表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/500

華音が剣道や徒手格闘を極めない理由を語る

華音は、ゆっくりと話しはじめた。

「剣道、そして徒手格闘は、あくまでも鍛錬とか自己防衛の手段で・・・」

「それを極めようとまでは、思わないのが、本心」

「というのも、剣道にしろ、徒手格闘にしろ、目の前の相手を倒せば、それで一応の決着がつく、そこで終わりなんです」

「たいていは、一対一の勝負で、大会に参加したとしても、相手をするのは・・・10人・・・多くても20人くらいでしょうか」


周囲全員が華音の言葉に、耳を傾ける。


華音は、一旦、すまなそうに空手部員、空手部顧問松井、剣道部顧問佐野に頭を下げた。


「それで、文学とか、書き物の場合は、書いたものが、残ります」

「つまり、その人の考えていることが、ずっと残る」

「世界の歴史、日本の歴史を考えれば、紀元前、つまり二千年以上残る文もある」

「たくさんの人に、書いたもの、書いた考えを読んでもらえるし、評価されれば、影響も残る」


華音は、またすまなそうな顔。

「そもそも、比較の対象には、なっていないのですが」

「それと・・・奥が深くて、偉そうなことを言っても、なかなか・・・恥ずかしい限りで」


華音の言葉は、そこで終わった。

聞いていた学生たちは、「ポカン」とした顔。

あまりにも、想定外の話だったようだ。


空手部顧問松井は、笑ってしまった。

「・・・まあ・・・それは・・・その通りだ」

「確かに、格闘はその時限り、永遠には残らず」

「文は、残るか」


剣道部顧問佐野も笑った。

「宮本武蔵の五輪の書は残るけれど、宮本武蔵の剣は見ることはできないか」


華音は、両顧問の笑顔で、ようやく笑った。

「僕が強いとか、弱いの話ではないんです」

「僕は、そうでないことを、したいだけなんです」



吉村学園長が、再び華音に声をかけた。

「まあ、華音君も、暇があったら、剣道部とか空手部にも顔を出してみたら?」

「部に入るとかではなくてさ、身体ほぐしとか、気分転換の意味でね」


吉村学園長の言葉で、両顧問はうれしそうな顔。

空手部顧問松井

「それは、助かるなあ、刺激になる」


剣道部顧問佐野

「鍛錬方法も教えて欲しい」


華音は、恥ずかしそうに笑っている。

「わかりました」


そして、また、頭を下げた。

「ただ・・・まだ、本来の希望の、文学研究会には、何の挨拶もしていないんです、これもまた、申し訳なくて」


吉村学園長は、周囲の雰囲気を読んだ。

「じゃあ、華音君は、今日はこれでいいかな?」

「あとは、華音君の都合しだいで」


誰も、異論を言わない。

拍手まで起きている。


華音は、再び深くお辞儀をして、空手部練習場を後にした。


鞄を取りに、自分の教室に戻る華音に、吉村学園長

「華音君、お疲れ様」

華音は笑顔。

「ナイスフォロー、ありがとうございました」

吉村学園長

「これから文学研究会?」


華音は、首を横に振る。

「いえ・・・まだ部屋の整理です」

「持ち込んだ本が500冊以上あるので・・・」


吉村学園長は、目を丸くしている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