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第13話 財布を前に蠢く影

「ボス、夕暮れの星セクターってとこ知ってますか?」


荒れ果てた宇宙港の片隅。

薄暗い酒場で、海賊団の一人がボスに話しかけた。


スキンヘッドに無精髭の男——海賊団のボスは、酒をあおりながら鼻で笑う。


「何だ、おまえバグワームの話をしらねぇな。軍の人員交代くらいしかねぇ場所に行っても、たかがしれてるだろ?」


バグワーム。

銀河にその名を轟かせる、無慈悲な宇宙生物たち。


それらの侵攻を食い止めるため、メリゴ連邦軍や各国の軍が防衛線を築いていた。

夕暮れの星セクターも、その一角である。


しかし、手下は不敵な笑みを浮かべながら続けた。


「それがそうでもないんですよ。バグワーム防衛線が確立したと、アワイコロニーの議長と軍が発表したんです。で、それに伴って保険料が下がり始めた。」


ボスの表情がわずかに変わる。


「……成程な。」


戦争や防衛線が確立されると、貿易ルートが安定し、船の保険料が下がる。

そうなれば、商人たちが新たな航路を求めて動き出す。


「だが、それでもたかがしれてるだろ?」


ボスは懐疑的だった。

いくら安全になったとはいえ、まだまだ辺境の領域。

莫大な富が転がっているとは思えない。


しかし、手下はさらに続けた。


「それが……軍が駐屯してることもあって、保険が他の宙域よりも下がるんじゃないかって商人連中が話してたんです。」


「新しい縄張りになるかもしれませんぜ。」


その言葉に、ボスはしばし考え込む。


軍が駐屯することで治安は向上する——が、それは「合法的な勢力」の話だ。

軍の目を掻い潜れるなら、むしろ「狩場」としては悪くない。


彼らが手を出せない場所なら、狙い目だ。


「様子見ならいいかもな……」


海賊たちは、夕暮れの星セクターへと目を向け始めていた。


新たな戦火の火種が、静かに灯る——。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なんだ……?通信が乱れてるぞ」


小惑星帯での採掘作業を進めていたバベルの作業員たちは、突然の異変に気付いた。


彼らはアワイコロニーの住民であり、バベルに雇われた人員だ。


鉱石の掘削音が響く作業現場。

そこへ、突如として警報が鳴り響く。


「通信妨害……?いや、これは——!」


「敵襲!海賊だ!!」


次の瞬間、小惑星の影から無数の赤い光が閃いた。

レーザー砲の直撃を受け、採掘機の一部が爆発する!


「チッ……!」


バベルの警備担当が慌てて通信機を手に取るが、ノイズが走り、連絡が取れない。


「ジャマー(妨害電波)を使われてる!バベル本体に連絡が——!」


「無理だ!戦闘機が接近中!」


眼前に迫るのは、海賊船団。


粗雑な改造を施された小型戦闘艇が小惑星帯を縫うように飛来し、採掘船を次々と襲撃していく。


「クソッ!防衛ドローンはどうした!」


「ダメだ!やつら、ドローンの管制周波数をジャミングしてる!」


バベルの採掘部隊は、最低限の護衛しかつけていなかった。

まさか、こんな早く海賊が動くとは——。


「チッ……迎撃準備!採掘レーザーでもいい、応戦しろ!」


「だが、戦闘用じゃないぞ!」


「最低限の照準システムは積んている。」


「やるしかねぇ、やるしかねぇんだよ!!」


掘削用の高出力レーザーが一筋の光となって放たれる。

本来は鉱石を砕くためのものだが、戦闘機の装甲に当たれば、それなりのダメージは入る。


「当たった!……いや、まだ動くのか!」


だが、海賊機はしぶとい。


「フハハハッ!やるじゃねぇか採掘屋ども!だが、こっちも本気出すぜぇ!」


海賊船から、無慈悲な砲撃が降り注ぐ。

爆発と共に、採掘拠点が次々と炎上していく。


「くそっ、このままじゃ……!」


「……待て、あれは——!」


突然、戦場に新たな影が現れた。


遠方から、鋭い閃光がいくつも走る。


次の瞬間——海賊船の一部が爆発した。


一瞬、海賊たちの動きが止まる。


「何だ!?どこから!?」


その隙に、採掘部隊の一人が叫ぶ。


「あそこだ助かった……!バベルの迎撃部隊が来た!」


バベルの防衛艦隊がついに戦場に到着したのだった——!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「いいか諸君、海賊は我々の財布だ。」


