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1-1デルフトの来訪者

エルフ美術史シリーズ、今作は今から500年前、16世紀のラデリアの過去の話です。

舞台はネーデルラント(オランダ)のデルフト、あの有名な画家の若いころも。


どんなお話になるか楽しみにして下さい。


1654年10月

放浪の旅を続けているラデリアは、ネーデルランドのデルフトへと到着した。

白いフードを深くかぶり、背中に細い革の鞄を背負い、夕方の賑わいのある市場の中を歩いていく。

焼きたてのパンの香りが漂い、白地に鮮やか藍色の美しい染め付けが描かれた陶器が並んでいる。


背が小さく、フードの隙間からは、この国は珍しい黒髪が揺れる。

瞳は黒色の中に、よく見ると虹色の輝きを持っていた。

そして人形の様な整った顔立ちをしていた。


目を引くような姿をしているのに、街に溶け込んでいた。今は、ただの旅人であり、誰も気づかない。

希薄化~少女は己の存在をゆらぎさせ、周囲に溶け込むことが出来た。


ラデリアは、人ではない、彼女は数百年以上生きてきたエルフであり、争いも、栄華も、滅びも見守ってきた。そして、美しいものを探して旅を続けている。


「どこか宿を取らないと。いけないね」

ラデリアは、寒さにぶるっと身震いした。

フードを着ていても、秋風が吹くと少し肌寒い。


大通りにあった適当な宿を見つけ、扉を押し部屋に入った瞬間に暖炉の柔らかな熱がラデリアを包んだ。

1階は木のテーブルが並び、何人か酒盛りしている男が居て、奥のカウンターには女性が立っている。

奥へと続く階段があり、2階に客室があるよくある宿の形をしていた。


「お嬢ちゃん、いらっしゃい。一人?泊まりかい?」

身分を証明してもらう紹介状を提示し、ラデリア小さく頷いた。


「うん、一人、数日。空いている部屋があれば」

うつむいたままラデリアは言った。


栗色の髪をした女性は帳簿をめくりながら。

「おや、国の紹介状かい。良いよ。2階の奥の部屋なら空いてる。市場側の部屋」

と言われると、ラデリアは宿代を支払い、宿の奥へと進んだ。


階段を昇る途中、後ろから女将の

「やけに古びた銀貨だね。価値はあるから良いけど・・」

という声が聞こえてきた。



広くもない部屋は、窓際に小さな机と椅子、部屋の中央には小さなベッド、簡素だが清潔感はあった。

微かに通りの音が聞こえてきた。


馬車の車輪と蹄の音、遠くで誰かの笑い声。

「ん・・・しばらくは、休めそう」

ベッドにコテンと横になり、目を閉じる。

白いベッドの上に夜のような黒い髪が広がった。

いつの間にかラデリアは、眠っていた。



次の日、適当な朝食を済ましていると、8歳ぐらいの女の子が声をかけてきた。

「お姉さん、どこから来たの?黒い髪凄く綺麗〜!」

「ありがとう」

「これ、摘んできたの。あげる!」

柔らかな笑みで返すと、女の子は白いお花を渡してくれた。


「マリア、知り合いかい?」

「ううん、違うのパパ」

栗毛髪の背の高い男が部屋の奥から出てきた。

指先には、絵の具がついており、画家か、絵付師と思われた。


「俺の名前は、エフベルトだ。画家をやらせてもらってる。お嬢ちゃん、綺麗な顔だな、どうだい?モデルやってみるかい?」

「遠慮しときます…。」

丁寧にお断りすると、「そうかい」とエフベルトはさらっと答えた。


「お姉さんはどこから?」

同じを質問をマリアはしてきた。


「外国から放浪の旅をしてきたの」

「へぇ!凄いね!ねぇねぇ話を聞かせて」

マリアは、机にどんと両手をついて、体を乗り出してきた。


「マリア、そろそろ次のとこに行かないと」

エフベルトは、布に包まれたキャンバスらしきものを持ってマリアに声を掛けてきた。


「ちぇ・・・またね」

「うん、またね」

唇を突き出してマリアは残念そうな表情を見せたが、すぐに笑顔に切り替えて手を降って宿から出て行った。

ラデリアも手を降って返した。


朝食を済まし、フードを被り直すとラデリアは街を散策することにした。

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― 新着の感想 ―
すごい読みやすかったです 楽しみにしています
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