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いらっしゃい、非日常  作者: キリアイス
10/22

【00.02:30】

 重苦しい空気のまま、時は進む。

 あの後何を話したとしても、優の上げた例が頭によぎるのか、会話は弾まない。


 今、仲良くなって――後に誰かを犠牲にすることになるのなら。


 そんな考えを思い浮かべてしまうと思考の沼に溺れ、そして一層空気を重くする。

 なんともまあ、迷惑な例え話を出したものだ、と裕は冷めた目線で優を横目で見やる。

 例え話を出した本人はと言えば、にやにやと厭な笑顔を顔に浮かべてこの重い雰囲気をどこか愉し気に眺めている。


 一応、何度かこの空間について初春と優には質問をした。

 それにより分かったことはあるが、その分かったことは今現在探索を行っている凜と有理の持ってくる情報次第だ。


 曰く、“門番”をしている化け物を倒すか、部屋の謎を解くか。あるいは、両方か。

 ルールの紙に書いてあった『脱出の鍵』を手に入れる手段は、だいたいその三つらしい。

 『狭間の屋敷』という名称らしいこの空間に“隠されている”と書かれているから、恐らく謎解きがメインだろう、とは初春の弁だ。

 それでも“門番”がいる可能性はゼロではない。

 そうなった場合、廊下で見た不気味で不快な化け物と同類である化け物をどうにか倒す必要が出てくる。

 裕はもちろん、他の人――特に今ここにいるメンバーはとりわけ殴り合いの喧嘩すらしない人ばかり。

 戦闘は専門外だ。


 情けない話だが――化け物の戦闘は年下である凜が請け負うことになる。

 少女一人の体力は限界があるだろう。

 負担はかけさせたくないが、廊下に深淵の犬がいる限り、探索を変わってやることができないのも事実。

 優は協力する気がないし、初春は戦闘に役立つような魔術というのは使えないと言っていた。

 今のところ有理くらいしかあの犬の攻撃を自力でどうにかできる人がいないのは――やはり、どうしようもないことではあるが、歯がゆいものである。


 ――せめて、三城(アイツ)が協力的であればな。


 校内でも悪い噂を聞く人物だ。その悪い噂の中に暴力行為の噂もあった。

 曰く、多人数の武器を持った相手を丸腰で返り討ちにした、とか。

 いやいやどんな作り話だよ、と噂を聞いた時は思ったが「まァ、金属バットをフルスイングすりゃ“あの程度”の犬共は死ぬぜ」と化け物について聞いた際に、さも当たり前と言わんばかりにそう言っていたのだから、争い事はできるのだろう。

 むしろこういう非日常の化け物を相手にしたことがあるから、普通の人が武装した程度では丸腰でも返り討ちにするのは可能なのかもしれない、と得体の知れなさに背筋が冷えた。


 ただ、優本人が協力する気概がないからか、その暴力的な片鱗は垣間見ない。


 背筋が冷えたのもほんの数秒であり、恐ろしい人物だと思ったのも束の間、人を値踏みする目でニヤニヤと妙に腹が立つ笑みを顔に浮かべるその態度は、少しは協力しろよ、と垣間見ないその恐ろしい片鱗を見せろと思ってしまうくらいである。


 はあ、と裕は周りに気付かれないようにこっそりとため息を吐く。

 考えても仕方がないことだし、出会ったばかりのこの人々の為に己がここまで考え込む必要はあるのだろうか、と根本的なことを考え始めた時、扉のある音が沈黙していたからはっきりと聞き取れた。

 それは皆も同じで、自然と廊下へ続く扉へと視線が集まる。


「――たっだいま~~って……あら? な~んか、雰囲気重いわね?」

「ユーリさん、おかえりなさ~い! ナイスタイミング~~」


 零香は沈んだ空気と弾まない会話に気が折れてこの重い空気に押しつぶされていたわけだが、凜へと真っ直ぐに向かっていき介抱する。

 凜は小首を傾げるがされるがままだ。それでも抱き着いてきた零香に対して感情のないその瞳で何があったのか無言で促す。

 言葉にしないのを今回ばかりは良いことに、零香は凜に対して過保護な母親のように大丈夫だったかと安否確認の言葉を投げかけるだけだった。


「えぇっと……ちょっと、初春。この雰囲気悪いの、どうしたのよ」

「どうもなにも……そこの坊主が“こういうもの”に詳しかったから、からかい半分に“最悪”を語っただけだ」

「あ~~……。からかうことが目的だというのなら、アナタ、とっても悪趣味ね」

「悪趣味で結構。オレはオレが愉しけりゃそれでいいからな。ま、“最悪”を語りはしたが、その語ったことは事実だ。知ってて損はねェだろーよ?」

「アナタねぇ……」


 初春は叱咤するようなタイプではないから放置されていた優だが、有理は違う。

 重苦しい空気になって口を開く気概のなくなった面々の中にも優を嗜めようとした人物はいたが、口八丁な優に言い負かされ、そして空気を重くするだけだった。

 それに比べると有理はヘラヘラと笑いながら煙に巻く優に咎の手を緩めない。


「――ねえ。時間の無駄なんだけど。報告、してもいい?」


 ただし、割り込む淡々とした声により、中断せざるを得ない。

 納得のできない顔をする有理だが、凜のじっと見上げる視線にため息を吐いて苛立ちを追いやる。


「んもぅ。仕方ないわね。ずっと言い合ってても空気が悪くなるだけだし、いいわ。先に探索した報告と、それに伴って意見を聞きたいの」


 テキパキと有理が仕切り、無理矢理場の雰囲気を立て直す。

 少しばかり軽くなった空気の中、二人の探索の報告と提案された意見を聞き、吟味する。

閲覧ありがとうございます。風邪引いて寝てました。

ずっと寝てたので今度は筋力が落ちてもう……^p^

最近はめっぽう冷え込みましたから、風邪にはお気を付けくださいな。


誤字脱字等ありましたら、教えて頂けると嬉しいです。


追記)更新は2週間に1回、日曜日更新になります。

   記載し忘れ申し訳ないです……。

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