華音の住む洋館にて(4)華音の部屋
4つの客室は、全て同じつくり。
フローリングの床にダブルベッド。壁はベージュ。
テーブルは濃いブラウン。
冷蔵庫、風呂、トイレもあり、ほぼホテルのよう。
立花管理人が説明をする。
「華音様のおじいさまが人を泊めるのが大好きでございまして、和風のお屋敷や、ゲストハウスも止まり切れない場合とか、主に欧米の方などは、こちらの洋館にて泊まっていただいたのです」
華音は恥ずかしそうな顔。
「僕も、じいさんに呼ばれて都内に来る時は、たいていこっちだったんです」
雨宮瞳は華音に尋ねた。
「今は、華音君以外は、ここの洋館にはいないんだよね」
華音は頷いた。
「はい、食事で和風のお屋敷に行くけれど、ここは僕一人」
沢田文美が、おそるおそる華音に声をかけた。
「ねえ、華音君のお部屋、見てもいい?」
沢田文美にしても、男子の部屋、少々のためらいがあるようだ。
華音は、恥ずかしそうな顔。
「全然、整理できていなくて、下にも見た通り、荷物が残っていて」
「でも、大したものもありませんので、かまいません」
どうやら、廊下の突き当りが華音の部屋のようだ。
ここでは、華音が先に歩き、ドアを開けた。
雨宮瞳が思わず声をあげた。
「すっごい広い・・・」
沢田文美は、呆然。
「これって・・・何畳?」
華音は、立花管理人に確認。
「だいたい20畳ぐらいです」
「まだまだ整理できていないので」
華音の言う通り、確かに引っ越しの荷物だろうか、段ボールが多く積み重なっている。
ベッドは、やはりダブルベッド。
勉強机ではなく、テーブルで、その下にワゴン。
40型ぐらいのテレビ、大きなボーズのステレオセット、冷蔵庫、お風呂やトイレも最新式のものが完備している。
しかし何より驚いたのは、壁一面の本棚。
ただ、華音の言う通り整理がついていないのか、1割程度しか埋まっていない。
雨宮瞳は気が付いた。
「ねえ、華音君、もしかして段ボールの中身って、本なの?」
華音は素直に頷いた。
「はい、分類もして本棚に納めないと、後で大変なことになるので」
沢田文美が段ボールに書かれた文字に注目。
「万葉集」「古今和歌集」「新古今和歌集」「和歌論」「白楽天」「李白」「杜甫」
「枕草子」「源氏物語」・・・・それぞれの名前ごとに段ボールが一個ずつになっている。
その他、「イギリス文学」「フランス文学」「ギリシャ神話」「聖書学」「仏典」「古代ローマ」「イタリア史」「フランス史」「北欧史」等の段ボールもある。
いつの間にか、立花管理人は姿を消している。
華音は、また恥ずかしそうな顔。
「一階の多目的室にあるのは、主に輸入した原書で、それも整理して入れないと」
雨宮瞳はため息
「やっとわかった、華音君、これは大変だ」
「夜更かしするのも仕方がない」
沢田文美も、驚くばかり。
「目録とか、配置表もつくらないと・・・まるで図書館だもの」
「配置を決めるのも大変だ・・・」
沢田文美と雨宮瞳は、この時点で「お手上げ状態」となってしまった。




