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怪物コルロルの一生  作者: 秋月みろく
■行き先とコルロル
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 今までの鬱憤が、一気に吹き出しているみたいだった。なんにも備えていなかったあたしは、何も言い返せない。そうだ、あたし、何も考えてなかったんだ。だから言葉がでない。リーススがそばにいることに甘えて、そばにいてくれるのを当たり前に思っていた。


「どうするの? あなたは」、冷たい問いかけ。「一緒に、おじさんのところへ行く?」


「そうだ、おじさんの家で暮らしながらコルロルを探せば」


「やめて。おじさんになんて言うつもり? 毎日怪物殺しに出かけるあなたを、おじさんやその家族が心よく見守ってくれるとでも? おじさんのところへ来るなら、コルロルのことはもう忘れて。金輪際、一切ね」


「でも……」、コルロルへの復讐を、諦める? これはそういう選択だ。リーススか、コルロルか。あたしは即答できなかった。


「ねえレーニス」、彼女は膝の上で手を重ね、追い打ちをかけるように言った。「もう、諦めたら?」


 少し記憶を振り返ってみたけど、彼女がそう言ったのは初めてのことだった。あたしのやることに口出しせず、応援しなければ反対もしない。ずっと我関せずの態度だった。


「今日のあなたを見ていたけど、ライアンやガルパスおじさんとのやりとりは、そこまで不自然じゃなかった。おじさんと一緒に暮らしていくのに、大きな支障はないと思う。だからこれからは、怪物を殺すとか物騒なこと言ってないで、平和に暮らしていければ」


「諦めるって……本気で言ってるの?」


 リーススはこちらを見上げた。「コルロルを殺して、どうなるっていうの?」


 やつを殺してどうなるか? そんなこと、答えられない。やつを殺すことは、感情を盗まれた瞬間に出来た、あたしが生きるただひとつの道だ。目標だ。


「やつを殺さないなら、どうすればいいの? あたしは、どうやって生きていけばいいの? こんな……憎しみしかないのに。怒ること、恨むことしかできないのに。それまでやめてしまったら……」


 それはもう、人間じゃないじゃない。

 言いながら気づく。あたしはずっと、コルロルを憎み続けないといけなかったんだ。憎しみまで捨ててしまったら、あたしは空っぽだ。


「だからって……」


「リーススには分からないよ。あたしも、リーススみたいに、最初っから笑わない人間なら楽だったのかもしれない」


「……なによそれ。さっきも言ってたけど」


「リーススは、笑わないじゃない。はじめからないものは、さすがにコルロルも盗めないでしょ」


 あたしの呟きを最後に、すっと静寂が降り立つ。耳鳴りだけが、刺すように頭を横断していく。でも、それも少しのことで、リーススは薄く口を開いた。


「そんな風に、思ってたんだ」、彼女は指先で、瞼を抑えた。「そうよね……そうだよね」


「……泣いてるの?」、泣く……哀しみ? あたしには哀しみもない。分からない。リーススは今、哀しんでる?


「泣いてないわ。泣くはずがない。私に、哀しみはないもの。あなたと一緒よ。父さんが死んだ時だって、あなたは泣かなかった」


あたしは何も答えない。なぜ今、父さんの話になるのか分からなかった。リーススは混乱しているように見える。


「死んだのよ……? 分かる? 父さんにはもう、二度と会えないのよ?」




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