バベル防衛部隊の指揮官、ゲルラッハ副官は静かに、だが確実に全兵へ指示を下した。


「丁寧にエンジンを壊し、武装をプラズマ砲で麻痺させる。」


艦隊のブリッジでは、戦術スクリーンに映し出された敵機の動きを、戦術士たちが分析している。


海賊の戦闘艇は小型で機動力に優れるが、防御力は貧弱だ。

対して、バベルの迎撃部隊は戦闘のために設計されたわけではないが、高度な技術力と整備の行き届いた装備を持っている。


——つまり、「負ける要素はない」。


「各部隊、攻撃開始!徹底的に叩け“船は生け捕り”にしろ!」


戦場に咆哮するプラズマ砲

バベル艦隊の主砲が火を吹く。


通常なら撃墜を目的とするはずの砲撃だが、バベルの攻撃は違った。

敵の機体を沈めるのではなく、機能を麻痺させる精密射撃が繰り広げられる。


海賊艦の通信量が増加する。


「敵エンジン停止!スラスター損傷!」


「くそっ……動かねぇ!?何をしやがった!」


次々と航行不能になる海賊船。


さらに、パワードスーツ部隊が出撃する。

宇宙空間用の最新鋭パワードスーツに身を包んだ精鋭たちが、機動ユニットを駆使し、海賊船に直接乗り込んでいく。


「ハッチを破壊、突入開始!」


海賊たちが銃を構える暇もなく、バベル部隊は次々と船内を制圧していく。


「や、やめろ!降参する!」


「そのまま動くな。おとなしくしていれば命は助けてやる。」


「乗ってるやつはアメリゴ連邦に送れ、我々バベル・エデンが犯罪者に容赦しない事を知らしめろ、資源は無駄にするな。」


ゲルラッハ副官の冷徹な指示が響く。


拿捕された海賊たちはバベル・エデンの名声とアメリゴ連邦への目に見える貢献になった。


——戦争において、資源を無駄にすることは最大の愚行だ。


バベルの反撃は、単なる迎撃ではなかった。

これは、敵を潰すのではなく、戦力として再利用する「戦術的勝利」だった。


勝利の余韻

戦場は静まり返った。


海賊たちはすべて無力化され、バベルの損害は最小限。


戦果の報告がゲルラッハ副官のもとに届く。


「占領完了、エンジン破壊率95%、海賊の生存率は90%以上、艦の回収は可能です。」


「よし、拿捕した船をバベルまで曳航しろ。装備の流用と分解を始める。囮のバベル子会社のアワイコロニー民間採掘船にはいつものように説明、バベルの治安維持活動を宣伝させろ。」


ゲルラッハは満足げに頷いた、アワイコロニーで割の良いと言われるバベルの採掘業、そのからくりは宇宙船に対する保険を必要としない点にある。


自分らで宇宙船を治せるからこその強みだ、格差は恨みを生む。農業生産関連で儲かる人間を恨んでバベル・エデンまで恨まれないよう、割の良い仕事を持って来てくれる人間になると同時に、犯罪者に対する容赦のなさも知らしめ舐められないよう振る舞わなくてはならない。


これでまた、バベルの経済圏は強化される。流石竜人族、経済的にも性格的にも汚い。


海賊という「害悪」を、「資源」へと変えたのだから——。


【作者】


「読者の方〜、読者の方、作者としてはコメントを求めています。」


「特に参謀タイプの方がおられましたら、コメントお願いします、隗より始めるタイプの作者を自称してます」

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