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怪物コルロルの一生  作者: 秋月みろく
■負傷と大群
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3


「お互い苦労するね」、と慰めに似た言葉を怪物は言う。その後で口ごもった。「困ったな、こんな時の慰める言葉を、僕は持たない。今後の参考に聞いておきたいんだけど、こんな時はなんて言えばいいの?」


「ガンバ、とでも言って親指立てとけ」、俺は立ち上がる。コルロルは早速言ったことを実践して、指を立てて「ガンバ」と言ってきたが、彼の指が三本なのを忘れていた。しかも真ん中の指を立ているから、いわゆるファック!の仕草にしか見えなかった。


 もし誰かを慰めるためにこんなことをしてしまったら、相手は怒り出すだろうな。


 その時、頭上で騒音がした。見上げてみると、切り立った崖の髪の毛みたいに生えている木々の中から、ひとつの飛行船が飛び出したところだった。


「まさか」、手で太陽の眩しさを遮り、目を細める。「ガルパスのやつ、飛行船できてたのか」


 飛行船の下に、なにかぶら下がっている。俺にはそれがなにかよく見えなかったが、コルロルははっきり視認できたらしい。


「レーニスだ」、声に驚きと怒りが混じる。


「本当か? 本当にレーニスなのか?」


「僕が見間違うもんか」


「てことは、ガルパスから君への挑戦状だな」、迂回して飛んでいく飛行船に、やや遅れて吊るされたレーニスの影が追う。


「挑戦状?」


「レーニスを取り返したければ、追いかけてこいってことだろ。人質交換の続きをするつもりだ。しかもあの方角は……この辺で一番でかい街がある。最新の武器はまずそこに集まり、兵隊もうようよいるところだ。レーニスを餌にして、君を確実に殺せる場所へ誘ってるんだよ」


 俺はやっと立ち上がったコルロルを見上げた。「どうする? 行くか?」


「決まってるだろ」、やつは歩き出す。俺はその背中を見ていた。街へ出向いたとき、そこに広がっているだろう光景が、頭の中に広がる。


 国の人々を殺したバケモノ。国軍は威信をかけて迎え撃つ。懸賞金欲しさの野次馬も集まるだろう。強力な味方をつけたガルパスは息を卷いて、自分が見つけたんだと躍起になって主張する。兵の持つ銃が一斉にこちらを向いて火を吹く。


 易しく言って分が悪い、ストレートに言ってしまうと、死ににいくようなもんだ。俺は無関係だし、ここで退散してもいいんだけど。


「……ま、あのどんぐりをガルパスに渡すのもシャクだしな」、言い訳みたいに呟いて、俺はコルロルを追いかけた。


「急ぎなよ、飛べないんだから時間がかかるだろう」、とコルロルは半分こっちを向く。


「悪い悪い」


「足でまといにはならないでくれよ」


「俺ほど頼れる相棒はいないぜ? 相棒」

 

 

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