第12話 アワイコロニーの変革
アワイコロニーは元々、農業を基幹産業とするコロニーだった。
広大なバイオドームで穀物や果実を栽培し、メリゴ連邦をはじめとする各地のコロニーへ食糧を輸出していた。
しかし、海賊戦争 による影響で状況は一変した。
輸出先の減少
海賊による襲撃の増加で宇宙航路が危険になり、保険料が高騰。貿易コストが跳ね上がったことで、アワイコロニーの食糧は売れなくなった。
工業の衰退
採掘業者の減少により、コロニー内の工業も衰退。農業機械のメンテナンスすらままならない状態に。
物資不足
農機具や修理部品の入手が困難になり、食糧生産の効率も落ち始めた。
このままでは、農業コロニーであるアワイで農業が行えず、将来的に食糧不足に陥る可能性すらあった。
しかし—— バベルの存在がすべてを変えた。
「これだけの量を買ってくれるのか……?」
アワイコロニーの農場主たちは驚きと喜びの入り混じった表情を浮かべた。
バベルはコロニーが抱える余剰食糧を買い取り始めた、財源はアメリゴ連邦軍とコロンブス共和国艦隊の修理と穀物を加工したバイオ燃料の補給、太陽発電によるエネルギーセルの充電交換など、中間業者を挟まず未来の効率化の進んだ技術により利益は順調に増えていた。
「機械が足りねぇんだよ。トラクターもコンバインも、もう限界だ。」
そんな声にもバベルは答える。
「バベルの工場拠点で生産された農機具と修理パーツを、優先的にアワイに回せ、うちの商品は雑にあつかって壊れはしないが、お客様に渡す物だ丁寧に扱え。」
「これが……新品のエンジン!?規格はあってる買い換えようぜ親父。」
農業機械が復活し、作業効率は飛躍的に向上。
部品の供給が安定したことで、農家たちは安心して作付けを増やせるようになった。
さらに、バベルの工場が提供するのは 農機具だけではない 。
アワイコロニーの経済は順調に回り始めた。
「オーナー、バベル内の住人にここが過去である事と既に未来を“変えていしまっていた”と言う事実を共有出来るでしょう。」
大規模な治安悪化と、それによる死者は居ない事に安堵する。
「アモンクレジットと共通通貨の交換は常に行う様に、アモンクレジットはしばらくはエネルギー通貨で価値を保証するが、いずれは単独で通貨として通じるよう運用する。」
共通通貨の代わりになるバベルの独自通貨アモンクレジットの発行、アワイコロニーの農業生産物の買い取りと軍への修理販売による外貨獲得、この準備をして初めてバベルの全ての住人にここが過去である事を伝える覚悟が出来た。
「大規模な工業コロニーの作成、このために住人を宇宙に出して働かせる必要がある。だからこの世界が過去である事を教える必要があるし、自分の目でここが過去だと確かめたい人には、アワイコロニーを見せるのが手っ取り早い。」
「働いてる間は、人間は余計な事を考えないと精神医学にもあります。そして経済活動を行えない労働者を公共事業で吸い取るというのも。」
アケブラ・ナガスト総合交易会社副社長、ゴア・D・ゲオルギウス、人間種である事から、アメリゴ連邦とコロンブス共和国への受けが良いだろうと、今回の現場責任者に任せられた。
「聴かれていたか。」
「気持ちは分かります。バベル・カナンコロニーに必ずやかつての活気を取り戻して見せましょう。今は2万アモンクレジットにしかならない労働者も、様々な経済活動によりええ必ず彼らの価値を高騰させて見せます。」
「そう言う事じゃないんだけどな、でも期待してるよ、竜人種仕込みの君の経営手腕を、ではゲオルギウス副社長、君を工業コロニー建造責任者に任命する。」
敬礼を開始部屋を出るゲオルギウスを見守る。
工業コロニーが動き出せば船体部品の生産が行え、このバベルで再び宇宙船の建造を始める事が出来る。
「メネリク社長、シャルル指揮官、採掘部長、ゲルラッハ副官と共に採掘計画の見直しと、更なる採掘権獲得の為に交渉に向かってくれ。」
歯車がかみ合いだした、そう確信する。