26、オモチ達が狙われる理由
「あの、ちょっと質問してもいいですか?」
私は、イービー星セルフィア王国の魔導大使だというオルフルさんの方を向いた。この人工星で、難民の受け入れ担当をしてる監視者だとも言っていた。王女サリィさんとは、とても気安い関係みたい。
「俺に答えられることなら、何でもどうぞ」
秘密の情報は話せないってことね。
「さっきの話で、主人公が妊娠すると永住が決定すると言われてましたけど、主人公でいられる時間は30日以内ですよね? そんな短い時間で、妊娠はわからないと思うんですけど」
あれ? オルフルさんはサリィさんの方を見てる。私が変な質問をしたのかな。
「アース星では、妊娠期間が長いのね。この人工星に来ている人は、イービー星の人以外は、みんなアバターを身につけてるの。だから言語も共通だし、多民族が集まっても違和感がないでしょ」
イービー星の人は、アバターじゃないってこと?
「そういえば、使っている言葉や文字は、私の国のものじゃないですね。アース星の人間は、妊娠がわかるまでに1ヶ月以上はかかるし、出産までは10ヶ月弱だと思います。経験がないからわからないけど」
「ん? 1ヶ月って何日?」
「えーっと、だいたい30日です」
「あー、そういう認識かぁ。だから、アース星の人達には危機感がないのねー。主人公を狙う人達が使う誘い文句って、何だっけ?」
サリィさんに話を振られて、オルフルさんは、嫌そうな顔をしている。
「よく聞く証言では、『30日以内に帰るんだろう?』や『アバターだから妊娠はしない』とか『自分の身体じゃないんだから遊ばないと損だ』などでしょうか。あとは、俺の口から言えないような卑猥な言葉ですね」
「でも、そういうことをすると、アバターでも妊娠する可能性があるんですよね?」
「可能性ではありません。男性側が子を作ろうとすると、確実に妊娠します。アース星以外の人は、妊娠しても育たないため翌日には流れますが、アース星の人の場合は、アバターに従順ですので、数日で出産することになります」
ええっ? 少子化対策もびっくりな仕様ね。
「アバターって、人工的な身体ですよね? それなのに、そんなスピードで生まれた赤ちゃんって、無事に育つんですか? 街の中では、小さな子供は見たことがないですけど」
「ゲーム舞台には子供はいません。生まれた子は、育児部門の研究室のある街に送られます。子供と離れたくない場合は、母子で移住してもらう形になります」
オルフルさんの話に、私は返す言葉が浮かばない。アバターは、確かに元の身体ではないけど、命を生み出す能力があるなら……あっ、そうか、転生だっけ。
「アバターという言葉を使いたがるのは、アース星の人達を油断させるためかもねー。この世界を気に入って帰りたくないという人達に移住してほしいのに、おかしなことになってるのよー」
「ミッションが、そうさせるんですね」
私がそう返すと、サリィさんは首を傾げたが、オルフルさん達が、ハッとしたのが伝わってきた。私が批判したと思ったのかな。
「ん〜、主人公のデイリーミッションが操作されていることが、問題だと思うよー。オモチさんの次のミッションなんて、最後の30番目に出るか出ないかというレベルでしょ」
「一番最後が、難しいミッションなのですか?」
「難しいというか、この星を気に入ってもらえたかを試すミッションになってるよー。詳細は言えないけど、どれもクリアできないミッションじゃないから、安心してね。あ、でも今は、おかしいよね。普通のデイリーミッションはねー、えっと、だれか主人公をやってたっけ?」
サリィさんが、大きな声で叫ぶと、レストランの厨房から、二人の男性が出てきた。男性の主人公もいるみたい。
「俺達は、サクラでやってますよ。男女逆転パターンのオトメンゲームを作るテスト要員ですね」
乙女ゲームじゃなくて、乙男ゲーム?
「二人は、アバターも身につけてるんだねー。デイリーミッションを見せてー。私はフリーミッションしかないのよー」
サリィさんは、フリーミッションだけなんだ。彼女は、二人の携帯機を覗き込んでいる。
「オモチさんも見てみる? 彼らのデイリーミッションは、普通だよ」
私も彼らの携帯機を覗いてみた。一人は、いくつもの達成済みミッションが並んでいる。ミッションの前後には、何の繋がりも無さそうだ。二日連続で看板通りに行こうが出ていたり、簡単なミッションが繰り返されている。
達成済みが並んでる人は、一番最後のミッションにたどり着いている。30番目のミッションはまだクリアされてないけど、親しい人に今の気持ちを伝えよう、か。なるほど。30日間でお世話になった人に、感謝の気持ちを伝えるミッションって素敵ね。
「アース星の人のデイリーミッションを見せてもらってもいいですか?」
30番目にたどり着いている男性にそう言われて、私は、デイリーミッションを見せた。すると、彼の表情が歪む。
「よくこれで、今まで無事でしたね。酷いな。俺は主人公に会ったら、デイリーミッションを見せてもらってるけど、こんな並びは初めて見ました」
「アース星から来た主人公は、すぐに闇堕ちしちゃうから、なかなか会えないよねー。私は、すべての主人公とフレンド登録をしてるけど、すぐに消えていくもん」
すべての主人公とフレンド?
「サリィさん、すべての主人公って……同時に、様々な街に到着するのにフレンドになれるんですか?」
「あっ、内緒だよー。私は遠隔操作してるの。すべての始まりのカフェには、中継機があるからねー」
「そんな裏技が……」
「うん、でも、あっ、そっか。オモチさんの謎のフレンドさんがわかったかも!」




