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今までの鬱憤が、一気に吹き出しているみたいだった。なんにも備えていなかったあたしは、何も言い返せない。そうだ、あたし、何も考えてなかったんだ。だから言葉がでない。リーススがそばにいることに甘えて、そばにいてくれるのを当たり前に思っていた。
「どうするの? あなたは」、冷たい問いかけ。「一緒に、おじさんのところへ行く?」
「そうだ、おじさんの家で暮らしながらコルロルを探せば」
「やめて。おじさんになんて言うつもり? 毎日怪物殺しに出かけるあなたを、おじさんやその家族が心よく見守ってくれるとでも? おじさんのところへ来るなら、コルロルのことはもう忘れて。金輪際、一切ね」
「でも……」、コルロルへの復讐を、諦める? これはそういう選択だ。リーススか、コルロルか。あたしは即答できなかった。
「ねえレーニス」、彼女は膝の上で手を重ね、追い打ちをかけるように言った。「もう、諦めたら?」
少し記憶を振り返ってみたけど、彼女がそう言ったのは初めてのことだった。あたしのやることに口出しせず、応援しなければ反対もしない。ずっと我関せずの態度だった。
「今日のあなたを見ていたけど、ライアンやガルパスおじさんとのやりとりは、そこまで不自然じゃなかった。おじさんと一緒に暮らしていくのに、大きな支障はないと思う。だからこれからは、怪物を殺すとか物騒なこと言ってないで、平和に暮らしていければ」
「諦めるって……本気で言ってるの?」
リーススはこちらを見上げた。「コルロルを殺して、どうなるっていうの?」
やつを殺してどうなるか? そんなこと、答えられない。やつを殺すことは、感情を盗まれた瞬間に出来た、あたしが生きるただひとつの道だ。目標だ。
「やつを殺さないなら、どうすればいいの? あたしは、どうやって生きていけばいいの? こんな……憎しみしかないのに。怒ること、恨むことしかできないのに。それまでやめてしまったら……」
それはもう、人間じゃないじゃない。
言いながら気づく。あたしはずっと、コルロルを憎み続けないといけなかったんだ。憎しみまで捨ててしまったら、あたしは空っぽだ。
「だからって……」
「リーススには分からないよ。あたしも、リーススみたいに、最初っから笑わない人間なら楽だったのかもしれない」
「……なによそれ。さっきも言ってたけど」
「リーススは、笑わないじゃない。はじめからないものは、さすがにコルロルも盗めないでしょ」
あたしの呟きを最後に、すっと静寂が降り立つ。耳鳴りだけが、刺すように頭を横断していく。でも、それも少しのことで、リーススは薄く口を開いた。
「そんな風に、思ってたんだ」、彼女は指先で、瞼を抑えた。「そうよね……そうだよね」
「……泣いてるの?」、泣く……哀しみ? あたしには哀しみもない。分からない。リーススは今、哀しんでる?
「泣いてないわ。泣くはずがない。私に、哀しみはないもの。あなたと一緒よ。父さんが死んだ時だって、あなたは泣かなかった」
あたしは何も答えない。なぜ今、父さんの話になるのか分からなかった。リーススは混乱しているように見える。
「死んだのよ……? 分かる? 父さんにはもう、二度と会えないのよ?」




