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<第十九話>薫の閃き

  確かに巌の胸に刺さっていたのは、悠馬のナイフだった。


 それは、朝巌の部屋に集まった時に全員が気が付いていた事だった。




 悠馬のペーパーナイフは、特徴的な(つか)が付いた物で、一目でそれと判る品だったからだ。




 彼が以前ヨーロッパ旅行に行った時に、柄の部分にアンティーク調の文様が手彫りで施されていて、とても気に入ったから買ったと嬉しそうに話しながら使っていた姿は、家族全員が見た事があったのだ。




 


 しかし、その事実を大野刑事に自分から話し出すことが出来た者は、いなかった。


 結局、悠馬自身が口火を切って話したが、その結果は、怪しい雲行きが漂うものとなってしまっていた。




 そして大野刑事と悠馬が出て行った後、リビングには沈黙と重苦しい空気が漂っていた。








 「悠馬が殺したんだよ・・・。」


 颯斗が呟くように言った。






 「えっ、兄さん?




 今、悠馬兄さんが、お父さんを殺したって言ったの?」


 瑠璃が動揺しながら聞いてきた。






 「だって、そうだろ。




  だから、警察が悠馬の事を連れて行ったんじゃないのか。」


  颯斗がもう一度早口で答えた。










 (父が死んでしまった。




 そして、兄さんが刑事さんに連れていかれて、取り調べを受けている…。)




 薫は、矢継ぎ早に起こる驚きの出来事に、すっかり言葉を失っていた。しかし、呆然となりながらも必死に考え込んでいた。




 (まず落ち着くのよ、薫。一体今、何が起きているのか、ちゃんと考えなきゃダメ。でも、何をどうすればいいのかしら・・・。)







 そんな薫の耳に、先程の颯斗の言葉が入ってきた。


 そしてそれは、頭の中で何度も繰り返された。






 (…そんな、そんなはずがない。




  兄さんは、絶対にそんな事をするはずがない。






  でも……。






  それじゃあ、一体誰がお父さんを殺したって言うの?








  何も分からない、…どうしよう、考えられないわ。




  …私は、一体どうすればいいの?)






  途方に暮れかけていた薫の頭に、一筋の閃きの光が差し込んできた。







 (そうだわ。この事を、姫子さんに相談してみればいいのではないかしら。


  姫子さんなら、この話を聞いて、きっと何かをしてくれる。そんな気がするわ。




  でも、今の自分は、果たして外出する事が許されるのかしら?





  どうすれば、姫子さんに会いに行くことが出来るかしら・・・。)




  薫は、自分の閃きを信じて、姫子に会いにいく方法を必死で考え始めていた。








 「あのう…、すみません…。




  暖房のせいでしょうか?気分が悪くなってきてしまって…。



  もし宜しければ、少しだけ外の新鮮な空気を吸いに外出してもよろしいでしょうか?」


  薫は、部屋の入り口を警備していた警察官に、遠慮がちに声を掛けた。





 「外出ですか?


  確認してきます、そのままお待ち下さい。」


  警察官は、大野に確認を取るために、急いで部屋を出て行った。







 「短時間の外出でしたら、いいそうです。



  玄関の者にもあなたの外出の旨を伝えてありますので、どうぞ。」


  警察官はそう答えると、扉を開けてその脇に立った。






 「どうもありがとうございます。



  はい、分かりました。なるべく早く戻るようにします。」



  外出の許可がもらえた薫は、その足で姫子の滞在先の別荘へと急いだ。

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