どうしようもない生き物
私の幼なじみは最低だ。
男の子と付き合っては別れ付き合っては別れ、自分の体を大事にせず、浮気もする、最低な女だ。
幼い頃母が父の浮気で苦しんでいたのを知っている私の中で、この世で一番軽蔑する対象。
けれど、何故だろう。
「ごめん、ごめん……わたし」
「……もういいよ」
涙で濡れた頬をそのままに腰にしがみつく、とても残酷でとても美しい生き物。
艶やかなブラウンの髪、涙で濡れて揺れる瞳。
清楚なセーラー服に包まれた体は華奢で、手足はすらりとしなやかに伸びている。
庇護欲をそそりつつもどこか魔性的な色気を纏う彼女は、男の子を魅了する天才だ。
「……わたし、どうしてこんな」
泣きじゃくり震える幼なじみ。
私は黙ってその体を優しく包み、抱き締める。
彼女は本当にどうしようもない生き物だ。
友達の彼氏さえ奪う残酷さを持っているくせに、いざ手に入れるとこうして傷ついて泣く。
本当は臆病のくせに、馬鹿な子なのだ。
永遠の愛がほしいわけでもないくせに。
勿論彼氏がほしいわけでもない。
彼女が本当に求めているのは、どんなことをしてでも自分を受け入れ、常に抱き締めてくれる存在だ。
それに気づかないなんて、本当にどうしようもない。
けどそんな馬鹿な子が、私の世界で一番大切で、大事で
とてもいとおしい存在だった。
「ごめんね」
「っえーー」
濡れた頬を掴み、無理やり顔を持ち上げる。
嗚咽に震える唇を塞いだのは、ほんの一瞬だった。
ぽかん、とした彼女に私はゆっくりと、ひきつった笑みを浮かべてもう一度言う。
「ごめんね」
今度は私の目から涙が溢れた。
それはぽたりと、床へと落ちて弾ける。
彼女はただただ、泣いていた。
本当に、私たちって、どうしようもない。