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32、夜更かしを誘導するミッション

「初めて食べる物ばかりだよ。知らない星の料理って、なかなか頼まないからな」


 シエルさんがお酒を飲むみたいだから、居酒屋メニューをいくつか注文した。枝豆、焼き鳥の盛り合わせ、だし巻き、ポテトサラダ。私の飲み物は、コーラにしてみた。


「どれも普通に美味しいから、驚きました」


「面白いな。もっと頼もうよ。オモチが飲んでいるのは何? そんな色の飲み物は、毒にしか見えない」


 黒っぽい飲み物はないのかな? 紅茶は……赤いか。そういえばコーヒーは見てないな。


「これは、炭酸を含んだ甘い飲み物ですよ。頭痛が治るという都市伝説もあるのに」


「薬なのか?」


「いえ、そういうわけじゃないですけど。飲み過ぎると身体には悪いかも」


 私の矛盾する返答に興味を持ったのか、シエルさんは、ジッとコーラを見ている。


「ちょっと飲んでみてもいいか?」


「あ、はい、どうぞ」


 グラスをシエルさんの方に置くと、彼は、恐る恐る口をつけた。そんなに不気味に見えるのかな。ゴクリと飲むと、何とも言えないような複雑な顔をしてる。炭酸を初めて飲んだのかも。



「何だか薬のような匂いもするけど、口の中がピリピリするね。こんなのを飲んで大丈夫なの?」


「居酒屋に行くと、飲みたくなるんですよ。ウィスキーをこれで割ったコークハイとか」


「ウィスキーという酒は飲んだことあるよ。少し強い酒だよな? あっ、だから、これで薄めるのか」


 シエルさんは喋りながら、タブレットを操作し始めた。ウィスキーを探しているのかな。ふわぁっと、あくびをしてる。今、何時だろう? 店内には時計がない。料理が出てくるのが遅いから、結構、時間が経った気がする。



「シエルさん、そろそろ帰る方が良くないですか? 夜0時を過ぎると、物騒になるみたいだし」


「ん? もう夜0時は過ぎてるよ。ショーの準備が始まってるでしょ」


「ええっ? まずくないですか」


 彼が指差したのは、広い店の中央部分。置いてあった装飾品がなくなって、小さなステージに変わっていた。


「ミッションを見てみなよ。夜更かしを誘導するミッションが出てるんじゃない? 僕の方は、ショー劇場に行こう、って出てたよ。夜0時を過ぎてから営業する店だ」


 シエルさんが注文した料理が届いた。この蛍光色は、ロッコロッコ星の聖都の料理? 派手な紫色だ。前にシャルルさんがパンに付けて食べていた物よりも、青っぽく派手に見える。添えられているのは、やはり細長いパン。



 彼がそれを食べ始めたのを横目で見ながら、私は携帯機を見てみた。あっ、看板通りへ行こうが消えてる。日付けが変わったのね。



【ミッション13】未達成

 ショー劇場に行こう!

(残り9日23時間47分)


【ミッション4】宿屋にチェックインしよう!

【ミッション5】酒場に行こう!

【ミッション6】宿屋で宿泊予約をしよう! 

【ミッション7】友達と話そう!

【ミッション8】ファン会館に行こう!

【ミッション9】ゲームキャラの舞台を見よう!

【ミッション10】恋人を作ろう!

【ミッション11】夕焼けに染まる湖を見に行こう!

【ミッション12】酒場に行こう!



 彼のミッションと同じだ。たぶん、私のミッションに彼が影響を受けてる? 



「同じミッションです。未達成だけど」


「やっぱりね。この店のショーは、夜0時半からだよ。きっと、始まれば達成になる。急に人が増えてきただろう?」


 店内を見回すと、確かにお客さんが増えている。広い店だけど、もう席を選ぶ余裕はなさそう。


「そうですね。増えて……あれ?」


 キョロキョロしていると、こちらを指差す人が見えた。服装が全く違うけど、オルフルさんと……サリィさん?




「やっほ〜、お邪魔するねー。見やすい席が空いてないんだよー」


「サリィさん? すっごく神々しいですね。昼は私と同じくらいの年齢に見えたけど、今は年上に見えます」


「ふふっ、そう? む? オモチさんは毒々しい物を飲んでるのね。大丈夫なの? あっ、この黄色い料理、私、知ってるー。中からジュワッと美味しい汁が出てくるよねー」


 サリィさんは、夜もハイテンションだ。


「甘い炭酸の飲み物ですよ。こっちは、だし巻きです」


「食べていい? いいよね?」


 サリィさんは、手づかみだ。神々しいドレスを着ているから、そのギャップが激しい。


 そんな彼女の行動に深いため息を吐くオルフルさん。二人で、ショーを見に来たのかな。



「シエルさんは眠そうだねー。寝てていいよ。ショーが終わったら、ちゃんと連れ帰ってあげるから。二人でここに来てるってことは、酒場ミッション? 見せて」


「じゃあ、僕は少し仮眠しま……しゅ」


 何? 語尾かわいい! 寝落ちしちゃったみたい。携帯機をサリィさんに見せようとした姿勢のまま、テーブルに突っ伏してる。


 彼の携帯機を覗き込んだサリィさんの表情が変わった。やはり彼のミッションは、私の影響を受けてるのかな。



「オモチさんも、見せて」


「はい、どうぞ。私のミッション11から、シエルさんと同じになってます」


「わかりやすいわねー。オトメン専用のミッションがオモチさんに出てるってことは、私への宣戦布告かしら」


 オルフルさんは、シエルさんの携帯機を覗いたが、あまりわかってないみたい。興味は無さそう。彼は携帯機を持ってないのね。


 あれ? 彼は攻略対象をしていたのに、知らないの? サリィさんの前だから、知らないフリをしているのかも。


 ん? サリィさんは携帯機を持ってるよね?



「サリィさんは、なぜ私達に近寄れるのですか? 携帯機を持つ人は乙女ゲームに縛られるんですよね? 恋人のいる人と同席できないって聞きましたけど」


「私はフリーミッションを体験する観光客、気ままな旅行者だから、その制約はないんだよー。あっ、ショーが始まるよー」


皆様、いつも読んでいただき、ありがとうございます。

ブクマや星応援やいいねも、ありがとうございます。作者はブックマークが増えると、これからも読むよという読者さんの優しさだと感じ、ホッと安心します。ありがとうございます!


これまで毎日2話更新していましたが、明日からは、毎日1話更新に変更させていただきます。書き溜めに余裕があるうちは、土日などの休日は2話更新できればと思っています。

今後ともよろしくお願いします。

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