめてくる。
そんな潤んだ瞳で見ないでくれ。何か俺が悪いみたいじゃないか。うう……。
「いや、俺、バス待ってるんで」
「じゃあ、バスが来るまでの間はお時間あるんですよね!」
やんわり断ったつもりなのに彼女には通じなかったのか、無邪気な笑みを彼女は浮かべた。
あ〜もぅ、俺の馬鹿!この正直者!!
この状況で引き返せる勇気なんて持ち合わせてないんだけど……はぁ。
俺は仕方なく一度だけ頷いた。
「わぁ~嬉しいです!ありがとうございます」
うっわ。超良い笑顔された。これはもう本当に後には引けない感じだな……。
俺はとうとうバスが来るまでと念を押し、彼女の話しを聞く事にした。




