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第9話 宙域の十字路で

「オーナー、ササーン神聖帝国への出発準備完了しました」


竜人種の男性、狗頭鰻の血族・クロードが話しかけて来る。


「アメリゴ連邦・コロンブス共和国・バベルの連合間引き部隊は?」


「すでに出発しました、しっかしコロンブス共和国に瑞獣王朝と行ったり来たり、このバグワーム領域を通るのは何度目になる事やら」


バベル移動要塞からササーン神聖の背後地域まで4つのゲートウェイを越えて到達する、そのうちバグワーム領域は3セクター


「何度通っても緊張するな」


「安心してください、偵察衛星と定期的な小型艦による航路の監視を行っております、最低限道を塞ぐバグワームを撃破可能な戦力があれば安全に航海出来ます」


現在の戦力は弩級戦艦1隻と大型駆逐艦3隻、武装貨物船5隻、バグワーム領域の間引きは順調に進みこの半分の戦力でも十分に通過出来ると分析されている。


「念には念とバグワーム間引き部隊がバグワーム領域に進行した後にのみこの艦隊を出発させているがな」


俺はそう言い用意されたコーヒーに口をつける。


今は2個目のゲートウェイを通過した所だ、このセクターには4つのゲートウェイが存在し、うち1つはササーン神聖帝国のセクターに繋がっている。


「おや3時間程、順調に進みましたな第二セクターもバグワームの数は少なく今日中には背後地域に到着出来そうです」


「いずれこのセクターは確保したいな。」


4つのゲートウェイそれぞに防衛ステーションを建設すればと頭の中で想像する。


チョークポイントと言うべきか、宇宙の四差路であるこのセクターを確保出来れば、アメリゴ連邦とササーン神聖帝国の前線のセクターと背後地域のセクター間の移動がだいぶ短くなる。


「ん?ササーン神聖帝国側のゲートウェイから転移反応、中型艦のエネルギー反応ササーン神聖帝国艦のものですな」


クロードはデータの集取を指示しつつモニターをのぞき込む。


「それにしてもバグワーム領域に1隻とは命知らずな、偵察でしょうか?」


偵察だとしても危ない行為だ、敵対勢力セクターへの移動なら無人機による偵察後に安全確保用の戦力を送るのが定石


「ゲートウェイにさらなるエネルギー反応、中型、小型のバグワームの反応です」


「「!!」」


「中型艦反応、先行して実体化、出現まで3、2、1、今」


モニターに映し出されたのはササーン神聖帝国の中型艦、霧風級である。


「バグワームに追いかけられてますな」


クロードはチラリとこちらに視線をやる


「発光信号でこちら側に逃げ込む様に伝えろ、各艦に戦闘準備」


「「了解!!」」


ササーン神聖帝国の霧風級宇宙船が速度を上げ、その後方にはバグワームの群れが追いすがっていた。


「発光信号送信完了!先方から応答あり、こちらの保護を求めています」


クロードのオペレーターが答える。


「あの艦は通常の軍用機ではない。湾曲した外装と追加された水槽区画……要人輸送用改造だな」


「識別信号から高位クラスの人物が搭乗している可能性が高いです」


センサー担当が補足した。


「よしバグワームを一掃しろ。あの船を守るぞ、第二、第三駆逐艦は前方に展開火力を前方に投入、弩級戦艦の主砲バグワームの群れを乱せ、貨物船はポイントディフェンスで接近する小型を迎撃」


クロードの指示に従い艦隊が動き出す。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


霧風級要人用宇宙船「セイクリッド・パターン」の艦内では、青い鱗肌の魚尾種の少女が水槽コントロールルームで懸命にシールド出力の演算を行っていた。


「神聖なる方程式の名において、我らを守りたまえ…」


タンジル・モクルール神聖枢機卿の第三の目飾りが脳波に合わせて発光する。


「超楕円教会め、最初から我等をバグワームに始末させるのが目的か!!」


「くどい、奴等追撃艦隊の攻撃は過激な物だった、あのままあのセクターを逃げ回るよりもバグワームの領域の方が道が開けると言うたのはわらわらじゃ」


申しわけありませんと従者の一人が頭を傾ける。


「枢機卿閣下、バグワーム領域に艦隊です、未確認の艦隊がバグワーム領域を移動しています。」


「まさか誘い込まれたか!?」


「未確認艦隊はバベル・エデンを自称、支援信号を発しています」


副官が報告した。


タンジルは水流の中で小さく頷いた。 


彼女の赤い法衣が水中で優雅に揺れる。


「罠の可能性もあるがそれなら追撃艦隊も来なければ意味が無い、不明艦隊、いやバベル艦隊に向け船を進めるのじゃ」


「枢機卿閣下の御心のままに」


バグワームの最後の群れが駆逐艦の一斉射撃で消滅した頃、霧風級宇宙船はバベル艦隊の防御圏内に無事到達した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「オーナー、霧風級から通信要請」


通信担当が報告した。


「つなげ」


ホロ画面に映し出されたのは、若く見える魚尾種の少女だった。彼女の鱗は高貴な青色に輝き、赤い法衣と第三の目が彼女の地位を物語っていた。


「バベル・エデンの方々、救援に感謝するぞよ」


彼女の古風な言い回しが艦橋に響く。


「わらわはタンジル・モクルール、ササーン神聖帝国の神聖枢機卿である」


オーナーとクロードは一瞬顔を見合わせた。


タンジル・モクルールは数日前に行方不明と発表されている。


正史によれば行方不明から1週間もしないうちに政府による死亡発表がされる筈、成る程ここで歴史の歯車が狂うか!?


アンルール情報参謀がタンジル・モクルール枢機卿に成り代わる予定だった。


「俺がバベル・エデンを代表して歓迎します、枢機卿閣下」


オーナーは落ち着いた声で応じた。


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