3
「ははっ、お揃いの服しか見てないから、そうなるんだ!」、言って、軽やかに指笛をならす。高い音が喧騒に染み込めたかは分からないけど、ライアンは続けて叫んだ。「コルロルー!! レーニスとリーススはもう大丈夫だ!! 引き上げるぞー!!」
「コルロル……生きてるの?」
離れていく街の広場を振り返る。黒い翼がいっぱいに広がったところだった。離れて見ていると分かり易い。コルロルの周りから、さーーーと人が引いていく。
「よく無事だったね。あの時の爆発、すごかったのに」
「まあね。あれは爆発の直前に逃げられたから良かったけど……。ここに来るまでが、本当に大変だった。レーニスは夜には火あぶりだって言うし、兵隊は誰もかれも銃を持って八方ふさがりに迫ってくる。もう終わりかと思ったけど、土壇場でいい策を思いついた。俺は軍服を着ていた。だから俺がコルロルを仕留めたことにして、街まで運ばせたんだ」
「……すごい。コルロルはずっと、死んだふりをしていたの?」
「まあ実際に殴って気絶させてたんだけど。名づけて、『殺される前に死んじまえ作戦』」
「そのネーミングはどうかと思うわ」
「ははは、その冷めた態度も懐かしく感じるよ。さあ、いくぞ! 馬よ、駆けろ! どうだ? 俺ってなかなか、ヒーローみたいじゃないか?」
馬は森の中を疾走する。満足そうな高揚した声を聞きながら、あたしはライアンの広い背にもたれ、猛スピードで過ぎていく木々を見ていた。
「……リースス」
ライアンの腕の中にいるリーススへ呼びかける。『もう限界なのよ、1人は嫌なのよ』、そう言って、初めて泣いたリーススのことを思い出す。
「もう、怒ってない?」
ライアンの脇から前を覗く。すぐに返事はなかった。代わりにライアンが喋った。
「そうか、二人は喧嘩別れしてから、久しぶりの再会なのか。それにしても、テディがリーススだったなんて、びっくりだよ。ちなみにテディを逃がしたのも俺だよ、一応言っとくけど」
「テディ? テディってなんなの?」、リーススは不思議そうに尋ねる。
「ぬいぐるみだったのよ。汚れたテディベアで、良く笑って、けっこう毒舌だった。さっきは、焼かれそうなあたしの元に来たわ。死ぬときは、一緒だって」
炎を背負うテディベア。焦げる匂いと、落ち着いた笑顔のアンバランスさを思い出す。年齢不詳なあの声で、テディは言った。『死ぬときは、一緒だよ』
「死ぬときは一緒ですって? ぬいぐるみになったあたしが、そう言ったの?」
「……そうだけど」
リーススはおかしそうに、声を出して笑った。
「ぬいぐるみになっても、私は私ね」、彼女は晴れやかな顔で、空へ見上げる。「もう怒ってないわ。なんだかとっても、気分がいいの」
▲
▲
△




