【第6章:第2節】 開発者にとっての“参入ハードル”とその突破口
「PiでdAppを作ってみよう!」
この言葉は、誰でも気軽に参加できる“未来の経済圏”を連想させる。
だが、現実にはそう簡単にはいかない。開発者にとって、Pi NetworkのdApp開発にはいくつかの明確な壁がある。
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● そもそも、今のPiではスマートコントラクトが使えない
まず最初に押さえておきたい事実がある。
2025年3月時点で、Pi Networkはスマートコントラクトを正式実装していない。
これは、イーサリアムやSolanaなどの他チェーンと比べたとき、明確なハンディキャップだ。
スマートコントラクトがなければ、トークンの自動発行、DeFiの展開、DAO型プロジェクトなども実装できない。つまり、「Web3らしい経済構造」を作る上で、まだスタートラインに立てていないとも言える。
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● SDKとPi Browserでできることの限界
現在、開発者がPi上でdAppを作る際は、**Pi SDK(開発者ツールキット)**を使って、Pi Browser上にWebアプリとして展開するのが主流だ。
この方式では、ユーザー認証・ウォレット連携・Pi決済処理などは可能だが、
SolanaやPolygonのようなオンチェーンでのロジック実行(スマコン処理)はできない。
たとえば、こんなアプリは作れても…
・Piで購入できるオンラインショップ
・Piを送って参加するクイズアプリ
・ユーザー同士で送金できる軽量な取引所風アプリ
こういったものはまだ難しい。
・Piを担保にしてローンを組めるサービス
・投票によって運営方針が決まるDAOアプリ
・売上に応じて報酬が自動分配されるNFTプラットフォーム
これらはスマートコントラクトがなければ実現できないため、将来のアップデート待ちとなる。
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● 「今できること」こそが差別化ポイント
それでも、多くの開発者が“今のPiエコシステム”に参入している理由がある。
それは、他チェーンと違って「ゼロから市場を作る感覚」が味わえるからだ。
イーサリアムやSolanaでは、すでに完成されたdApp市場が存在し、ユーザーも分散している。
だが、Piはまだ“開拓期”。ユーザーはいるのに、サービスが圧倒的に足りていない。
「まだ誰も作っていないから、最初の成功者になれる」
この感覚が、起業家や開発者たちを突き動かしている。
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● 開発者にとっての最大の武器は“シンプルさ”
もう一つ、Piでの開発が魅力的な理由がある。
それは、開発環境がシンプルで参入しやすいという点だ。
•HTML、CSS、JavaScriptで開発可能
•特別なブロックチェーン知識がなくても始められる
•サーバー費用がほぼかからない(Pi Browserにホスティング可能)
この敷居の低さは、Web2の個人開発者やスタートアップにも非常に魅力的だ。
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● 作者の見解:参入タイミングとしては“今が最適解”
私(作者)は、この章を読んでくれている開発志向の読者に、こう伝えたい。
「まだ整っていないからこそ、今がチャンスだ」
2025年の今、Piは“完成されたエコシステム”ではない。
だがその分、“余白”がある。発展途上国でのPiユーザーも増えており、「ニーズのある市場」は確実に存在している。
今から参入し、使いやすいサービスを展開できれば、将来的にdApp市場の中心を担う可能性も十分にあるだろう。
Piは“最初から整っているブロックチェーン”ではない。
でも、それは「自分が整えていける余地がある」という意味でもある。




