87、クリスタルショップ
全面ガラス張りのクリスタルショップには、たくさんの人が居た。1階は土産物屋で、2階がレストランになっているみたい。
護衛をしてくれていたロッコ族の子供達は、シャルルさんに何か言うと、2階へ上がって行った。何人いるのかな。背丈は、ばらつきがあるけど、みんな子供なのが不思議。もしかして子供に見える種族なのかも。
「オモチさん、あの子たちは、上で食事をするわ。私達も買い物が終わったら、行きましょう」
「はい。みんな、子供なんですか? それとも大人?」
「子供よ。未来から来るときに最終転生をしたみたいね。中身は大人だけど、身体はこれからまだ成長するわね」
「最終転生?」
「ええ、私達は、6つの命を持って生まれるの。だからロッコ族って呼ばれるわ。命の予備が残り一つになると、最後の転生をするんだけどね。最終転生が終わった状態が、本当の意味で大人かな」
「へぇ、6個の命だから、ロッコ族……」
「ふふっ、そういうことよ。6人分の人生が続くと考える方がわかりやすいかしら。私達は、生まれたときは、アース星の人と同じくらいの能力しかないのよ。厳しい環境には適応できず、すぐに死ぬわ。それで、あらかじめ6つの命を持って生まれるの。死の記憶以外は引き継がれるから、知識や技術は、転生するたびに増えていくわね」
「なるほど、子供の時期が長いということでしょうか」
「そうね、不完全な状態を子供と呼ぶなら、最終転生をするまでは、ずっと子供ね。最終転生をすると、個人差はあるけど、再成長する人は、だいたい10歳くらいの身体になるわ。あの子たちは、その状態よ」
そっか。だから、あんなに強いのね。知識と技術を引き継ぎながら転生を繰り返す種族なんて、初めて聞いた。ロッコロッコ星の人達が強いのは、努力の結果なのね。
私は、店内を眺めながら、シャルルさんの後ろをついて回った。お客さんが多いから、離れるのは不安なのよね。
シャルルさんは、次々と品物を取っている。持ち切れなくなって、店員さんから、かわいい木製のカゴを渡されてるよ。
「オモチさんも、何か買わなきゃ。ここでしか買えない物は、喜ばれるわよ」
「ここでしか買えない物って……あー、書いてますね。クリスタルショップ限定商品かな?」
だけど、シャルルさんがカゴに入れている物には、限定商品ではなさそう。
「シャルルさんは、限定商品じゃなくて、アクセサリーを買うのですか?」
「ええ、ファン会館で買うと、ここの10倍以上なのよ。これは、私の錬金術かしら? ここで買って、ファン会館に売るのよ」
仕入れをしているということかな? シャルルさんは、ずっと街にいるから、お金には余裕がなさそうだもんね。
私は、限定商品を見てみた。どれも、色とりどりのクリスタルが使われていて、すっごく綺麗。アクセサリーが多いけど、長い紐がついたキーホルダーのような物もある。
セルさんは、亡くなった恋人と、ここで買い物をしたのかな。綺麗なアクセサリーがたくさんあるから、きっと夢中になるよね。
「オモチさん、迷ってるみたいね」
買い物を終えたシャルルさんが、私の元に戻ってきた。
「はい、お土産ってことは、誰かに贈るのかなと考えると、選ぶのが難しいです」
「お土産というより、オモチさんが星に帰るときに、お世話になった人に差し上げる物にすればどうかしら。もらった人は、オモチさんの思い出の品だから、何でも嬉しいはずよ。貴女が気に入ったものを渡せばいいのよ。それに、申請すれば、オモチさんが持ち帰ることもできるわ」
「あっ、そっか。帰るときに渡す物……」
地球に帰るときに何かを贈るなんて、考えたこともなかった。でも確かに、お礼の品がある方がいいかな。
そう考えると、自然と選ぶべき物が決まってくる。これから、まだ出会う人もいるかもしれないから、少し多めに買っておこう。
あっ、お守りがいいかも。棒状のクリスタルに紐が付いてる。これなら男女問わず、もらって嬉しいよね。魔力守り、防御守りのような異世界っぽい物や、健康守り、恋愛守りなどの見たことのあるような物まである。余った物は、地球に持って帰ろう。
買い物を済ませ、一応、携帯機の履歴確認もした。ちょっと欲張りすぎたかな? 限定商品も含めて、お守りばかり、たくさん買っちゃった。宿屋ノームの人に配ってもいいよね。
「オモチさん、お守り屋さんをするの?」
「あはは、いえ。選べなくて、全部買ってしまいました」
「まぁ、可愛くはないけど役に立つ物だから、喜ばれると思うよ。すぐに、携帯機の倉庫に入れておく方がいいわ。クリスタルは魔力を放つから、倉庫の容量が増えるわよ」
「へぇ、はい、勉強になります」
私は携帯機の倉庫に、お土産を収納した。
「お土産が入ったら、ミッションクリアになったはずよ。2階のレストランで、確認しましょう」
シャルルさんは、私を先導するように、階段を上がって行った。
◇◇◇
2階のレストランは、穏やかな音楽が流れていた。全面ガラス張りの窓際の席は、ほとんど空きがない。みんな、外を見たいよね。恋人同士っぽい人達が多い。
「シャルルさま〜っ! こっちこっち〜」
真ん中の席二つを、ロッコ族の子供たちが占領しているみたい。スプーンを振っている子もいる。
「騒がしい席は嫌なんだけど、仕方ないわね」
シャルルさんは、ため息をつくと、ロッコ族の子供達がいる席に近寄って行った。
「お友達は、ここに座って〜。アース星の人でしょ?」
「オモチさん、座ってやって。たぶん、その子の前世は、アース星だったんだと思うわ」
「ええっ!? あ、はい」
その席には、まさかのお寿司が並んでいた。




